今話題の「パブリシティ権」って何?

ビジネス法務一般

こんにちは。甲斐です。

今回は、最近YouTuberの間で話題になっている「パブリシティ権」に関するお話です。

背景を簡単に説明しますと、講演等を行っているYouTubeの某有名人が、自分の名前をタイトル等に勝手に使って自分の事を批判しているYouTubeチャンネルを片っ端から通報しまくり、一部のチャンネルのアカウントが凍結されたりしているようです。

(現時点では凍結が解除されたアカウントもあります。)

 その通報の根拠が「パブリシティ権の侵害」、と言うわけなのです。

経緯を見てみますと正直、「権利の乱用なのでは?」と思われる部分もなくはないのですが、ビジネス上の情報発信を行う上で著作権同様、知っておいた方が良い法的知識なので、今回取り上げてみたいと思います。

1.パブリシティ権とは?

 パブリシティ権とは有名人の氏名や肖像などに生じる顧客吸引力を中核とする経済的な価値を本人が独占できる権利の事です。

パブリシティ権(パブリシティけん、英: right of publicity)またはパブリシティの権利は、有名人の氏名や肖像などに生じる顧客吸引力を中核とする経済的な価値(パブリシティ価値)を本人が独占できる権利をいう。

Wikipediaより

実はパブリシティ権は個別の法律で定義されておらず、判例で認められている権利なんです。

ザックリと簡単に言えば、

有名人には集客力と言う経済的な価値がある

と言う意味です。

先程のアカウントが凍結されたYouTubeチャンネルは某有名人の名前をタイトルに使っていて、その結果集客する事ができた。

しかし、その集客力(権利)は本来その有名人のモノなのだから、無断で使用する事はできない。

と言う理屈ですね。

(あくまで分かりやすさを重要視したザックリとした内容ですのでご了承下さい。)

実際に裁判でパブリシティ権が認められるか否かはケースバイケースで判断される事になります。

(個別の法律で定義されていない権利ですので、この判断が非常に複雑で難しいんですよね・・・。)

なお、判例上、下記のケースで

  • 「無断で使用」かつ
  • 「顧客の吸引力の利用を目的」

にしている場合、パブリシティ権が侵害され不法行為に該当すると判断されます。

1.肖像等を独立させて鑑賞の対象となる商品等として使用する。
2.商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に使用する。
3.肖像等を商品等の広告として使用する。

(最高裁判所 平成21(受)2056 平成24年2月2日)

2.著作権とは違うのか?

ここまでの説明でこう疑問に思った人もいると思います。

「著作権と何が違うのか?」と。

これもザックリとお話すると、パブリシティ権が保護しているのは有名人の顧客吸引力と言った「財産的な利益」であり、著作権が保護しているのはあくまで著作者の「創作物に関する権利」と言う点です。

なので、例えば某写真家が有名人に許可を取って撮影した写真が誰かに無断で使われた場合、著作権に基づいて権利を主張できるのはあくまで写真家であり有名人ではない、と言う結論になります。

3.肖像権とは違うのか?

もう一つ、パブリシティ権と似たような権利で「肖像権」と言うのがあります。

これもパブリシティ権と同様、個別の法律で定義された権利ではないのですが、判例上は「容姿などの肖像を無断で公表・使用されない権利」とされています。

YouTuberが外で動画撮影している際に、一般の通行人の顔がバッチリと映ってしまい、問題になるのがこの肖像権です。

誰だって、YouTuberの動画になんて映りたくありませんし、勝手に動画をアップされ公表されたらたまったモンではありません。

これもパブリシティ権との違いが非常にややこしいのですが、ザックリ言うと

  • 肖像権は「人格的利益」を保護している。
  • パブリシティ権は「財産的利益」を保護している。

と言う違いがあります。

4.まとめ

ビジネスで情報発信を行う上で有名人の名前等を取り上げた場合、アクセス数が増える可能性があります。

一方で有名人からパブリシティ権の侵害を主張される可能性もあり、その場合にどのような対策を行うのか、事前に検討する必要もあるでしょう。

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甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル。趣味はキックボクシングとランニング

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甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル (詳しい自己紹介は画像をクリック!)。

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