こんにちは。甲斐です。
フリーランスが報酬未払い等の法的トラブルに巻き込まれた場合、最終的には裁判を検討する必用があります。
ただ、一般の方は「裁判」と聞くと、
- 弁護士費用が高くて費用倒れしそう。
- 何だか難しくて、本当に勝てるかどうか不安だ。
この様に考えてしまい、結果的に泣き寝入りしてしまう人もいるとか。
しかし、泣き寝入りする=「フリーランスが舐められる事」であり、今後のビジネスに悪影響がある可能性があり、その為、これは避けるべき事態と言えるでしょう。
費用面の問題があれば自分で裁判を行う「本人訴訟」と行う手段があるのですが、裁判所は非日常的な空間であり、初めて経験する人は非常に不安になると思います。
そこで今回は、日本における本人訴訟の実情と、本人訴訟に向いている事件・向いていない事件のお話をしたいと思います。
1.日本ではどれだけの人が自分で裁判をしているのか?
まずは基本的な事をお話します。
そもそも、日本では裁判を行う上で弁護士に依頼する義務は法律上ありません。
つまり、裁判は自分で行っても全然良いのです。
実際に弁護士に依頼せず、自分で裁判を行っている方の件数は裁判所が発表している「司法統計」に出ています。
では、実際にどれくらい本人訴訟が行われているのか、平成30年度の司法統計を見てみましょう。
【地方裁判所】
総件数 | 138,682件 |
原告・被告双方に弁護士 | 63,049件 |
原告にのみ弁護士 | 53,489件 |
被告にのみ弁護士 | 3806件 |
原告・被告共に弁護士なし | 18,338件 |
簡易裁判所になると、本人訴訟の割合がもっと増えてきます。
【簡易裁判所】
総件数 | 341,344件 |
弁護士等がついたケース (原告・被告双方・一方含む) | 80,889件 |
原告・被告共に弁護士等なし | 260,455件 |
このように、簡易裁判所では圧倒的に本人訴訟の方が多いのです。
その為、「裁判なんて自分でやるのは無理!!」と気負いする必用は全くないのですが、全ての事件が自分で裁判を行う事が出来るのか?(本人訴訟に向いているのか?)と言うのは別次元の話しです。
次は、本人訴訟に向いている事件、向いていない事件をお話します。
2.本人訴訟に向いている事件
① 業務委託契約に基づく報酬請求
フリーランスが依頼された仕事を終了したにも関わらず、その報酬を支払って貰えないケースです。
依頼された仕事の内容、報酬の金額と支払時期が明確になっていれば本人訴訟に適していると言えます。
② 貸金の返還請求
いわゆる、「貸した金返せよ」事件です。
個人間のお金の貸し借りで良くあるパターンが、少額の金銭を貸したり返したりを繰り返しを行った結果、貸金の残高がいくらあるのか計算するのに骨が折れる場合があります。
このケースでは訴状にその貸し借りの状況を表現する事に一苦労するのですが、それでも本人訴訟に向いている事件と言えます。
③ 売買代金の請求
例えば、自身の製作物をWebサイト等で販売したにも関わらず、その代金が支払われないケースです。
売買の対象物とその金額が明確になっていれば、本人訴訟に向いていると言えます。
3.本人訴訟に向いていない事件
① 不法行為全般
上記のような契約関係に基づく裁判とは異なり、不法行為は主張すべき事が事案によって異なり、その都度専門書等を細かくチェックして訴状を作成する必用があります。
また、損害賠償の額についても報酬金額や売買代金とは異なり、決まった金額はありません。
その為、基本的に原告(訴えた側)が主張・立証する必用があるのですが、立証に失敗すると、原告が主張する金額が認められない事があります。
② 証拠が不十分
本人訴訟に向いている事件であっても証拠が不十分な場合、一転して本人訴訟に向かない事件となります。
(と、言うより、弁護士に依頼しても裁判に勝つ事が難しい事件になります。)
裁判は正しい者が勝つ手続きではなく、証拠がある者が勝つ手続きです。
事件の当事者ではない裁判所は当事者間のやり取りは全く分かりません。
その為、客観的な証拠に基づいて判断する必用があり、その証拠が無ければ原告の主張はほぼ認められないでしょう。
つまり、どんなにあなたが「相手は極悪非道な人間だ!」と主張しても、証拠が無ければ意味はないと言う事です。
③ 事実の内容が複雑
業務委託契約等、本人訴訟に向いている事件であっても、事実関係が複雑な事件の場合、本人訴訟は難しいでしょう。
事実関係が複雑な場合、法的に意味のある事実とそうではない事実を区別・整理する必用があります。
裁判に慣れている弁護士や司法書士であれば慣れている作業ですが、そうではない一般の方の場合、適切に事実関係を整理する事が難しいでしょう。
④ 詐欺等を原因とするもの
Twitter等のSNSで良く「〇〇は詐欺師だ!」と言う投稿がありますが、詐欺を立証するのは非常に困難を伴います。
なぜなら、詐欺は「初めから騙す目的があった」事を立証する必要があるからです。
つまり、当時の相手の心の中を立証すると言う作業です。
このような立証は、弁護士でも非常に苦労するのです。
4.まとめ
本人訴訟に向いている事件は、契約に関する事件であり、フリーランスの報酬未払いに関する事件は、本人訴訟に向いている典型的な事件と言えるでしょう。
ただし、証拠が不十分な場合は本人訴訟の難易度もグッと上がりますので、本人訴訟を行うにしても、一度弁護士や本人訴訟に詳しい司法書士に相談した方が良いでしょう。