Twitterは特に要注意!SNSの誹謗中傷についての基本知識

ビジネス法務一般

こんにちは。甲斐です。

ビジネスを行う上でSNSの活用は必須となり、特にTwitterを情報発信の場としてガッツリと活用されている方が多いのではないでしょうか?

Twitterは拡散力があり、自社の商品・サービスの広告として使えるのは勿論、様々な人と議論をする事ができ、そこから人脈が繋がると言う事も良く有ります。

一方で議論がヒートアップしすぎて悪口の言い合いに発展し、突然相手から訴えられると言う事も起こり得ます。

そこで今回は、そんな議論好きな(?)ビジネスパーソンの為に、Twitter等のSNSで気を付けるべき法律上の基本的な注意点をお話ししたいと思います。

記事ボリュームの関係上、今回は基本知識のみをご紹介し、具体的な事例は別の機会でご紹介したいと考えています。

1.刑事上の責任 名誉毀損罪

① 名誉毀損罪とは?

名誉毀損罪は刑法第230条に規定されている犯罪で、人の名誉を毀損する行為を内容としています。

(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 (省略)

刑法 | e-Gov法令検索

【公然】
「公然」とは、不特定または多数の者が認識し得る状態を言います。

Twitter等で情報発信する事は、まさにこれに該当します。

なお、認識しうる状態」で足り、実際に認識したことは必要ありません。

【事実】
この「事実」と言う言葉の意味が非常にややこしいので要注意です!

そもそも、法律用語で言う「事実」と、世間一般で使われている「事実」とでは、その意味が異なっています。

法律用語で言う「事実」というのは、「本当か嘘か」とは無関係で単純に「証拠で判断できる具体的な事柄」と言う意味です。

例えば、

・「〇〇食堂の焼肉定食は900円だ。」は事実です。
・「〇〇食堂の焼肉定食は1200円だ(本当は900円)。」も法律用語としては「事実」に該当します。
・「〇〇食堂の焼肉定食は不味い。」は法律用語の「事実」に該当しません。
(あくまで主観的な感想で証拠で判断する事は出来ませんので。)

摘示される事実は、人の社会的評価を害するに足りる事実である事が要求され、事実を摘示するための手段には特に制限はありません。

【毀損】
「毀損」とは、事実を摘示して人の社会的評価が害される危険を生じさせることで、現実に人の社会的評価が害された事は必要とされません。

② 名誉毀損罪が成立しない場合

名誉毀損罪の要件を満たしていても、以下の条件を満たしている場合は名誉毀損罪は成立しません(刑法第二百三十条の二)。

1.公共性がある。
2.公益性がある。
3.真実である又は真実相当性が認められる。

ここで言う「真実」とは日常会話と同じ「本当の事」を指します。

ザックリと言えば、例えばあなたが「〇〇は詐欺師だ!」とTwitterでツイートしてしまい、名誉毀損罪の要件に該当した場合に刑を免れる為には、

  • 『実際に〇〇が詐欺行為を行った事』を証明
  • それが真実であると信じるだけの充分な根拠

のどちらかが必要になってきます。

【注意!】
簡単に書いてしまいましたが、現実問題として「公益性」が認められるハードルは非常に高いと思って下さい。

2.刑事上の責任 侮辱罪

続いて、侮辱罪の説明です。

侮辱罪は名誉毀損罪とは異なり、事実を適示しなくても成立します(刑法第231条)。

(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

刑法 | e-Gov法令検索

「侮辱」とは、他人の人格を蔑視する価値判断を表示することを言います。

分かりやすく言えば、バカとかアホとか差別用語とかで相手を侮辱する行為が該当します。

なお、侮辱罪には、名誉毀損罪のような例外は存在しません。その他、刑事上の責任として考えられるのは、信用棄損罪、業務妨害罪等が考えられます。

3.民事上の責任

Twitter等で特定の相手に対し誹謗中傷を行った場合、刑事上の責任を問われる可能性がありますが、民事上の責任も問われる可能性があります。

いわゆる損害賠償(慰謝料)請求です(民法第709条、710条)。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

民法 | e-Gov法令検索

民法709条が不法行為による損害賠償請求、710条が精神的苦痛に対する慰謝料請求を定めた条文です。

誹謗中傷による民事上の請求の類型は、「名誉毀損」「侮辱(名誉感情侵害)」「プライバシーの侵害」などが挙げられます。

① 名誉毀損

刑事上の名誉毀損とよく似ていますが、刑事事件とは異なり「過失」でも不法行為が成立します。

また、民事上の名誉毀損は、刑事の名誉毀損罪のように具体的事実の摘示がなくても成立します。

いわゆる「意見論評型の名誉毀損」と呼ばれるタイプの名誉毀損です。

「名誉毀損の不法行為は、問題とされる表現が、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものであれば、これが事実を摘示するものであるか、又は意見ないし論評を表明するものであるかを問わず、成立し得るものである。」「ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、右意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、右行為は違法性を欠くものというべきである。

(最高裁平成9年9月9日判決)

裁判所HPより引用:https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/550/052550_hanrei.pdf

物凄く難しい表現をしていますが、例え意見や論評であったとしても、やり過ぎれば民事上の不法行為に該当すると言う事は覚えておきましょう。

② 侮辱(名誉感情侵害)

刑法の侮辱罪と良く似ていますが、侮辱(名誉感情侵害)は簡単に言えば、「バカ」とか「不細工」と言った言葉で罵られ、自尊心を傷つけられる事です。

単なる侮辱行為がすべて民事上の不法行為となるわけではなく、その程度が「社会通念上許される限度を超える」必要があります。

➂ プライバシー侵害

「プライバシー」とは、個人の私生活の事実、公開されたくない事柄、未公開の事柄を指します。

具体的には、名前や住所、電話番号や結婚離婚歴、職業や年収、体の特徴、犯罪歴などです。

プライバシー権侵害の要件は次の4点です。

⑴ 私生活上の事実、またはそれらしく受け取られるおそれのある事柄であること。
⑵ 一般人の感受性を基準として当事者の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められるべき事柄であること。
⑶ 一般の人にまだ知られていない事柄であること。
⑷ このような公開によって当該私人が現実に不快や不安の念を覚えたこと。
(東京地裁昭和39年9月28日判決)

4.慰謝料の相場

誹謗中傷による民事上の慰謝料の額については、様々な事情を考慮し、裁判所が最終的に算定します。

【名誉毀損の場合】
名誉毀損に該当する場合、一般人の場合で10~50万円ぐらいが認められるケースが多いです。

それに対して事業主や法人の場合は売上に影響がでるため、慰謝料の額は50~100万円になる事があります。

【侮辱の場合】
1~10万円が目安となります。

【プライバシー侵害の場合】
10~50万円が目安となります。

※上記はあくまで目安です。個別具体的な事情で金額が大きく変わってくる可能性もあります。

5.まとめ

どのような場合に名誉毀損や侮辱になるのかは、個別具体的に考える必要がありますが、基本的には「危ない橋は渡らない」と言う考え方を行うべきでしょう。

特にTwitter等のSNSは炎上マーケティングを行う事で瞬間的に結果を出す(フォロワーを増やす)が出来ますが、自分が問題無いと思った表現方法が客観的には名誉毀損や侮辱に該当する事もあります。

その点は十分注意しましょう。

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甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル。趣味はキックボクシングとランニング

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甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル (詳しい自己紹介は画像をクリック!)。

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