実力行使で報酬の回収はNG。自力救済禁止の原則とは?

法律知識一般

こんにちは。司法書士の甲斐です。

私はサラリーマン時代に、勤めていた会社の社長から

「客の支払いが滞ったら、客の所にいって、電話加入権を差し押さえろ(?)」と言われた事があります。

当時の電話加入権は今と比べたら金額が高く、私自身も法律の知識が無かったので「へぇ、お客さんの所行ってそんな事が出来るんだ。」と何の疑問も持たず信じていました。

このような行為の事を「自力救済」と言います。

自力救済を行う事で裁判手続きを行わずに債権が回収できますので、報酬未払いに悩まされるフリーランスにとって、このような制度があれば非常に嬉しいと思うのですが、ちょっと待って下さい!

日本では、この自力救済は禁止されているのです!

1.自力救済とは?

民事法の概念で、何らかの権利を侵害された者が、裁判手続きによらず実力をもって権利回復をはたすことです。

例えば、フリーランスのあなたがクライアントから報酬を支払って貰えない場合に、そのクライアントの所まで出向き、無理やり金目の物を持って行く行為です。

また、店舗を借りていた人が夜逃げ等で行方不明となり、連絡がつかず家賃が入らないというケー スで、店舗に残された什器・備品を大家が勝手に処分する行為も自力救済に該当します。

自力救済を行う側の人間からしてみれば、

「悪い事をしたのはあいつなんだから自業自得でしょ。」

だから自力救済をしても大丈夫!と思われがちですが、日本では自力救済は禁じられており、自分の権利を実現したいのであれば、きちんと裁判手続きを行う必要があるのです。

2.自力救済が禁止されている理由

なぜ自力救済は禁止されているのでしょうか?

理由は簡単です。

もしこのような自力救済が社会的に認められたら、それこそ社会は大混乱になります。

借金を返して貰えない場合、抵当権を設定していないのに、債務者の自宅を勝手に売却する事ができます。

フリーランスが報酬を払って貰えない場合、クライアントの高級車を勝手に手に入れる事が出来ます。

自分の大切なコレクションを盗まれたとしても、盗まれたコレクションを勝手に取り戻す事が出来ます。

仮に権利が侵害された事実が無くても、「あいつに私の権利は侵害されたんです!あいつ、悪いやつなんです!!」と言ってしまえば、勝手に相手の財産を処分する事が許されてしまいます。

それこそ、「ヒャッハー!」とモヒカンが暴れまくる北斗の拳の世界です。

このように、自力救済によって法的トラブルの解決を行うことが認められれば、権利の行使の為に暴力が用いられたり、権利がないのに実力行使がなされる可能性があり、社会秩序の維持が難しくなります。

その為、どんなに相手が悪くても、自力救済は禁止されているのです。

そして、自力救済を行った場合、窃盗等の犯罪になる可能性もあるのです。

最高裁の判例も自力救済は原則として禁止であり、ごく限られた例外的な事情がある場合にのみ、自力救済は許されるとしています。

法に定める手続きによったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能または著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許される(最高裁昭和40年12月7日判決)

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53851

3.まとめ

自力救済が生まれる根本的な原因は、人がそれぞれ持っている「正義感」です。

人として正しくあろうとする姿はとても素晴らしいのですが、自分が「正義」であるならば、相手はその反対の「悪」ではありません。

正義の反対はもう一つの「正義」なのです。

相手は別に悪の組織の一員でもなく、地球を征服しようとしているわけではありません。

自分の権利を実現したいのであれば、面倒くさがらず、きちんと裁判手続きを行うようにしましょう。

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熱き志を持つ起業家を法律とマーケティングで支援する司法書士。趣味はキックボクシングと朗読。

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熱き志を持つ起業家を法律とマーケティングで支援する司法書士。趣味はキックボクシングと朗読。 (詳しい自己紹介は画像をクリック!)。

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