ビジネスの話し合いが上手くいく秘訣。交流分析を用いたコミュニケーション

心理学・コミュニケーション

こんにちは。司法書士の甲斐(@tomoya_kai)です。

個人事業主であっても、ビジネスは一人では完結せず、クライアントを含め様々な人とコミュニケーションを行う必要があります。

このコミュニケーション、言葉すると非常に簡単ですが、実際はコミュニケーションが上手くいかず、人間関係のトラブルに発展する事もしばしば。

クライアントとの関係、上司や部下の関係、様々な立場の人がコミュニケーションが上手くいかず、悩まれているのです。

コミュニケーションが上手くいかない原因は様々ありますが、当事者同士の複雑に絡み合った感情の問題が大きく関わっている事が多いのです。

つまり、その複雑に絡み合った感情の問題を丁寧に紐解いてコミュニケーションを円滑にする事で、当事者の人間関係も良好になるのです。

今回はその感情の問題にスポットをあて、心理カウンセリングでも利用されている「交流分析」を応用させた、適切なコミュニケーションの方法をお話していきたいと思います。

1.良好なコミュニケーションにも役に立つ交流分析とは?

交流分析とは、アメリカの精神科医エリック・バーン(Eric.Berne)が考案した心理学の理論とそれに基づく心理カウンセリングの手法(心理療法)です。

人間の悩みのほとんどは人間関係の悩みです。

交流分析は他人との交流の中で、自分自身に何が起こっているのかを見つめて人間関係を良好にする事が出来る心理療法です。

心理学は人間の心がどうなっているのかを学ぶ学問なのですが、その本質は非常に難しく、学者によって意見が様々に分かれています。

しかし、交流分析の考え方は一般の方でも分かりやすく、日常生活に活かしやすい為、心理カウンセラーだけではなく、学校教育や企業の社員教育で用いられている事もあります。

交流分析は

「人が抱えている悩みのほとんどは、『人間関係』から発しているもので、人と人との関わり方が上手くいけば、悩みの大半は解決する。」

と言う考え方を元にして、他人と関わる時の自分の状態(これを「自我状態」と言います。)に着目して、どのように対人関係を構築しているのかを分析していきます。

① 「自我状態」とは?

交流分析で言う自我状態とは、自分自身が何かを感じたり、考えたり、行動したりする時の心の状態の事です。

分かりやすく、例え話でお話していきます。

次のような場面を想像してみて下さい。

あなたは甥っ子の誕生日プレゼントを購入する為、あるデパートのおもちゃ売り場に行きました。

するとそこには床に寝転んでワンワン泣いている小さな女の子がいました。

あなたはその場面で、どのように感じて、考えて、行動するでしょうか?

「うるさいなぁ、おもちゃ買ってもらえないからって駄々こねないでよ。じっくりとプレゼントの為のおもちゃが見れないじゃない!」

と最初は思うかもしれません。

しかし良く見てみるとその女の子の両親の姿がありません。

「あの子の両親はどこにいったのかしら?迷子かもしれない。声をかけなきゃ」

と思いその女の子に声をかけるかもしれませんね。そして最終的には、

「そもそも、子供が迷子にならないようにするのが親の義務でしょ!」

と怒りの矛先が女の子の親に向けられる事もあるでしょう。

このように、一人の人間なのに、物事の捉え方がその時々の状況によって変わってくるのです。

その違いが「自我状態」と呼ばれているもので、自我状態には大きく分けて3つ、細かく分けて5つの状態があります。

② 親(Parent=P)の状態

「親(P)」の自我状態は、私達が子供の頃の親、若しくは親と同じ役割をしていた大人の考え方・感じ方・ふるまいの影響を強く受け継いだ思考・感情・行動の事です。

「大人の言う事は素直に聞きなさい」
「あなたは私の子供なんだから、困った事があったら絶対に助けてあげるから」

等と言われて育った時の感情や反応の自我状態をそのまま表現します。

さらに、親の自我状態は二つのタイプが存在します。

批判的で支配的な親の自我状態(Critical Parent 若しくは Controlling Parent:CP)

親の自我状態の中で厳しさを中心にした自我状態です。

信念や価値観、理想を持ち、主張する事が出来る強さがあります。

CPが強い人は、責任感が強く、リーダシップや統率力がありますがその反面、自分の考えを他人に押し付けがちになり、自分の価値観とは違う人間を批判したり排除したりする傾向が強くなります。

ブラック企業のワンマン社長をイメージして頂ければ分かりやすいと思います。

養育的な親の自我状態(Nurturing Parent:NP)

親の自我状態の中で、優しさを中心とした自我状態です。

思いやりがあり、寛大で世話好き。親切で優しく親身になって人と接します。

NPが強い人は心が広く、他の人の面倒をよく見ますがその反面、過保護やお節介になりがちで、相手の自立を妨げたる事があります。

また黙って見守る事が出来ず、ついつい手を出してしまう傾向にあります。

③ 成人(Adult=A)の状態

「成人(A)」の自我状態は、今、現状で起こっている出来事に対して、冷静に判断する、「成人」の思考・感情・行動の事です。

成人の自我状態は、状況に応じた最も現実的・合理的で冷静・論理的な判断を行います。

しかし一方で、損得勘定に敏感になり、打算的になりがちです。

また、人間味に乏しく夢がなく、考えるばかりで行動を伴わないといった側面もあります。

④ 子供(Child=C)の状態

「子供(C)」の自我状態は、子供の頃と同じような思考・感情・行動を行う自我常態の事です。

子供の自我状態も二つのタイプが存在します。

自由な子供の自我状態(Free child:FC)

自由な子供(FC)の自我状態は、子供のように自然に自由に表現できる自我状態です。

欲求に素直で大変人間味に富んでいますが、その反面、自分の欲求を満足させる為に相手に幼稚な印象を与えがちです。

また、ワガママで身勝手、自分の感情に振り回されやすいのも特長です。

順応した子供の自我状態(Adapted Child:AC)

順応した子供(AC)の自我状態は、抑制的で順応的、過剰適応的、消極的、依存的な状態の自我状態です。

相手に配慮して協調的で集団の輪を大事にして、自分を抑えまわりに合わせる、いわゆる「良い子」です。

マイナスな部分としては、対人関係に疲れてストレスを感じやすい。評価を気にし過ぎて素直に言えず、限界になると癇癪を起こす事もあります。

2.小まとめ

長くなりましたので、少しまとめましょう。

私達には同じ出来事が起きても、人によってその感じ方、考え方、行動の仕方は違ってきます。

また、例え同じ出来事が起きたとしても、相手が違えば全く違う反応をします。

その反応が自我状態で、自我状態は5つのパターンに分類出来ます。

・批判的で支配的な親(CP)
・養育的な親(NP)
・成人(A)
・自由な子供(FC)
・順応した子供(AC)

この5つの自我状態が皆さんや相手の中に存在し、出来事や相手によって無意識に使い分けられているのです。

その為、コミュニケーションを円滑に行う為には、自分自身がどのような時にどのような自我状態が強くなる傾向になるのかを知ると言う事が重要になります。

3.交流分析から見た3つのコミュニケーションのパターン

交流分析から見た人間のコミュニケーションのパターンは、以下の3つのパターンに分けられます。

自分自身にP・A・Cの自我状態があり、相手もP・A・Cの自我状態を持っていると考え、自分のP・A・Cのどれかを、相手のP・A・Cのどこに向けてコミュニケーションを行っているのか、そのメッセージの交換の様子を観察していくのです。

① 相補的交流

相補的交流は図のように、花子さんのFCの自我状態から雪子さんのFCの自我状態に向けられた会話で、相手も同様にFCの自我状態から会話がなされています。

これはお互いに期待通りの反応を得られた交流であり、コミュニケーションはかみ合っています。

図の矢印はコミュニケーションが行われている方向を示しているのですが、相補的交流では矢印は聞いて欲しい相手の自我状態に向けられていて、その反応も期待していた自我状態から行われており、矢印は平行線になります。

このように期待された反応があり、矢印が平行線になる相補的交流は、適切で期待通りのコミュニケーションであり、健康な人間関係を形成する事が出来るのです。

② 交叉的交流

交叉的交流は図の花子さんのように見てきた映画の面白さを夫の太郎さんに伝え、太郎さんも映画の面白さを共有してくれてFCから反応をしてくれると思っていたところ、太郎さんがCPから花子さんを批判してしまった場面です。

このように相手の反応が自分の予想とは異なっており、矢印が交叉している交叉的交流は、コミュニケーションが円滑に進みません。

そして、お互いに不満や違和感、敵対心、無理解などのネガティブな感情を感じやすくなります。

③ 裏面的交流

裏面的交流は、裏に本心が隠されたコミュニケーションです。

表面的な部分では相補的交流のようになっていますが、同時に発信するメッセージに心理的な裏面があり、結果としてコミュニケーションがスムーズに行われなくなります。

4.交流分析を応用させて話し合いをスムーズに進める方法

① コミュニケーションの大原則

コミュニケーションが円滑に進むポイントは、お互いの自我状態に対する矢印が平行である「相補的交流」になる事です。

つまり、矢印が交叉している交叉交流の時にコミュニケーションのエラーが発生するのですが、その場合は、自分と相手のどちらかか、もしくはその両方が自我状態を移行させる必要があります。

【具体例】

社員「課長、○○社の担当が本日お会いしたいそうです。」(A→A)
課長「この状況で対応している余裕があると思うか?馬鹿も休み休みに言え!」(CP→AC)
社員「何やら大事なお話のようですが。」(A→A)
課長「だから無理なものは無理なんだから、断れよ!」(CP→AC)

このように自我状態に着目してみますと、交叉的交流になっている事が明らかであり、このままコミュニケーションがかみ合わなければ、お互いに不満が残るのみです。

このような時は自我状態を移行させて、相補的交流に持っていけば良いのです。

課長は社員の言葉に対し、CP→ACで反応しました。このコミュニケーションを円滑に進める為には、社員は自我状態を一旦課長が求めるACに移行させる必要があります。

社員「お忙しい所、大変申し訳ございませんでした(AC)。それでは、ご都合の宜しい日時を教えて頂けますでしょうか?先方に伝えます。(A→A)」
課長「○曜日の○時であれば大丈夫だから、そう伝えといて。(A→A)」

このように、相手が自分に投げかけた自我状態に一旦移行しメッセージを発信、そこからAの自我状態にさらに移行、相手のAに対してメッセージを送る事で円滑なコミュニケーションを進める事が出来ます。

② 非言語的メッセージの重要性

今までは言葉でのコミュニケーションを主にお話してきましたが、言葉ではない、非言語のメッセージもコミュニケーションでは重要になります。

非言語とは、声の質・トーン・大きさ・身振り・表情・姿勢等の言語以外のメッセージの事です。

例えば洋服店で試着したところ、店員から
「この服はとてもお似合いですね」と言う言語的メッセージがあり、心理レベルでもそう思っている場合は笑顔であったり、声のトーンも感情がこもったものになるはずです。

ところが、心理レベルと言語的メッセージが一致していなければ、目をあわせない、笑っていない等の非言語的メッセージが表れるでしょう。

こうなるとメッセージを受け取った方も不愉快になり、お互いに良い思いがしません。非言語的メッセージもコミュニケーションを円滑に進めるための重要な要素なのです。

5.まとめ

言葉を使ってコミュニケーションを行うのは当たり前すぎであり、今更勉強なんてと思われるかもしれません。

しかし、このように人の状態を分析して、その場その場であったコミュニケーションを行う事を意識して学んでいけば、無駄な争いを行わなくてもすみます。

「話がまとまりそうにないな。もめそうだな」と思われたら、ぜひ自我状態に着目して、スムーズなコミュニケーションを心がけてみて下さい。

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