あなたのビジネスにも応用可能。法的三段論法とは?

ビジネス法務一般

こんにちは。甲斐です。

仕事上でもプライベートでも「考える力」の重要性が叫ばれている昨今、考える力を養う為に、色々な勉強をされている方が沢山いらっしゃると思います。

「考える力」の代名詞と言えばロジカルシンキングですが、人によって伝えたいポイントが違いますので、色々な書籍を読んでもイマイチ理解出来ないと言う事があると思います。

そこで今回は、考える力を分かりやすくアップさせる事を目的として、法律家が日常的に使っている思考方法である「法的三段論法」をご紹介したいと思います。

法的三段論法の考え方を応用すると、「考える力」が飛躍的にアップして、あなたのビジネスにも良い影響を与えるかもしれませんので、是非チャレンジしてみて下さい。

1.演繹法(三段論法)とは?

法的三段論法のお話しの前に、まずはロジカルシンキング(論理的思考)の基本である演繹法(三段論法)のお話しをしたいと思います。

演繹法は、ある一般的なルールや法則(大前提)に個別具体的な事情(小前提)を当てはめて、結論を導き出す思考法です。

良く有る具体例を見てみましょう。

  • 人間はいつか死ぬ(一般的なルール:大前提)
  • ソクラテスは人間だ(具体的な事実:小前提)
  • だからソクラテスはいつか死ぬ(結論)

このように、

  1. 決められたルールや法則が存在し、
  2. そのルールや法則に具体的な事情を当てはめてみて、
  3. 決められたルールや法則に合致しているかどうかで結論を出す。

と言うのが演繹法です。

演繹法は上述したとおり、ロジカルシンキングの基本中の基本であり、ロジカルシンキングを学んだ人であれば馴染みがあると思います。

そして演繹法に良く似た思考法を法律家も使用しています。

それが、法的三段論法です。

2.法的三段論法とは?演繹法との違いは?

① 法的三段論法とは?

法律家は法律事件の結論を導く為に、常に法的三段論法を使用しています。

法的三段論法は、大前提である法律(法令)に小前提である具体的事実を当てはめて、結果を導き出す思考方法です。

これも良く有る具体例(刑法199条の殺人罪)を見てみましょう。

  • 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する(法律:大前提)
  • 山田太郎は佐藤一郎を殺した(具体的な事実:小前提)
  • 山田太郎は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役になる(結論)

このように展開する思考法なのですが、「先程の演繹法と同じでしょ?」と思いませんか?

しかし、法的三段論法特有の作業があるのです。

② 法律(大前提)の解釈

法的三段論法を行う前に、必ず行う事があります。それが、法律の解釈(法解釈)です。

先程の刑法199条をもう一度見てみましょう。

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

裁判官は、このような法律の条文に対して、「どのように解釈すべきか?」を考えます。

例えば、刑法199条の「人」とは、お母さんのお腹の中にいる『胎児』も含まれるのか?と考えるのです。

もし胎児も『人』に該当するのであれば、胎児を殺した人物は殺人罪で処罰される事になります。

このように、大前提である法律の条文をしっかりと読み、言葉の意味を明らかにし確認する、これらの一連の作業が法解釈なのです。

③ 事実の確認

続いて行う事が、「事実の確認」です。

裁判所で争われる出来事は「ソクラテスは人間だ」のような単純明快な事実ではない為、証拠で事実認定を行う必要があります。

例えば、AさんがBさんにお金を貸したのに返してもらえない場合、借用書やその他の間接的な証拠(Bさんがお金が無かったのに急に羽振りが良くなった等)で事実関係を認定するのです。

3.法的三段論法の応用方法

このように法的三段論法は大前提である法律の法解釈、小前提の事実認定を行う事で結論を導き出す思考法です。

実はこの思考法は法律家だけでは無く、一般の人でも思考方法として取り入れる事で「考える力」を養う事ができ、仕事の上でも非常に役に立つのです。

それを具体的に見て行きましょう。

① 大前提(目的)の確認

まずは法的三段論法の法解釈の部分です。

例えば会社で何らかの会議がある場合、何に話し合うかの「議題」はそれなりに具体的になっていると思います。

しかし、その議題を話し合って結局どうすれば良いのか?

  • 役員へプレゼン出来るレベルまで話し合う必要があるのか?
  • それとも、ブレストのレベルで良いのか?
  • はたまた、ある程度の形にすべきなのか?

と言った会議で言えば「目的やゴールの確認」が必要になってくるでしょう。

このような大前提の確認を行う事で、無駄な時間を無くし、仕事を効率的に進める事が出来るのです。

② 小前提である事実の確認

ちょっと前にこんなニュースがSNSで拡散されました。

国会議員の給料 5月分から月額26万円、年間421万円引き上げ

ライブドアニュース

https://news.livedoor.com/article/detail/8821470/

このニュースを見たほとんどの人が大激怒していました。

新型コロナウィルスで国民が非常に苦しい時ですから、「ふざけんな!」と脊髄反射したくなる気持ちは良く分かります。

でも、このニュース、実は2014年5月12日に配信された記事なんです。

つまり、今回の新型コロナの件とは全く関係がなかったのです。

でも大多数の人は勘違いしていましたし、逆に事実をきちんと確認する癖がある人は、騙される事はありませんでした。

このように、法的三段論法の「事実を確認する」と言う思考があれば、こんなフェイクニュースには騙されないのです。

これも当然、仕事の場面に応用できます。

例えば、とある企業が中国進出を行う事を検討していて、その会議の中で

「〇〇の分野は中国は今非常に伸びている。〇〇社も中国に進出しているのだから、我が社も今すぐに行動すべきだ!」

なんて話が出てきた時に、「事実を確認する」と言う思考があれば、

「ちょっとまって下さい。本当に〇〇の分野は中国で伸びているのですか?それに〇〇社は本当に中国に進出しているのですか?そのエビデンスはあるのですか?」

と事実をしっかりと確認し、適切な判断を行う事が出来るのです。

4.まとめ

大前提の確認も事実の確認も言葉で言えば簡単ですが、実際に使いこなせている人は非常に少ないのです(だからフェイクニュースに引っかかる人が後を絶たないのです。)。

と言う事は、この法的三段論法の考え方(実際に法律家を目指すわけではないので、あくまで『考え方』でOKです)を身に付ける事で、他の人よりも「仕事ができる、深い考えができる」ビジネスパーソンなる事が可能になるでしょう。

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甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル。趣味はキックボクシングとランニング

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甲斐 智也

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表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル (詳しい自己紹介は画像をクリック!)。

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