こんにちは。甲斐です。
先日Twitter界隈で「士業の紹介料」の事が話題になっていました。
概要をザックリ説明すると、「行政書士は弁護士や司法書士と違い、仕事を受任したり依頼したりする上での紹介料が法律上禁止されていない。だから紹介料を貰ったり支払ったりするのは問題ない」と言う趣旨の内容です。
この点に関して
- 法律上禁止されていないのであればOK。あとは個人の問題。
- 「街の法律家」を名乗るであれば紹介料を貰ったり支払うのはそもそもおかしい。
- 行政書士と言う制度上、紹介料は禁止されていると考える必要がある。
等々、様々な意見が出てきました。
で、今回このテーマでブログを書こうと思ったきっかけは、全てのビジネスパーソンが頭の片隅に入れておきべきだなーと思ったんです。
本当に「違法じゃなければOK」なのか?と言う視点です。
結論を言ってしまえば、今までの常識や前例が通用しない現代社会において、「違法じゃなければOK」と言う考え方はもう通用しないのです。
1.法律は「条文の解釈」が必要になる
「合法なのか違法なのか」
日本は法治国家なのでビジネス上は勿論、普通に暮らしている上で必要になってくるのが「法律上問題がないか?」と言う視点です。
言い換えれば「法律上の条文に照らし合わせて問題がないか?」と言う事で、条文上問題なければOK!と言う事になります。
これが論理的に考えた場合の結論なのですが、まずここに問題があります。何かと言いますと、「条文の言葉の意味を解釈しなければならない場合がある」と言う点です。
分かりやすく、先程の行政書士の紹介料について挙げてみましょう。行政書士倫理にこのような条文があります。
(不当誘致等の禁止)
第7条 行政書士は、不正又は不当な手段で、依頼を誘致するような行為をしてはならない。
日本語で書いているので、文章の内容の意味は分かると思います。ただ、読んでいて疑問に思いませんか?
「『不正又は不当な手段』って、具体的に何やねん?」と
- 紹介料は一般的な商慣習。だから不正又は不当な手段に当たらない。
- いやいや、行政書士と言う独立した国家資格である以上、紹介料は不当な手段に当たるのは制度上明らかである。
等々。
「不正又は不当な手段」と言う文言が抽象的である為、その文言の意味を解釈する必要が出てくるのです。
このような「抽象的な文言」は、他のビジネスを規制する法律の中で沢山出てきます。
条文の中で抽象的な文言がある以上、単純に「違法じゃないからOK」と考えるのは危険であり、一歩立ち止まって「本当に問題がないのか?」と考える必要があるのです。
ちなみに、司法書士倫理では上記と同じような条文があるのですが、2項と3項で仕事に対する紹介料が明確に禁止されています。
(不当誘致等)
第13条 司法書士は、不当な方法によって事件の依頼を誘致し、又は事件を誘発してはならない。
2 司法書士は、依頼者の紹介を受けたことについて、その対価を支払ってはならない。
3 司法書士は、依頼者の紹介をしたことについて、その対価を受け取ってはならない。
2.法律は「後追い」だから
ビジネス上のルールは「規制」であり、基本的に「何らかの問題が発生」→「ルールを強化したり新たなルールを作ろう」と言った流れになります。
つまり、法律は常に後追いになるんですね。
ちょっと昔の事例を持ち出すと、訪問販売やマルチ商法が社会問題になった事があり、これらのビジネスを規制し消費者の権利を守る必要が出てきて成立した法律が「特定商取引法」です。
外形的にみれば特定商取引法が成立する以前の問題がある行為は違法ではなかったかも知れません。でも違法とは言い切れないかも知れませんが、社会問題となった事実は変わりません。
特に現代はスピードが早く、今までの常識や前例が通用しない時代となっています。その為、法律はますます後追いになっていくでしょう。
と言う事を考えた場合、ビジネス上で「違法じゃないからOKでしょ?」と単純に考える姿勢は、ある日突然その足元をすくわれる危険性があるのです。
3.まとめ
実際には本当に違法じゃない事もあります。しかしそれと「考えなくても良い」はイコールではありませんので、やはりしっかりと疑う事を意識し、自分なりの答えを見つける必要があるでしょう。
特に勢いがある起業家は考えが独りよがりになりがちです。自分が行っている事に対して「常に疑う」ぐらいの姿勢が丁度良いと思います。
また疑問を持つ(考える)のと同時に「感覚」も必要になってくるでしょう。
「法律上問題がないかもしれないけど、何となく嫌な感じがする」と言う感覚です。この感覚を研ぎ澄ます事は、結果的にあなたを守ってくれる武器になる可能性を秘めていますので。