こんにちは。甲斐です。
事業者間で取り引きを行う場合、契約書の作成が重要になってくるのですが、とは言え、当事者間の力関係等によっては「契約書なんて作れないよ!」と言うケースもあるでしょう。
特にフリーランスは立場が非常に弱いケースがあり、契約書を作れない事もあるはずです。
ではそんな契約書がなく、取り引きで何らかの法的トラブルが発生したら、泣き寝入りをするしかないのでしょうか?
いえ、泣き寝入りするにはまだ早いかも知れません。
契約書の代わりになる証拠さえあれば、裁判を有利に進める事が出来るからです。
今回は、そのような、契約書が無い場合の証拠の作り方をお話しします。
1.大前提。契約はどうやって有効に成立する?
まずはおさらいをしましょう。
契約とは契約当事者間が守るべきルールですが、契約はどうすれば有効に成立するのでしょうか?
簡単に言えば、「当事者の意思表示の合致」です。
例えば売買であれば、「この中古パソコン、1万円で買わない?」と言われた時に「いいよ、買う!」と言った時に、売買契約が成立する事になります。
契約書はこの意思表示が合致した事を証明する物なんですね。
と言う事は、契約書が作れない場合、意思表示が合致した事が明確に分かる代わりの証拠を作れば良い、と言う事になります。
この「意思表示が合致した事が分かる証拠」と言うのは大変重要な考え方なので、常に意識して仕事をするようにして下さい。
2.メールも証拠になる
さて、契約書の代わりになる代表的なものと言えば、メール(もしくはTwitterのDMやメッセンジャー等)ですね。
電話とは異なり文章と言う記録を残す事ができますので、仕事の打合せ等でフル活用している人も多いはず。
それでは、メールが全て証拠となり得るのかと言うと、そうではありません。
思い出して下さい。あくまで「意思表示の合致」が必要になってくるのです。
その為、メールを証拠とする場合、メール上に「いいですか?」「いいですよ」と言うやり取りが残っている必要があります。
【証拠として使えるメール文例】
・委託者側から受託者であるフリーランスに送信したメール
〇〇 〇〇 様
いつもお世話になっております。株式会社〇〇〇〇の〇〇です。
お電話でご依頼させて頂きました内容を、メールにてまとめさせて頂きます。
注文日:令和〇年〇月〇日
依頼内容:弊社商品〇〇のクリスマスキャンペーン販促用チラシのデザイン
サイズ:〇〇×〇〇
画像容量:〇MB以下
納期:令和〇年〇月〇日
支払報酬:金〇万円(消費税別)
支払期日:データ入稿後、1週間以内以上、ご確認頂き、大変お手数ですが上記内容でよろしければその旨を、修正点等ございましたら修正点をご記載頂き、本メールにご返信頂きますよう、よろしくお願いいたします。
************
株式会社〇〇〇〇
マーケテイング部 〇〇 〇〇
東京都新宿区〇〇一丁目2番3号
TEL:〇〇〇ー〇〇〇ー〇〇〇〇
FAX:〇〇〇ー〇〇〇ー〇〇〇〇
E-mail:abc-def@ghd.com
・受託者であるフリーランスからの返信メール
株式会社〇〇〇〇
マーケテイング部 〇〇 〇〇 様いつもお世話になっております。〇〇です。
ご依頼いただきましてありがとうございます。
お送り頂きましたメールの内容で大丈夫です。早速、作業に取り掛からせて頂きます。
今後ともよろしくお願いいたします。
************
〇〇 〇〇
TEL:〇〇〇ー〇〇〇ー〇〇〇〇
FAX:〇〇〇ー〇〇〇ー〇〇〇〇
E-mail:hij-kml@opq.com(以下、省略)
3.発注書や納品書も証拠になる
メール以外でも、発注書や納品書も証拠になりますが注意点があります。
発注書や納品書は当事者の一方だけが作成する書面ですので、裁判所から見れば証拠力が弱い書面です。
しかし、発注書や納品書の中に、契約の内容、つまり「いつ」「誰が誰に」「何を」「どうする」を言う項目を盛り込み、その内容で良い事の承諾を相手方から取るのです。
承諾の方法は何でも良く、発注書や納品書に奥書する方法や、メールでも構いません。
とにかく、「意思表示が合致した事」が分かれば良いのです。
・意思表示が合致した発注書の例
4.まとめ
このように、契約書を作成する事が出来なくても、それに代わる証拠を作る事は十分に可能です。
そのポイントは、何度も言いますが「意思表示の合致」です。
お互いの意思表示が合致した事が客観的に分かる証拠を作る「ひと手間」を加える事で、仮に法的トラブルになった場合であっても、裁判に十分に耐えうる証拠となるのです。
「意思表示の合致」は常に意識するようにしましょう。