借りたお金を資本金にしてはいけない理由

財務・会計・税務

こんにちは。甲斐です。

会社を設立する際、色々な事について考え決める必要がありますが、今回はその中の一つ「資本金」に関する事です。

現在、資本金は1円からでも会社設立可能となっていますが、あまりにも資本金が少ないと対外的な見栄えが良くなく「この会社、大丈夫か?」なんて思われる危険性があります。銀行口座の開設の審査にも影響があるかも知れません。

また、許認可が必要な事業を行う場合、その許認可の要件を満たさない事もあるでしょう。

その為、ある程度の金額を資本金として用意するのが妥当ですが、とは言えそのようなお金がない場合にどうすれば良いのか?

そのようなときの解決策として「銀行からお金を借りて、資本金にすれば良い!」とアドバイスする人がいるのですが、実はそれはNG行為なのです。

1.そもそも「資本金」とは?

資本金とは「事業を行う上での元手になるお金のこと」です。

ビジネスを行う目的は、元手になるお金を集め、それを利用して事業を行い利益を出す事あり、資本金はまさにその「ビジネスを行う上での元手のお金」となります。

詳細は下記ページをご連下さい。

このように会社を設立する上で資本金は基本中の基本事項であり、対外的に見ても「この会社の元手となるお金はいくらなのか?」と言うのは関心事の一つです。

何故なら、会社設立直後にある程度の資本金が用意できたのであれば「起業に際して計画的にちゃんとお金を貯めた(もしくは他人から出資をしてもらえるぐらい魅力的な事業)と言う印象を与える事ができるからです。

「資本金なんて登記事項証明書を見なきゃ分からないし、関係ないよ」

と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、信用の一つのバロメーターですから、バカにする事はできません。

なので少しでも多い金額を資本金とするべく銀行等からお金を借りて、その貸金を資本金に充てようとする人が一定数存在します。

ビジネス系インフルエンサーも「お金が無ければ銀行から借りて、それを資本金にすれば良い」なんて言っている人もいたりするのですが、これが実は「見せ金」と言う違法行為なんですね。

2.借りたお金を資本金にする「見せ金」がなぜ違法なのか?

なぜ借りたお金を資本金にしてはいけないのか?

その理由は、「借りたお金は返済義務があるから」です。

資本金と言うのはあくまで会社の資産です。ところが、返済の義務がある借入金は会社の資産とは言えず、その為、資本金にする事はできないのです。

これは借入金全般に言える事なので、銀行からの借入金は勿論、親兄弟親戚から借りたお金も同様に資本金にする事は出来ません。

そして、借りたお金を資本金に入れた場合、様々な法的責任が発生します。

① 公正証書原本不実記載罪(刑法第157条)

(公正証書原本不実記載等)
第百五十七条
公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(以下、省略)

虚偽の登記申請を行った場合、公正証書原本不実記載罪に該当する可能性があります。

本来資本金としてはいけない借入金を資本金として登記申請を行う為です。

② 出資の履行を仮装した場合の責任等

(出資の履行を仮装した場合の責任等)
第五十二条の二 発起人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める行為をする義務を負う。
一 第三十四条第一項の規定による払込みを仮装した場合 払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払
二 第三十四条第一項の規定による給付を仮装した場合 給付を仮装した出資に係る金銭以外の財産の全部の給付(株式会社が当該給付に代えて当該財産の価額に相当する金銭の支払を請求した場合にあっては、当該金銭の全額の支払)
2 前項各号に掲げる場合には、発起人がその出資の履行を仮装することに関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者は、株式会社に対し、当該各号に規定する支払をする義務を負う。ただし、その者(当該出資の履行を仮装したものを除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
(以下、省略)

借入金を資本金にした場合、上記の「払い込みの仮装」に該当します。

その為、株式会社に対してその分の出資の支払いを行う義務が発生します。

③ 詐欺罪

銀行から借り入れを行う場合、様々な目的・理由で借り入れを行いますが、借入金を資本金にする事はこの借り入れの目的・理由外の行為となります。

その為、銀行に対する詐欺罪に該当する可能性があります。

3.借入金以外で資本金を取得する方法

借入金を資本金にするのはNGです。ではそれ以外の方法で資本金を取得する方法についてお話ししましょう。

① 贈与してもらう

いわゆる親や兄弟親戚等から「お金をもらう」と言うやり方です。

もらったお金なので返済義務はありませんから、資本金にする事ができます。

ただし、贈与税の対策や贈与契約書の作成はしっかりと行う必要があります。

② 出資してもらう(株主になってもらう)

親や兄弟親戚、もしくはそれ以外の第三者に出資をしてもらう方法です。

ただしこの方法は出資=株主となってもらう方法ですので、会社経営に口を出される可能性があります。

その為、株主総会で議決権がない株式にする株式(種類株式)にすると言った対策を、場合によっては検討する必要があるでしょう。

③ クラウドファンディングを利用する

流行りのクラウドファンディングを利用する方法もありますが、内容によっては借入金と同じケースもあります。

利用規約等を良く確認し、クラウドファンディングがどう言う性質なのかをチェックするようにしましょう。

4.まとめ

今回のお話は専門家であれば常識中の常識なのですが、一般の方は知らない人も多いのでブログでまとめました。

自称「起業家支援の専門家」やビジネス系インフルエンサーも「借入金を資本金にすれば良い」と間違った知識を言っている事もあるので、特に法律関係のお話は慎重にその根拠を確認しましょう。

もし会社設立の事で分からない点等ありましたら、お気軽にご相談下さい。

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甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル。趣味はキックボクシングとランニング

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甲斐 智也

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表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル (詳しい自己紹介は画像をクリック!)。

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