こんにちは。甲斐です。
何か、「元Googleの人」と言う肩書の人が炎上してますね。
実は「Googleで業務委託で働いていただけ」だったとか。
当然ながらアッチコッチから批判がされているのですが、当の本人は悪質なコメントをした人間に対して、訴訟を行う事を検討しているみたいです。
「誹謗中傷だ!」と。
まぁ良くあるスラップ訴訟なのですが、このような出来事に対して
「しっかりと自分の意見を発信したい!」
と思う方もいらっしゃるでしょう。
とくにSNSやブログを積極的に活用されている方はその気持ちが強いと思います。
ではその時に、名誉毀損とか言われない為の批判の仕方をどうすれば良いか?と言うのが、今回のテーマで、意見・論評と名誉毀損についての裁判所の考え方をご紹介していきたいと思います。
1.ポイントは、「人の社会的評価を低下させるかどうか」
名誉毀損となるポイントは、適示した具体的な事実や批判の表現方法が対象者の社会的評価を低下される事によって成立します。
「具体的な事実」とは、例えば「あいつは詐欺師だ!」と言う事です。
「詐欺」と言った犯罪は人の社会的評価を低下させますので、名誉毀損に該当するでしょう。
そして意見や批判と言うのは具体的な事実を適示しない事があります。
その場合、どの程度の表現方法で名誉毀損に該当するかを見てきましょう。
2.単なる感想・愚痴の場合
単なる感想の場合抽象的で根拠に乏しい、単なる感想・愚痴は名誉毀損が否定されるケースが多いです。
有名なところでは、「イエス!●●クリニック」と連呼するCMが陳腐であると発言した国会議員について、対象のクリニック経営者が訴えたケースで、裁判所は社会的評価を低下させないと言う判断をしました。
また、とあるリフォーム業者を「最低です」とネット上に投稿したケースについても、裁判所は社会的評価の低下を否定しました。
3.前提となる事実がある感想の場合
感想が具体的な根拠を持つ場合単なる感想ではなく、前提となる事実がある場合、その事実の内容によっては社会的評価を低下させる事があり得ます。
例えば「あの店のランチセットは賞味期限切れの食材を使っているので不味い」の場合、「ランチセットは不味い」だけであれば単なる個人の感想なので、名誉毀損には該当しないでしょう。
しかし、意見の前提である「賞味期限切れの食材を使っている」と言う事実を適示した場合、その店の社会的評価が低下する可能性がある為、名誉毀損に該当する可能性があります。
4.反対意見・批判の場合
反対意見や批判については、
- 一般の読者の普通の注意と読み方を基準として
- それが対象者の見解・立場に対する批判や評価を述べるものと理解できる場合
社会的評価を低下させるものではないと判断されます。
ただし、それも限界があり、前提となる事実が社会的評価を低下させたり、批判の表現方法に問題がある場合、名誉毀損となります。
例えば
「性格ブス」「人格チビ」
「読者をバカにしたバカ」
「〇〇高校の恥」
「基地外」「マジで頭逝ってる」
いくら意見や批判とは言え、このような表現を行った場合、社会的評価を低下させたとして名誉毀損を認めた裁判例があります。
また、相手を侮辱しなくても、表現方法が一定以上「強い」場合、社会的評価を低下させ得ます。
美容施術に関する広告が「明らかに誇大広告です」と言う意見に対し、社会的評価を低下させると判断した裁判例があります。
5.公正な論評の法理
意見や批判であっても社会的評価を低下させると判断された場合でも、対抗策は一応あります。
それが「公正な論評の法理」と呼ばれるものです。
これは名誉毀損に該当するけれど、「公正な論評の法理」に該当した場合、結果として名誉毀損には問われない、(免責される)と言う理屈です。
公正な論評の法理は簡単に言うと
- 公共性、公益性があり
- 前提としている事実が重要な部分について真実である事の証明がある。
- または真実と信じるについて相当の理由がある
- 意見ないし論評としての域を逸脱していない
事が挙げられます。
例えば有名なインフルエンサーのA氏について「A氏は詐欺師だ」と言った批判をし、あなたが訴えられ、社会的評価を低下させると裁判所から判断された場合、
- 実際にA氏が詐欺師であるか。
- 詐欺師であると信じた事について相当の理由がある事。
を証明する必要があるのです(詐欺の場合、非常に難しいですが)。
6.まとめ
以上、ザックリと説明しましたが、ポイントは
「意見や批判を行う場合は、その表現方法に気を付けましょう」
と言う事です。
下品な言葉はもちろんNGですし、強い表現が場合によっては名誉毀損と認定される事があります。
特に普段から口が悪い人は十分に気を付けて下さい。
つい普段のノリで批判してしまい、相手から全力で訴訟される危険性がありますので。