こんにちは。甲斐です。
今回も書籍の紹介です。
著者は福井寿和さん(@aomorio)で、飲食店の事業を行っていたのですが、コロナ禍の影響で全店舗閉店して会社を清算する事を早期に決断し、その思いを語ったnoteが140万PVを超え大反響となりました。
本書籍はその全店舗を閉鎖し、再出発を選んだ経緯や福井さんの思いが詰まった書籍ですが、とあるご縁から発売日前に本書籍を拝読する事ができましたので、その感想を本ブログにてまとめたいと思います。
結論から先に申し上げますと、本書籍は全ての起業家が読むべき本ですし、起業家を支える全ての士業も読むべき本です。
1.本書籍の概要
本書籍は福井さんが創業からコロナ襲来、全店舗閉店の決断、会社の清算、再出発までの経緯が書かれた本です。
福井さんは大学卒業後、数年間のサラリーマン経験を経て、地元の青森にUターンされます。
青森で政治家を目指し、市議会議員選挙に立候補されますが落選。
その後、起業の道に進む事になります。
最初はコワーキングスペースの運営を行っていますが様々な事が重なり、たった三か月で飲食店へ事業転換する事になります。
初月の売上は11万円と飲食店事業も最初は上手くいかず、様々な問題が福井さんに降りかかってきましたが、それでも一つ一つ乗り越える事で事業も軌道にのり、複数店舗を構える事ができました。
その矢先には発生したのが、新型コロナウィルス感染症の騒動です。
誰も体験した事がない未知の問題について、全店舗閉店と言う決断、再出発を選んだ2019年末から2020年8月ぐらいまでの、約8ヶ月間の福井さんの苦悩や決断、経営者としての理念についてが語られています。
閉店する事が全てではありませんが、福井さんと同様に、コロナに苦しみ事業を継続すべきか撤退すべきか決断に迷っている全ての経営者に参考になる書籍です。
2.全ての起業家が読むべき理由
全ての起業家が読むべき理由、それは単純明快で
「会社経営のエッセンスが全て詰まっているから」
です。
創業時の売上がない時代の苦悩、従業員を雇用した際のコミュニケーションのすれ違い、家族との絆、絶対的な答えが無い時代の経営判断の難しさ・・・etc。
昨今はSNS等の普及により、起業が簡単になりましたが、簡単になったが故の弊害も指摘されています。
例えば、本来あるべきビジネスマインドを身に付けず、中身が全くないコンテンツを販売する独りよがりのビジネスを行う人が増えたり。
本書籍では、そのような質の低い起業家にならない為のポイントが沢山書かれています。
先輩経営者がわざわざ自分の経験を赤裸々に語ってくれているのです。
起業家・会社経営者であれば同じ経験を体験する可能性が高く、そうであればその経験から学ぶのは必然と言えるでしょう。
また、現代はビジネスのサイクルが非常に早く、同じ事業が永遠に続くわけではありません。
その為、事業の撤退を考える時も必ず訪れます。
この書籍はまさに「事業の撤退」を前向きに捉えた書籍です。
倒産は「悪」ではなく、会社を失っても人生は続きます。
その事を前提として、「何の為に起業するのか?」と言う問いのヒントがこの書籍は語っています。
3.起業家を支援する士業の関わり方
またこの書籍は、別の視点からも気づきを与えてくれます。
それは、「起業家を支援する専門家の関わり方」です。
その起業家を支援する専門家として、コロナ禍のような未曾有な事態に際し、支援する起業家とどの様に関わるか?と言う視点です。
何度も言いますが、この書籍の中では福井さんの起業家としての苦悩や思いが沢山描かれています。
「社長は孤独」とは良く言われますが、起業家は良くも悪くも自分で悩み・考え・結論を出す生き物です。
その為、普段でも(見た目では分かりませんが)動機でめまいがしたり、心臓がキリキリ痛みだして今にも倒れそうな起業家は沢山います。
コロナ禍のような誰も答えが分からない問題が突然目の前に押し寄せたら、その苦悩は想像を絶するでしょう。
起業家を支援する専門家は、そのような起業家の「思い」をもっと受け止めるべきです。
特に私のような士業は「法定業務」にこだわり、「それは私の仕事ではない」と思いがちになります。
しかし、そのような姿勢はまさに「困った時に相談しづらい敷居の高い専門家」です。
コロナ禍は誰も想定できなかった未来です。
今後も同様に「想定できない、困難な未来」が押し寄せてくるでしょう。
その時の「起業家を支援する士業の姿勢」のヒントも、この書籍には描かれているのです。
4.まとめ
「起業に関する本」は世の中には沢山ありますが、「閉店」「廃業」「倒産」の事について経営者の思いに触れる事ができる書籍は多くありません。
閉店に関してはどうしてもネガティブになりがちですからね。
しかし、起業と言うスタートがあれば、ゴールの一つである「閉店」も当然考える必要があり、その一連の流れこそ「ビジネス」なのです。
この書籍はビジネスと言う見えない・答えがない世界を歩き進む我々にとって、勇気をくれる一冊となります。