こんにちは。甲斐です。
副業の形態が一昔前と大きく変化し、noteをはじめ様々なプラットフォームが誕生しました。
そして、最近注目されているのが「オンラインサロン」です。
インフルエンサーやタレントと言った有名人が主催している事が多いのですが、個人の方でも運営されている方がいて、その数も増えてきています。
ただし、このオンラインサロン、色々なトラブルが発生しています。
例えばオンラインサロンのオーナーと利用者とのトラブル。又は利用者同士のトラブル。このようなトラブルになった場合、重要になってくるのが「規約(定型約款)」です。
利用者が規約違反に該当した場合、退会を含めた何らかの処分を与える事が出来る根拠となりますので。
ただし、この規約、テキトーに作っていると「そんな事は聞いていない!承諾していない!!」とまたトラブルに発展するのです。
今回はオンラインサロンの利用者とトラブルにならない為の規約について、新しく改正された民法を交えてお話していきます。
1.約款とは?
約款とは、多数の相手と同一の内容の契約を結ばなけれなならない性質の取引において、あらかじめ定型的に定められた契約の条項の全体を指します。
一般的には「規約」と呼ばれている事が多いですね。
例えば、金融機関で口座を開設する場合、何らかの保険に加入する場合、何らかのポイントサービスを利用する場合等、細かい字で書かれている書類があった事を覚えていませんか?あれが実は約款なのです。
約款は大量の取引が迅速に行われる現代社会に無くてはならない存在ですが、実は今まで法律(民法)に約款に関する規定がなく、解釈上問題になる事がありました。
そこで民法が改正され、約款の中で一定の要件を満たすものを「定型約款」とし、そのルールを規定するようになりました。
2.民法の「定型約款」とは?
まずは民法が定めた、定型約款の定義とその合意方法を見てみましょう(民法第548条の2)。
(定型約款の合意)
第548条の2 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
非常に難しいのですが、カッコ書きを見ながら、まずは「定型約款」の定義を見て行きましょう。
① 「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引」か?
不特定多数の者を相手方とする必要がありますので、どんなに人数が多くなろうとも取引の相手方が特定されていれば民法上の定型約款では無い事になります。
② 取引の「内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」かどうか。
ポイントは「双方にとって合理的なものか」と言う点です。
この判断基準としては、単に交渉力の格差を埋めるだけのものであれば「合理的ではない」と解されています。
一般的な事業者・消費者間の約款の多くは、当事者の交渉力の問題ではなく、大量の取り引きを迅速に処理する事を目的としているで、「定型約款」と言えるでしょう。
③ 定型取引において、契約の内容とする事を目的として準備された物か?
上記の①+②を「定型取引」と言います。
そして、この定型取引において、「契約の内容とする事を目的として、特定の者により準備された条項の総体」を「定型約款」と定義しています。
条文が長く、またカッコ書きも長く分かりづらい文章ですが、オンラインサロンのように、サロンのオーナーが用意し、サロンの参加者が守るべき規約については、民法上の「定型約款」に該当すると言えるでしょう。
3.定型約款の合意
定型取引を行う事の合意をした者は、一定の場合には、定型約款の個別の条項についても合意したものとみなされます。
その「一定の場合」ですが、オンラインサロンの場合、例えば、サロンのオーナーが、あらかじめその定型約款を契約の内容とする事を、相手に表示していた場合が該当するでしょう。
ここまで手順を踏めば、サロンの利用者がオンラインサロンの規約一つ一つに合意しなくても、規約全体に合意したものとみなされるのです。
4.まとめ
少しややこしかったと思いますので、ここでまとめてみます。
・オンラインサロンのトラブルを回避する為には約款(規約)が必要。
・原則として、規約の一つ一つの条項について、サロン利用者と合意する必要がある。
→後から「そんな事は聞いていない!」とトラブルになる事も。
・しかし、サロンのオーナーが用意している規約が民法上の「定型約款」に該当し、
① 利用者と定型取引を行う事の合意があり
② オーナーが予め、定型約款である規約を、契約の内容とする事を利用者に表示していた場合、
③ 利用者は、規約の個別の条項についても合意をしたものとみなされる。
サロン利用者とのトラブルを未然に回避する為には、上記の青い四角の中の事を徹底する必要があります。
ここまでやって「規約にちゃんと書いているでしょ?これは民法上の『定型約款』なので、あなたは規約に合意した事になるんですよ」と根拠を持って強く主張する事が出来るのです。