共同出資者から「出資分を払い戻せ」と言われた場合の対処方法

ビジネス法務一般

こんにちは。甲斐です。

会社の設立は一人で行う必要はなく、信頼のおける仲間と一緒に出資をして会社設立を行い、共同経営者として活動する事はもちろん可能です。

ただし、最初は仲が良くても長く会社経営を行っていると「ビジネスに対する価値観」がだんだんすれ違うようになり、共同経営者が会社を辞める、と言う流れが往々してあります。

で、このとき共同経営者から「会社を辞めるんだから、出資した金を払い戻してほしい」と言われる事も良くあるのですが、果たして出資したお金を払い戻す必要があるのでしょうか?

今回はその点を中心にお話したいと思います。

1.出資金は払い戻さなくても良い

株主は出資をする事でその会社の株式を取得し、会社の所有者である「株主」となります。

この出資の法的性質は「借金」とは異なり、後から株主に返さなくても良いお金です。その為、株主が共同経営者であっても、その出資金は原則払い戻す必要はありません。

ただし、出資金と言いつつその実体が「借金」だった場合、当然ながら決められた期限に返済する必要があります。

株式と借金、二つをまとめて「出資」と言っている人もいますので、まずは当事者が言った「出資」の意味が株式なのか借金なのか?そこを明確にする必要があるでしょう。

2.株式に関する対応は必要

出資が株式の場合、株主に出資金を払い戻す必要がありませんが、とは言え元経営者はそのままだと株主のままになってしまいます。

つまり、共同経営者として会社を辞めたとしても、株主の地位はそのままになります。

その為、元経営者から株主として経営に口出しをされる可能性もあり、会社経営に支障をきたす事も否定できないので、「元経営者が所有している株式をどうするか?」については要検討となります。

オーソドックスな方法は、お互いの合意の上で元共同経営者の株式を取得する(買い取る)方法です。

やり方としては

  • 会社に残っている経営者(株主)が、元共同経営者の株式を取得する。
  • 会社が元共同経営者の株式を取得する。

の2パターンがあります。

3.経営者(株主)が、元共同経営者の株式を取得する

これは単純明快で、株式を譲渡する側(元経営者)、取得側(現経営者)が取得金額等の諸条件を決めて契約をする方法です。

勿論、株式の譲渡制限に関する規定をある場合、会社法上所定の手続きを行う必要があります。

具体的に行う事は下記のとおりです。

  • 会社に対して株式譲渡承認請求を行う。
  • 臨時株主総会を招集し、株主に通知する。
  • 臨時株主総会で株式譲渡の承認決議を行う。
  • 譲受人との間で株式譲渡契約を締結する。
  • 株主名簿の書き換えを行う。

株式の譲渡制限の規定が定款で定められていても、株主間の譲渡に関して会社の承認が必要ない規定が定められている場合、株主総会等の開催は必要ありません。

当事者間の契約と株主名簿の書き換えのみです。

4.会社が自己株式を取得する方法

会社が他の株主(特定の株主)から自社の株式(自己株式)を有償で取得する場合、会社法上の細かいルールがあります。

株式の全部に譲渡制限が付いている会社(非公開会社)で、取締役会を設置していない会社の場合、自己株式の取得方法は概ね下記の通りとなります。

  • 株主総会の招集通知・売主追加請求権に関する通知
  • 株主総会の開催(大枠の内容を決める)
  • 取締役の決議(具体的な内容を決める)
  • 株主に対する通知・公告
  • 株式譲渡の申し込み・承諾
  • 株主名簿の書き換えを行う。

特定の株主と自己株式の取得手続きを行う場合、株式を譲渡できない株主との間で不公平が生じる可能性がでてきます。

その為、他の株主は「売り主追加請求」(自分の株式も買い取れと請求する権利)を行うことで、自分の株式を買い取ってもらうことが可能です。

このように特定の株主から自己株式を取得する会社は、株主に売主追加請求の権利があることを通知する必要があるのです。

5.まとめ

「共同で出資して会社を設立したけど、経営に関する考え方ですれ違いが起こり、そのすれ違いが修復不可能になる」ことは良くあることです。

会社は大学のサークルのノリで経営できるものではなく、万が一経営方針について意見が合わなくなった場合はどうするのか?については事前に取り決めをしておいた方が良いでしょう。

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甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル。趣味はキックボクシングとランニング

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