こんにちは。甲斐です。
フリーランスを悩ます大きな問題、それは報酬に関する事です。
この記事を読まれているあなたも、報酬に関するトラブルに巻き込まれた事があるかも知れませんね。
クライアントが報酬を支払ってくれない場合、最終的には裁判を行う必要がありますが、この裁判は非常に時間がかかるケースがあります。
裁判が終了しなければ精神的に疲弊してしまいますし、そうなったら他の仕事にも支障をきたすかもしれません。
しかし、裁判手続きにも色々あり、『簡易迅速』を目的とした裁判手続きもあるのです。
今回は、その簡易迅速な裁判手続き、支払督促と少額訴訟のお話しをしたいと思います。
1.支払督促とは?
支払督促(しはらいとくそく)は、通常の裁判手続きを行う事なく、債務者に金銭等の支払いを強制的に求める手続きです。
債権者の申立てに基づき、裁判所の書記官が行う処分である点も、通常の裁判手続きとは異なります。
① 支払督促の流れ
⑴ 債権者が相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てます(支払督促申立書を提出します)。
⑵ 上記の申立書に不備が無ければ、債務者に支払督促の正本が送達されます(申立人には、送達の結果が知らさせる事になります。)。
⑶ 債務者が支払督促の正本を受領してから2週間以内に支払督促について異議を述べない場合、申立人は、その2週間目の翌日から30日以内に仮執行宣言の申立てをする必要があります。
※申立人が30日の間に仮執行宣言の申立てをしない場合、支払督促は効力を失いますのでご注意下さい。
⑷ 仮執行宣言の申立書に不備等がなければ、支払督促に仮執行宣言が付けられます。
この仮執行宣言付支払督促の正本が債務者に送達され、債務者が仮執行宣言付支払督促正本を受領した日から2週間以内に仮執行宣言後の督促異議の申立てをしないときは、仮執行宣言付支払督促が確定します。
⑸ 債務者がそれでも支払をしない場合、仮執行宣言付支払督促の正本を元に債務者に対して強制執行を行う事が出来ます。
このように支払督促を利用すると、最短約4週間で強制執行の前の段階までの手続きを行う事が出来ますので、通常の裁判手続きと比較して、非常に迅速な手続きと言えます。
② 支払督促の特徴・注意点
- 金銭の支払又は有価証券若しくは代替物の引渡しを求める場合に利用可能。
- 書類審査のみなので、通常の訴訟のように、審理のために裁判所に行く必要はない。
- 手数料は訴訟の場合の半額。
- 債務者が支払督促に対し異議を申し立てると、請求額に応じ、地方裁判所又は簡易裁判所の民事訴訟の手続に移行。
最後の項目が注意すべき点です。支払督促は債務者の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して申立てを行います。
つまり、債務者からの異議があった場合、相手の住所地の裁判所で訴訟が行われる事になります。
と言う事は、相手が遠い場所にいる場合、万が一異議が出てしまうと、(弁護士に依頼しない限り)裁判を行う為にその遠い場所まで行く必要があるのです。
その為、支払督促を検討する場合、相手の住所を良く確かめて、異議が出ても対応できるか否かを検討するようにしましょう。
2.少額訴訟とは?
少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払を求める場合にのみ利用することが出来る裁判手続きです。
通常の裁判と流れは同じなのですが、1回の期日で審理を終えて判決をすることを原則としているのが、通常の裁判とは異なる点です。
また、法廷も通常の法廷ではなく、基本的には裁判官と共に丸いテーブルに着席する形式で、審理が進められます。
1回の期日なので、裁判所にもよりますが、訴えを提起してから1ヶ月~1ヶ月半程で裁判が終了する事になります。
① 少額訴訟の特徴
- 1回の期日で終了、60万円以下の金銭の支払を求める場合に限り利用可能。
- 原告の言い分が認められる場合でも、分割払・支払猶予・遅延損害金免除の判決がされることがある。
- 判決書又は和解の内容が記載された和解調書に基づき、強制執行を申し立てることが可能。
② 少額訴訟の注意点
【少額訴訟判決に対する不服申立ては、控訴ではなく異議の申立てにのみ限られる】
少額訴訟判決をした簡易裁判所に異議の申立てをすることができ、異議が行われると、少額訴訟の判決をした裁判所と同一の簡易裁判所において、通常の裁判が行われます。
そして、異議後の裁判の判決に対しては控訴をすることが出来ません。
さらに、少額訴訟の判決に付された支払猶予、分割払、期限の利益の喪失、訴え提起後の遅延損害金の支払義務の免除の定めに関する裁判に対しては、そもそも異議を申し立てることが出来ないと言った制限があります。
【即時解決を目指す手続きの為、証拠書類や証人は、裁判当日にその場ですぐに調べることが出来るものに限られる】
原則1日で裁判を終わらせる手続きですので、証拠は当日全て揃える必要があります。
なお、証拠があったとしても調べるのに時間がかかる場合は、そもそも少額訴訟に向いていない事案と言えます。
3.まとめ
支払督促も少額訴訟も様々な書籍やサイトで「本人でも出来る、簡単で早い手続き」として解説されている事が多い手続きです。
しかし、支払督促も少額訴訟も注意すべきポイントがあり、この点を見落としてしまうと、あなたにとって不利な状況に陥る可能性も出てきます。
裁判手続きはリカバリーが非常に難しいですので、どの手続きを行うのかは良く検討して選択するようにしましょう。