スラップ訴訟は逆に違法行為になる?

法律知識一般

こんちには。司法書士の甲斐です。

一部の界隈では有名なお話なのですが、とある弁護士が自分の事を誹謗中傷したSNS投稿に対して、片っ端から発信者情報開示請求を行っているようなのです。

自分は弁護士、相手は一般の人なので裁判を起こされたらそりゃビックリして精神的に参ってしまい、普段の生活に支障をきたしてしまうでしょう。

これはいわゆる「スラップ訴訟」に該当するのでは?と言った話しも出てきているのですが、SNSを活用する現代人にとってスラップ訴訟は知っておかなければならない知識です。

また、「スラップ訴訟をしても問題が無いのか?」と言う論点もありますので、今回はこの辺りを分かりやすく解説したいと思います。

1.スラップ訴訟とは?

スラップ訴訟とは簡単に言えば、社会的強者が社会的弱者に対して、恫喝・言論封じ等、威圧的、恫喝的あるいは報復的な目的を持って行われる裁判の事です。

実際に社会的強者が原告として訴訟を提起した場合、被告になってしまった社会的弱者には、訴訟の準備やその費用、時間的拘束などの負担が重くのしかかってきます(社会的強者はお金も時間もありますので、その点は問題にならないのです)。

また、スラップ訴訟が行われる事により、訴えられた本人以外の人も訴えられる事を恐れ、言論や行動等の萎縮に繋がる問題点が指摘されています。

アメリカでは1980年代から社会問題となっていたようですが、日本では(上記の某弁護士だけではなく)スラップ訴訟を匂わすインフルエンサーが最近多くなり、この訴訟形態が有名になりました。

しかし実はスラップ訴訟は日本でも昔から行われているのです。その裁判の一つをご紹介したいと思います。

2.スラップ訴訟に関する判例

① 事例

ある弁護士Aが、ブログの中でX社に対し、

・「実態がない会社。」
・「X社から資金提供を持ちかけられても、それは詐欺である。」

等と投稿。

それに対してX社が弁護士Bを通じて弁護士Aを刑事告発と民事の損害賠償請求を行いました。

これに対してAは、Bが行った刑事・民事の手続きは、しっかりとした裏付け調査もせずにした違法な行為だとして、逆にAがBに対して損害賠償訴訟を提起しました。

② 結果

裁判所の判断は弁護士のBは責任を負わない、X社については違法行為があると結論づけました。

  1. 刑事告訴について、虚偽の事実、事実関係や証拠を十分に検討せずに行った告訴は、告訴された者の名誉や信用を毀損するから、違法となる事がある。
  2. 代理人弁護士も、法律のプロなのだから、十分な調査・検討を行わずにした刑事告訴は違法となる。
  3. 民事について、その主張が事実的、法的根拠を欠き、根拠がない事を知っていたり、根拠のない事に普通であれば気付くような状況であれば、違法行為になる。
  4. 代理人弁護士も、法律のプロなのだから、十分な調査・検討をしなければ、同じく責任を負う。

このように、法的根拠がない、十分な検討を行わずになされた刑事告訴・民事訴訟は、代理人弁護士も含めて違法行為になる事の基準が示されたのです。

なお、今回のケース、上述の通り、弁護士Bは責任を負わないと言う結論になりました。

BがX社の実態を見抜けなかった事は様々な事情を考慮して仕方がない、と言う結論です。

ただし、X社については実際に実態の無い詐欺まがいの会社である事が分かった為、X社による弁護士Bを通じて弁護士Aに対する刑事告訴や民事訴訟は違法と判断されました。

3.まとめ

スラップ訴訟を規制する法律そのものはありません。しかし、法律の一般原則やこのような判例から、法的根拠を欠いていたり、事実関係をきちんと調査しないスラップ訴訟は違法行為となり得るのです。

「あいつムカついたから、裁判してちょっと脅かしてやろう」

と言った感覚で訴えても、逆にしっぺ返しを食らう事があると言うことです。

法律は解釈が非常に難しい場合があり、SNSでは勝手な法的解釈を行っている人が結構見受けられますが、生兵法は大怪我のもとです。

必ず法律の事は法律の専門家に相談するようにして下さい。

【お気軽にお問い合わせ下さい】
集客と法律のお困りごとを解決します。提供中サービスはこちら(※ご相談はzoomで全国対応可)

司法書士 甲斐智也司法書士 甲斐智也

司法書士 甲斐智也

熱き志を持つ起業家を法律とマーケティングで支援する司法書士。趣味はキックボクシングと朗読。

関連記事

特集記事

司法書士 甲斐智也司法書士 甲斐智也

司法書士 甲斐智也

熱き志を持つ起業家を法律とマーケティングで支援する司法書士。趣味はキックボクシングと朗読。 (詳しい自己紹介は画像をクリック!)。

問題解決能力を高めませんか?

集客に困らない会社設立手続き

攻めと守りのコンサルティング

電子書籍販売中

人気の記事

  1. 1

    会社の登記の添付書類で押印が必要な場合と必要ではない場合

  2. 2

    【代表取締役社長の死亡】登記手続を司法書士が分かりやすく解説

  3. 3

    一人会社の場合はどうなる?取締役と会社の「利益相反取引」とは?

  4. 4

    法務局の登記相談は親切丁寧に教えてくれない当然の理由

  5. 5

    会社への貸付金を現物出資(DES)し資本金を増やす方法と登記

最近の記事

  1. 自分の会社に素人の投資家から投資をしてもらう時の注意点とは?

  2. 認知症の人の不動産を売却・購入するリスクとは?

  3. 遺留分対策(相続対策)で生命保険活用時の注意点

  4. 経済産業省が創設したスタートアップの法務支援を行う専門家チームとは?

  5. デジタル遺産(遺品)の相続対策のポイントとは?

TOP