こんにちは。甲斐です。
以前、こんなニュースが流れて、Twitter界隈がざわつきましたね。
ツイッターで他人の投稿を転載する「リツイート」で名誉を傷つけられたとして、元大阪府知事の橋下徹氏がジャーナリストの岩上安身氏に慰謝料など110万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が23日、大阪高裁…
結局のところ、最高裁への上告は断念されたようで、高裁判決が確定しています。
「リツイートするだけで名誉棄損に該当するなんてあり得ない。リツイートは賛同の趣旨で行うだけのものではない。」と様々な人がこの判例に関して批判をしている状況です。
このような判例が出てしまった以上、リツイートを行う場合は注意する必要がありますが、ではどのような場合に名誉棄損になってしまうのか?と言う点ですが、判決文を読み込んでみないと具体的な事は分かりません。
その為、今回はリツイートによって名誉棄損になってしまう場合について、判決文から分析をしてみたいと思います。
1.事件の概要
Twitterで他人の投稿を転載する「リツイート」で名誉を傷つけられたとして、橋下徹氏が某ジャーナリストに対して損害賠償を求めた民事訴訟です。
ジャーナリストは2017年10月、府知事時代の橋下氏が幹部職員を自殺に追い込んだなどとする第三者の投稿をリツイートしましたが、それが名誉棄損に該当し、リツイートした本人も損害を賠償する責任を負う、と言う判断が地裁、高裁共になされました。
判決文に記載されている、問題となった元ツイートは下記のとおりです。
「Jが30代でA知事になったとき,20歳以上年上のAの幹部たちに随分と生意気な口をきき,自殺にまで追い込んだことを忘れたのか!恥を知れ!」
(この「J」と言うのが、恐らく橋本氏の事でしょう。)
この投稿が橋本氏の社会的信用を低下されるとして、名誉棄損となりました。そしてこの投稿をリツイートしたジャーナリストも、名誉棄損に該当する、と言う結論なりました。
まず、ここまでのポイントして、今回のお話は「元ツイートが名誉棄損である」事が大前提と言う点です。
これを前提とした上で、実際の判例の重要な部分を見て行きましょう。
2.リツイートが名誉棄損に該当する場合
まずは判決の中で、そもそもリツイートがどのような趣旨で行われているのか?と言う事を裁判所が判断した部分を見てみましょう。
最初は地裁判決です。一番下にある地裁判決の11ページから12ページに記載されていますので、その内容を要約します。
【要約】
- Twitterはツイートだけではなく、他人のツイートを引用したツイート(リツイート)ができる。
- リツイートは自分のコメントを付けるリツイート(引用リツイート)と、自分のコメントを付けずにリツイート(単純リツイート)をする事ができる。
- 投稿者が元ツイートを単純リツイートする場合、元ツイートの内容に賛同したり、逆に批判したり、様々な目的が考えられる。
- でも、元ツイートを批判したり、議論を喚起する目的でリツイートする場合、普通は何らかのコメントを行う引用リツイートをするはずだから、このような目的でリツイートする場合、単純リツイートを行う事は考えにくい。
- Twitterが140文字と言う制限があったとしても、単純リツイートは一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準として、投稿者がリツイートをした意図が理解できるような特段の事情の認められない限り、リツイートの投稿者が、自身のフォロワーに対して、元ツイートに賛同する意思を示していると解釈するのが相当だよね。
- ただし、前後のツイートの内容から投稿者がリツイートをした意図が読み取れる場合(例えば批判とか)は例外だよ。
裁判所は一応、リツイートの目的が賛同だけではなく、批判等もあり得るとしていますが、批判等をするのであれば、通常は引用リツイートするよね?それが無ければ原則として、一般的な見方をすれば賛同している事になる=橋本氏の社会的評価が低下した=違法、と言う判断をしました。
続いて、高裁の判決文です。一番下にある高裁判決の21ページ(下から8行目)から22ページ(上から6行目まで)に記載されていますので、その内容をまた要約します。
- 単純リツイートって、原則として元ツイートの表現内容そのものを、フォロワーのタイムラインに表示させる行為だよね。
- そうであれば、元ツイートの意味が一般閲覧者の普通の注意と読み方を基準として解釈して、
- 元ツイートの表現内容が変わったと変わったと解釈できるような特段の事情がある場合を除いて、
- 元ツイートの表現内容が人の社会的評価を低下させるものであると判断されたら、
- 単純リツイートした人が元ツイートの表現内容を自分のフォロワーに閲覧可能な状態に置くことを認識している限り(通常は認識しているはず)、
- 違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除いて、
- 単純リツイートを行った経緯、意図、目的、動機等のいかんを問わず、投稿について不法行為責任を負うものというべきだ。
最後、太字にした通り、最終的に地裁判決より厳しい判断がされる事になりました。
これで単純リツイートの場合は、自分自身が名誉棄損のツイートをした場合と同様の法的責任を負う、と言う結論になったのです。
3.リツイートしたい場合の対応
一般の方は「リツイートしただけで名誉棄損なんてやってられない!」と思われるかも知れませんが、このような判決がある以上、それなりの対応が必要になってくるでしょう。
では具体的にどうすれば良いか?
まず、名誉棄損的なツイートについては単純リツイートを行わない、と言うのが考えられます。
違法性阻却事由があれば法的責任を免れることが出来ますが、裁判で主張立証しなくてはいけないので、正直大変です。
でも、どうしてもリツイートしたい場合(例えば批判とか)はどうすれば良いのか?その場合は単純リツイートではなく、引用リツイートを行う事が考えられます。
判例にも、元ツイートについて批判したり、フォロワーに議論を喚起する目的でリツイートする場合は、通常はコメントをする引用リツイートを行うだろう、と書かれています。
引用リツイートによって、賛同する趣旨ではないことを明確にしていれば、不法行為責任を免れる事ができると思います。
このように、名誉棄損ぽいなーと言うツイートに対してリツイートする場合、このような工夫が必要になってくるでしょう。
4.まとめ
今回取り上げました裁判については、リツイートの意味するところ以外にも、様々な争点があります。
下記に地裁の高裁の判決文のリンクを貼っておきますので、興味ある方は読んでみて下さい。