こんにちは。甲斐です。
個人間のお金の貸し借りは、絶対にやってはいけません。
確実にトラブルの元になりますから。
ただ、ビジネスを行っていると、取引先やビジネス仲間から、
「申し訳ない。これこれこう言う理由でお金を貸して欲しいです・・・」
と言う相談が良くあります。
(私が昔勤めていた司法書士事務所の所長も、同業にお金の相談をされたみたいです。結局、貸さなかったですが。)
上記の通り、誰であってもお金は貸してはいけないのが大原則ですが、それでも取引先だったり、どうしても助けたい仲間だった場合、お金を貸す事もあり得ると思います。
でも、「ただ貸すのではなく、絶対に証拠を残すようにしましょう!」と言うのが今回のテーマです。
お金を貸す時に良く出てくるのが「借用書」ですが、契約書とどう違うのでしょうか?
借用書にはどんな事を書けば良いのでしょうか?
今回はそんなお話をしたいと思います。
1.そもそも、「借用書」とは?
そもそも借用書とは何なのでしょうか?
「契約書」と何が違うのでしょうか?
実は借用書も契約書も明確な区別はなく、「お金を〇〇万円貸した」「お金を〇〇万円借りた」と言った合意の証明書にすぎないのです。
良く「契約書の方が借用書より証拠力がある」なんて話しをする人がいますが、そんな事は有りません。
同じ内容を記載しているのであれば、どちらも同等の証拠力があるのです。
2.法律上はどうなっているのか?
法律上はお金を貸す事を「金銭消費貸借契約」と呼びます。
「あるモノを貸すので、それと同じ種類のモノを返してね」と言う意味の契約です。
金銭消費貸借契約については民法に規定があるので、まずは条文を見てみましょう。
(条文を理解していないと、法律上の効果が生まれませんので。)
(消費貸借)
第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
金銭消費貸借契約は原則として、
- 100万円を貸します。
- 100万円を借ります。
と言う意思表示が一致して、お金を借りる方が実際に100万円を受け取る事によって成立します。
しかし、借用書のような書面によって行う金銭消費貸借契約は下記の特則があります。
(書面でする消費貸借等)
第五百八十七条の二 前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
2 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。(以下省略)
つまり
- 100万円を貸します。
- 100万円を借ります。
と、借主が実際に100万円の引渡しを受けなくても成立します。
3.お金を貸す時に決めるべき事
借用書を作ったお金の貸し借りは、法律上は「お金を貸します」「お金を借ります」だけで成立するのですが、これだけでは大雑把過ぎてトラブルの元になります。
その為、当事者間で以下のような細かい条件を決めるようにして下さい。
- 貸す金額
- 返済期日
- 利息
- 分割払いの場合、毎回の返済額や返済日
- 期限の利益喪失約款
最低でも、上記の内容は借用書に盛り込む事にしましょう。
4.借用書の書き方
借用書の具体例をご紹介します。
借用書
山田 太郎 殿
金100万円
私は貴殿より上記金額を確かに借用いたしました。
1.返済期限:令和〇年〇月〇日
2.利息:なし
3.返済方法:令和〇年〇月〇日より、毎月〇万円ずつ貴殿の指定する銀行口座に振り込み、支払います。なお、振込手数料は私が負担します。
4.期限の利益喪失:2回以上、支払が期限を徒過するようなことがあれば、残金を一括して支払います。
令和〇年〇〇月〇〇日
〒〇〇〇―〇〇〇〇
〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番〇〇号
〇〇 〇〇 ㊞
分割払いの場合、上記の期限の利益喪失約款がなければ、裁判を行っても支払期日が過ぎた分割金しか請求する事が出来ません。
その為、期限の利益喪失に関する文言は絶対に入れるようにしましょう。
5.借用書(金銭消費貸借契約書)を公正証書で作成する
一つの方法として、借用書(金銭消費貸借契約書)を公証人に公正証書で作ってもらう方法があります。
この場合は契約書の方式で作成する必要がありますが、執行認諾文言を入れておくと裁判を行わずに強制執行が可能となります。
お金を貸す条件として、公正証書で契約書を作成する事を提案しても良いでしょう。
【執行認諾文言】
「債務者は、本証書記載の金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する旨陳述した」と言ったような、債務者が強制執行を行う事を認める文言の事です。
6.まとめ
もう一度言いますが、相手が誰であっても、お金を貸す事は非常にリスクが伴いますし、正直止めた方が良いです。
しかし、取引上どうしてもお金を貸さなくてはいけない状態に追い込まれる事だってあると思います。
その場合は自己責任の元、借用書等の証拠をしっかりと作成するようにしましょう。
お勧めは、「執行認諾文言がある公正証書」による借用書(金銭消費貸借契約書)です。