「簡単に契約書が作成できる」サービスを過信してはいけない理由

契約書

こんにちは。司法書士の甲斐です。

本日たまたまFacebookを見ていたら「簡単に贈与契約書が作成できるアプリがある」と言った内容の投稿があり、試しにそのアプリを試してみたんです。

確かに、ちょっとした質問を答えるだけで贈与契約書がデータで作成され、後は印刷すればOKと言う感じのサービスでした。

一般の方から見れば「とても簡単に贈与契約書ができる!士業なんていらないじゃん!」と思われる内容ですが、専門家から見れば贈与の対象が現金オンリーで「財産をあげる、貰う」と言った単純な契約書の内容で、正直インターネットや書籍にあるひな形と全く同じレベルのものです。

また、本当に単純な内容なので、遺産分割時に重要になる「持ち戻し免除の意思表示」の選択の有無も無かったり、結構穴だらけの契約書だったんですね。

某士業が監修したアプリのはずなのに・・・。

このように、近頃「契約書が簡単に作れる」サービスやアプリが頻繁にリリースされていますが、そのサービスの全てを過信するのは大問題なのです

それはなぜか?一つ一つ分かりやすくお話ししたいと思います。

1.ひな形はあくまでひな形であり、個別具体的な事情を反映していない

例えば先程の贈与契約書、指摘をした通り「持ち戻し免除の意思表示」の選択の有無がありません。

持ち戻し免除とは「特別受益」の持ち戻しの免除を意味します。

「特別受益」とは、遺産の前渡しのような贈与を意味し、この特別受益があった場合、遺産分割時点における遺産に、贈与した財産を持ち戻して遺産の額を定めるルールがあります。

こうしないと、生前贈与を受けた相続人、受けなかった相続人間で不公平になりますので。

ただ、贈与する側の意思表示で、この特別受益の持ち戻しの免除の意思表示が可能なのです。

この持ち戻し免除の意思表示、遺産分割のときに結構重要になりますので、贈与する側は持ち戻し免除をするかしないかを十分に検討する必要があります。

それなのに上記のアプリでは選択すらできないので、大問題と言えるでしょう。

このように、「簡単に契約書が作成できる」サービスはあくまでひな形的なサービスであり、個別具体的な事情に一歩踏み込んだ契約書とは言えないのです。

2.書類が重要なのではなく、「契約」と言う実体が重要

契約書以外でも何らかの法的な書面が必要になったとき、我々専門家は良くこのような質問を受けます。

「何かひな形的な物があるんでしょ?取り敢えずそれを下さいよ。」

ひな形さえくれれば後はその通りやるから(だから安くしてよ)、と言う意味だと思うのですが、これが皆さんが陥っている大誤解なんですね。

契約は書類が重要なのではなく、「契約があったと言う実体」が重要なのです。

見よう見まねでひな形を埋めたとしてもその契約が成立していなければ、後からトラブルになるのは必須です。

この事を理解していない人が「不動産を贈与『した事』にしたんだけど、何だか良く分からない税金がかかるので、やっぱり登記を抹消したい」と司法書士に相談したりするんですよね。

こんな無茶苦茶な事が「簡単に契約書ができるサービス」を利用する事で起こり得るのです。

3.そもそも、法律関係は「簡単」ではいけない

別の視点からお話をします。そもそも、契約等の法律関係は「簡単」にできるようではダメです。

利用者である一般の方から見れば簡単な方が良いかも知れませんが、それだとかえって一般の方の不利益になる可能性があるのです。

例えば契約であれば契約当事者の権利と義務を定めます。

一旦契約を行えば当事者は義務を行う必要があり、その義務を行わなければ訴えにより裁判所が法律関係を確定させ、強制的にその義務を行う必要があります(強制執行)。

このように目には見えませんが、強力な法律関係が発生するのが契約なのです。

それにも関わらず簡単に法律関係を作る事が出来れば、後々大きなトラブルになる可能性もあるのです。

4.まとめ

誤解してほしくないのですが、「このようなサービスを使ってはいけない!」と言うお話ではなく、使うのであれば自己責任で!と言う事を言いたいのです。

あくまでひな形的なものであり、個別具体的な事情を反映した契約書ではありません。また、仮に契約書に問題があったとしても、サービスを提供している会社は何も責任を負わないからです。

なお、「契約書が簡単に作れるサービスが一般化すれば士業の仕事が無くなる」なんて意見がありますが、むしろ逆です。

見よう見まねで作った書類に問題点があってどうしょう??なんて相談がますます増えてくると思いますので。

契約書を自動で作成できるアプリ、サービスを利用する場合は自己責任で。自己責任が嫌であれば、専門家にしっかりと相談するようにしましょう。

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