こんにちは。甲斐です。
あなたが会社を設立した場合、ビジネスに関連するその後の様々な契約は会社が行う事になります。
仕事を受注した際の契約も、広告や宣伝を誰かにお願いする際の契約も、オフィスを新たに借りる場合の契約も、すべて会社と言う「別人名義」で契約する事になります。
このように、あなたと言う個人と会社と言う法人は別人なのですが、一つだけあなたと言う「個人」がどうしても契約の主体になるときがあります。
例えば、金融機関から事業用のお金を借りる際の「保証契約」です。
この保証契約はあなたと言う「個人」で契約する必要があるのですが、この良く耳にする「保証」や「保証人」について、あなたは正確な部分まで理解していますか?
会社を設立する場合、この保証に関する知識は必ず知っておくべきです。
そうしなければ、万が一あなたが亡くなった場合に残された家族が大変な事になる可能性がありますので・・・。
1.保証契約・保証人とは?
保証契約は文字通り、他の債務者を保証する為に行う契約の事です。
例えばあなたの友人Aさんが銀行からお金を借りようとした時に、あなたが保証人になった場合、Aさんが「債務者」、あなたが「保証人」になります。
Aさんが普通に借金を返済していれば、あなたは普段と何も変わらない日常を送る事ができます。
しかし、Aさんが借金の支払が出来なくなった場合、保証人であるあなたがAさんの代わりに銀行に対してAさんの借金を支払う必要があるのです。
これが保証契約の本質です。
2.保証契約の性質とは?
① 附従性(ふじゅうせい)
附従性とは、主たる債務契約が変更、消滅した場合、保証契約も変更、消滅すると言う性質です。
保証契約はあくまで主たる契約にくっ付いているものなので、上の例で言えば友人Aさんが借金を完済すれば、保証契約も当然に消滅します。
② 随伴性(ずいはんせい)
随伴性とは、主たる債務の移転に伴って移転するという性質です。
たとえば何らかの事情で債権が譲渡された場合、保証契約も連動して移転します。
➂ 補充性(ほじゅうせい)
補充性とは、主たる債務が履行されない場合に、初めて保証人はその債務を履行する責任を負うと言う性質です。
これに関連して保証人には
- 催告の抗弁権(まずは債務者に請求すべきである事を主張できる。)
- 検索の抗弁権(債務者に弁済する資金力がある旨を証明することで、まずは債務者の財産に強制執行すべき旨を主張できる。)
と言う権利もあります。
3.連帯保証・連帯保証人とは?
それでは、頭に「連帯」がくっ付いた「連帯保証人」とは何なのでしょうか?
文字通り連帯した保証人なのですが、通常の保証人とは大きく異なるが、上記の「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」が無い事です。
また、保証人が複数いる場合、保証人はその頭数で割った金額のみを返済すれば良いのですが、連帯保証人の場合は、全ての連帯保証人が全額を返済しなければなりません。
(なお、連帯保証人がA、B、Cの3人の場合でAのみが全額支払った場合、AはBとCに「代わりに払った分を支払え」と請求する事ができます。)
つまり、保証人に比べて連帯保証人にはより重い責任が課せられており、現在では保証人と言えば「連帯保証人」にする事がほとんどです。
4.会社の経営者が個人で連帯保証人になる場合
会社を設立した後に出てくるのが、事業用の借入をした場合で債務者を会社、保証人を社長個人にするケースです。
一見するとどっちも社長が関与しているので「同じじゃん」と思うかもしれませんが、会社と社長個人は別人格ですし、会社と社長個人のお金は全く別物なのです。
また、お金を貸す立場である銀行から見れば、保証人を立てない場合、あくまで会社の財産から返済して貰うしかありません。
会社が破産してしまえばそこでお終いです。
そこで銀行は、社長個人を連帯保証人にして、万が一会社の財産から回収が出来なくなった場合、社長個人の財産から回収するようにしているのです。
ただ、事業用の借金なのでしっかりと儲けを出して返済していけば問題はないのですが、社長が万が一不慮の事故等で亡くなった場合、問題が出てくるのです。
5.保証人の地位は相続される
相続が発生した場合、相続人の財産は相続人に引き継がれる事になりますが、実は預貯金や不動産と言ったプラスの財産だけではなく、借金のようなマイナスの財産も引き継がれます。
つまり、「連帯保証人」の地位も法定相続分に従って相続人に相続されるので、会社の財産で借金を返済できない場合、各相続人は相続した財産や自己の財産で返済する必要があるのです。
つまり、会社を設立して事業用の借入を行った場合、同時に相続対策も必要になってくるのです。
6.まとめ
会社経営を行っていると、事業拡大の為に借入を行う事は良くある事です。
ビジネスの為の借金であり、それを元手に稼ぐ事が出来れば全然問題はないと思います。
しかし、「連帯保証人としての地位は相続される」と言う事を常に意識をして、残される家族が困らないような対策を必ず行うようにしましょう。