弁護士から誹謗中傷の慰謝料請求をされた場合の初期対応

ビジネス法務一般

こんにちは。甲斐です。

Twitterをはじめ、様々なSNSサービスがある現代、誰もが手軽に情報発信を行う事が出来るようになった反面、相手が見えないSNSだからこその「インターネットにおける誹謗中傷の問題」が顕在化しています。

明らかに不法行為に該当する表現もあれば、正当な批判の範疇であるモノまで色々ありますが、これを利用した恫喝的な訴訟を行う人達も現れてきています。

そう、スラップ訴訟ですね。

SNSで簡単に意見や批判を言える一方、「インフルエンサー等から弁護士を通じて損害賠償請求や慰謝料請求をされた!」と言う話も出てきています。

このような時は、弁護士に相談するのが一番です。

けっして「自称法律に詳しい人」に相談してはダメです。

しかし、

  • 弁護士は敷居が高くて相談しづらい。
  • 弁護士に相談する勇気がない。
  • 弁護士に依頼する費用が出せない。

等々、様々な理由で弁護士にアクセスできない事情もあると思います。

そこで今回は、誰もが訴えられる危険性がある現代、あなたの表現を巡って、もし弁護士から民事の慰謝料請求をされた場合の対応方法をお話したいと思います。

なお、今回のお話は一般の方向けに分かりやすくしている関係上、正確な表現を犠牲にしている部分がありますのでご了承下さい。

1.まずは本物の弁護士であるかどうか確認する

あなたのSNSの投稿から開示請求等がなされ、あなたを特定する情報が判明した場合、まず弁護士から内容証明が送られてくると思います。

  • あなたの投稿が不法行為に該当する。
  • 依頼者が精神的苦痛を受けた。
  • だから慰謝料請求をする。

内容はだいたいこのような感じです。

慰謝料の請求金額はだいたい160万円~200万円ぐらいとなっており、突然弁護士から内容証明が届いてこのような高額な金銭を支払えなんて言ってきたら、正直ビックリしますよね?

でも、落ち着いて下さい。

まずは本物の弁護士かどうかを確認しましょう。

日本弁護士連合会や各都道府県の弁護士会のホームページで弁護士を調べる事が出来ます。

まずはこれを利用して、内容証明を送ってきた弁護士が実在するかキチンと確認しましょう。

もしかしたら、「弁護士の名前を語った詐欺」かも知れませんので。

【なぜ誹謗中傷の慰謝料の金額が160万円~が多いのか?】

私は仕事上、弁護士からの内容証明を見る事がありますが、慰謝料請求の場合、請求金額はほぼ160万円~200万円です。

じつはこれ、理由がありまして、もし裁判を行う場合「訴額」を算定する必要があるのですが、慰謝料請求の場合、訴額の算定が非常に困難なのです(お金の貸し借りのようなシンプルな話しではないので)。

その場合、訴額が160万円とみなされる規定があり、だから最初の任意交渉では「160万円~」と言う数字を使う弁護士が多いのです。

2.本当に弁護士が出した通知か確認する

実在する弁護士からの通知である事を確認したら、もう一つ確認しましょう。

「本当にその弁護士が内容証明を出してきたのか?」と言う点です。

実在の弁護士の名前を騙った詐欺かも知れませんからね。

弁護士が実在するか弁護士会のホームページで確認されたと思いますので、その連絡先に電話してみましょう(内容証明に記載された連絡先はNGです。)

「〇月〇日そちらから〇〇の内容の内容証明郵便が届いたが、本当にそちらが出した書面で間違いないか?」

こんな感じです。

回答が「そんな書面は出していません」であれば、詐欺である可能性が高い為、取り敢えず無視しても良いでしょう。

「書面を出した」と言う回答であれば、「対応を検討します」等と伝え電話を切りましょう。

この時に謝罪をしたりしないようにしましょう。謝罪があなたにとって不利に働く可能性があります。あくまで「対応を検討する」とだけ伝えるようにしましょう。

3.慰謝料の相場について

ここまで来たら一度弁護士に相談してほしいのですが、それでも弁護士に相談できない、相談したくない場合、そして自分で交渉したり裁判をしたい人向けの情報をお話します。

まず、民事上の誹謗中傷はザックリと「名誉毀損」と「名誉感情侵害」の二つに分かれます(あくまでザックリです)。

「名誉毀損」は刑事上の名誉毀損とほぼ同じで、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合の不法行為責任です。

例えば、「〇〇は詐欺師だ!」と言った事により相手に損害が発生した場合の責任です。

「名誉感情侵害」は刑事上の侮辱罪に良く似ていて、簡単に言えば、「バカ」とか「不細工」と言った言葉で罵られ、自尊心を傷つけられる事です。

単なる侮辱行為がすべて民事上の不法行為となるわけではなく、その程度が「社会通念上許される限度を超える」必要があります。

民事上の名誉毀損や名誉感情侵害の詳しい内容は、下記のページをご確認下さい。

そして、実際に裁判になった場合、最終的な慰謝料は裁判所が決めるのですが、その慰謝料の相場は誹謗中傷で50万円~100万円、名誉感情侵害で1万円~10万円となっています。

勿論ケースバイケースですが、最初に弁護士から請求された金額である160万円~200万円と比較して、金額が大きくかけ離れている事が分かると思います。

つまり、最初の段階では弁護士も多めに請求してくるのが通常なので、請求金額に納得いかなかったり、誹謗中傷そのものに納得できないのであれば、相手が訴えてくるのを待つと言うもの一つの方法なのです。

「請求されている金額には納得できませんので、裁判所に決めてもらいましょう。訴えを起こして下さい。」

こんな感じで相手の弁護士に伝えるのです。

誹謗中傷、つまり不法行為における裁判管轄は原則として被告の住所地です。

つまり、あなたに近い場所の裁判所で行われますので、この点はあなたに有利に働きます。

4.まとめ

弁護士から内容証明郵便が送られてきた場合、ビックリするでしょうし「面倒だな」と思うかも知れません。

しかし理由はどうであれ、弁護士からの請求については何らかの対応を行う必要があり、無視をしても良い事は一つもありません。

何度も申し上げる通り、あなたも弁護士に相談して適切な対応を行うのがベストな選択肢です。

市役所等で無料相談や法テラスを利用しても良いでしょう。

相当のリスクを理解した上であれば、司法書士のサポートを受けて、本人訴訟を行っても良いでしょう。

何よりも、慰謝料の金額の妥当性も含め、法律上適切な解決を行う事が重要になってくるのです。

【お気軽にお問い合わせ下さい】
起業やパーソナルブランディングに関する提供中サービスはこちら。

甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル。趣味はキックボクシングとランニング

関連記事

特集記事

甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル (詳しい自己紹介は画像をクリック!)。

「表現力」で営業力アップ

パーソナル・ブランディング

人気の記事

  1. 1

    一人会社の場合はどうなる?取締役と会社の「利益相反取引」とは?

  2. 2

    違法じゃなければOKでしょ?が通用しない理由

  3. 3

    水を1万円で売る?商品・サービスの価値の作り方とは?

  4. 4

    トラブル防止!コンサルティング契約書の作成のポイント・ひな形

  5. 5

    コンサル契約で「いかなる理由でも返金しない」条項があったら要注意!

最近の記事

  1. 今こそ営業マンは「脱」営業マン化すべき

  2. 演劇のセリフを喋るレッスンはビジネスの営業面でも活用できる

  3. AI時代を生き抜く営業力は「コミュニケーション力」と「共感力」です

  4. 演劇・演技レッスンがビジネスで注目されている理由とは?

  5. 異業種交流会で仕事を取るマル秘テクニック、教えます。

TOP