こんにちは。甲斐です。
ビジネスでは様々な契約書が取り交わされますがその中で良く出てくる言葉で「善管注意義務」と言うのがあります。
「受託者は善良なる管理者の注意を持って業務にあたるものとする。」
こんな感じで規定されている事が多いですね。
法律用語は日常では使わない難しい言葉が出てくるのですが、この「善管注意義務」もその難しい言葉の代表格です。
字面を追えば何となく意味が分かりそうですがとは言えビジネス上での責任が発生する項目ですので、「何となく」では後々困った事になるかも知れません。
そこで今回はこの「善管注意義務」の言葉の意味と具体的事例のご紹介をしたいと思います。
1.善管注意義務とは?
善管注意義務とは、「業務を委託された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務」の事です。
この注意義務を怠り、この善管注意義務違反に該当した場合は、状況に応じて損害賠償や契約解除などの責任を負うことになります。
と簡単に文字で書いてしまいましたが、結構重い責任が発生するのです。
最近は気軽に起業ができるようになりましたが法律上当然にこの善管注意義務を負うケースもありますし、相手方が提示した契約書にしっかりと明記されている事もあります。
「起業は簡単だけど責任は重大」
まずはここを押さえておきましょう。
2.善管注意義務違反となるケース(取締役の場合)
では、具体的に善管注意義務違反を問われるケースを見ていきましょう。皆さんがビジネスを行う上で身近であろう「取締役」の善管注意義務違反を例にしてみます。
会社と取締役は委任関係にあり、その委任契約に基づく善管注意義務違反のケースです。
① 法令等に違反した場合
取締役が職務を遂行するにあたり、法令等に違反した場合は善管注意義務違反となります。
これは分かりやすいですね。
また、取締役が直接法令等に違反しなくとも会社に法令等に違反させた場合には善管注意義務に反すると考えられています。
② 会社による違反行為を見付けられなかった場合
取締役には他の取締役などがきちんと職務を遂行しているかを監視しなければならない「監査義務」と言うのもあります。
自分だけではなく、他の取締役が法令等に違反した場合ですね。
自分の担当外の業務について法令違反があった場合でも、善管注意義務違反に問われる可能性があると言う事です。
③ 経営判断を誤って会社に損害を与えた場合
取締役などが行う経営上の判断には「経営判断の原則」というものがあります。
「経営判断の原則」とは、取締役が行う経営上の判断について、決定の過程や内容に不合理な点がない場合は、たとえその判断によって会社に損害が生じたとしても、取締役としての善管注意義務違反にはあたらないとする考え方です。
ただし、経営判断のプロセスに「不注意な誤り」「著しく不合理な点」があれば善管注意義務違反を負うことがありますので注意が必要です。
判例上
- 判断の前提となった事実について十分な調査が行われたか
- 事実に基づいた意思決定の過程が不合理なものではないか
と言う2点から、取締役に善管注意義務があったかどうかが判断されています。
その為、
- 経営判断の前提となる情報収取をきとんと行うこと。
- ときには専門家の意見も踏まえ、慎重に検討した上で経営判断を行うこと。
- 紛争時に備えて、経営判断に至る検討過程についての記録保管を行うこと。
が重要になってくるでしょう。
3.まとめ
今回は取締役を例に出してみましたが、勿論これ以外にも善管注意義務はあらゆる事で発生します。
誰かと取り引きを行う、仕事を受注すると言う事は売上につながる事ですが、同時に責任も発生すると言う事です。当たり前の事ですが、この事は忘れないようにしましょう。