裁判で勝つ為には、裁判官の頭の中の「要件事実論」を理解しよう!

ビジネス法務一般

こんにちは。甲斐です。

「クライアントが報酬を支払ってくれない!」と言った法的トラブルはあって欲しくないですが、万が一クライアントとトラブルになった場合、最終的には裁判を行う事を検討する必要があります。

裁判を行う上で何よりも大事なのが証拠ですが、実はその証拠を作る上で大前提となる重要な事があるのをご存知でしょうか?

簡単に言えば「裁判官の頭の中」の事で、「裁判官はどのような判断基準で当事者間の法的トラブルについて結論を出すのか?」と言う点です。

今回は、証拠を作る上でも重要な、裁判官の頭の中にある「要件事実論」のお話です。

1.要件事実論とは?

要件事実論とは、ざっくりと言えば、

裁判官が法廷に持ち込まれた法的トラブルについて、原告(若しくは被告)の主張を認めるか否かの判断を行う為の論理構成

の事です。

マーケティングやコンサルティングを行っている人であれば「フレームワーク」と言う言い方がしっくりと来ると思います。

実は裁判官も、当事者の紛争について判断を行うためのフレームワークと言える「要件事実」と言う論理構成を使用しているのです。

実は要件事実は様々な定義があるのですが、一般的には

一定の法律効果が発生するために必要な具体的事実

と言う意味です。

(本によっては要件事実以外にも「主要事実」と言う別の意味の言葉が使われているのですが、分かりやすく要件事実=主要事実と思って下さい。)

ちょっと難しい言葉になってしまいましたので、分かりやすい「売買」の事例でお話しします。

山田さん(仮名)が所有していた中古のノートパソコンを、友人の鈴木さん(仮名)に3万円で売った事を想定しましょう。

山田さんは鈴木さんから売買代金の3万円を支払ってもらえないので、裁判をする事を考え、訴状を作成する事にしました。

訴状には上記の要件事実を記載する必要があるのですが、要件事実としてどのような「具体的事実」を記載すべきか?と言う問題点があります。

その答えは、売買に関する法律(民法)の条文にありますので、早速条文を見てみましょう。

(売買)
第555条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

上記の条文から売買と言う法律上の効果が発生するために必要な具体的事実を導き出すと、

  • 山田さんが自分の中古ノートパソコンを鈴木さんに売る事を約束した。
  • 鈴木さんにその代金3万円を支払う事を約束した。

となり、この二つが売買における要件事実となります。

なお、売買の要件事実のポイントは「売ります」「買います」と約束するだけで良く、実際に売買の対象物を渡したり、代金を支払う事までは求められていません。

裁判所に訴えを提起する側(原告)は、訴状の中でこの要件事実を主張する必要があります。

逆に言えば、どんなに相手が人間として最低である事を主張したとしても、この要件事実を欠くようであれば、その訴えは却下される事になります。

2.裁判官の頭の中ではこのような論理展開がされている

さて、売買の例に戻りましょう。

原告である山田さんが訴状の中で要件事実を漏れなく主張した場合、被告である鈴木さんが求められるのが、山田さんの主張に対する反論です。

この反論を行わない場合、原告の主張が認められてしまいますので、原告の主張を争いたいのであれば、必ず反論を行う必要があります。

その反論の方法はいくつかあるのですが、一つは「否認」や「不知」です。

原告が主張している事実そのものを否定したり「知らない」と主張する事です。

例えば、そもそも「売買契約は成立していない」と言う主張です。

原告が主張した要件事実に対して、被告が否認した場合、原告は主張した要件事実が実際にあった事を証拠で証明する必要があります。

もう一つの反論方法は「抗弁」です。

これは、原告が主張した事実を認めつつ、それと矛盾しない新たな事実を被告が主張する事です。

例えば「売買代金は既に支払った」「売買契約は成立したが、被告は原告から売買対象の中古ノートパソコンの引渡しをまだ受けていない。だから売買代金は支払わない。」

このような主張です。

その他、原告の主張した事実を認める場合や、原告が主張した事実に反論をし忘れる「犠牲自白」と言うのがあります。

そして被告が「抗弁」を行った場合、今度は原告が「再抗弁」として、被告の抗弁と矛盾しない事実を主張する・・・と言うように裁判は展開される事になり、裁判官の頭の中も、このような論理展開がされているのです。

【裁判官の頭の中】

・原告は漏れなく要件事実主張しているか?
→要件事実が漏れている場合、訴えは却下される。

・原告が主張している事実について、被告が「否認」「不知」を主張している事実は無いか?
→被告が「否認」「不知」を主張した場合、要件事実を証明する責任は原告にある。

・原告が主張している事実について、被告が「抗弁」を主張している事実は無いか?
→原告の主張と矛盾しない事実である「抗弁」は、被告側に証明する責任がある。

このように、裁判官の関心事は「要件事実」であり、裁判官の判断基準は、「要件事実が漏れなく主張されているか?その要件事実が証明できる証拠はあるか?」に尽きます。

その為、裁判を行う場合は当然ながら要件事実を意識するのは勿論ですが、契約書の作成段階であっても、この「要件事実」はしっかりと意識すべきなのです。

3.まとめ

裁判を想定した場合、この要件事実は無くてはならない存在です。

しかし、一般の方が見よう見まねで作成した契約書を見てみますと、要件事実まで意識した契約書は皆無であり、どんなに契約書を作成したとしても、「使えない契約書」では意味がありません。

もし「自分の作成した契約書は問題ないのか?大丈夫なのか?とご不安の場合は、お気軽にお問い合わせ下さい。

当事務所で裁判になった時にきちんと勝てる契約書なのかどうかをチェック致します。

【お気軽にお問い合わせ下さい】
起業やパーソナルブランディングに関する提供中サービスはこちら。

甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル。趣味はキックボクシングとランニング

関連記事

特集記事

甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル (詳しい自己紹介は画像をクリック!)。

「表現力」で営業力アップ

パーソナル・ブランディング

人気の記事

  1. 1

    一人会社の場合はどうなる?取締役と会社の「利益相反取引」とは?

  2. 2

    違法じゃなければOKでしょ?が通用しない理由

  3. 3

    水を1万円で売る?商品・サービスの価値の作り方とは?

  4. 4

    トラブル防止!コンサルティング契約書の作成のポイント・ひな形

  5. 5

    コンサル契約で「いかなる理由でも返金しない」条項があったら要注意!

最近の記事

  1. 今こそ営業マンは「脱」営業マン化すべき

  2. 演劇のセリフを喋るレッスンはビジネスの営業面でも活用できる

  3. AI時代を生き抜く営業力は「コミュニケーション力」と「共感力」です

  4. 演劇・演技レッスンがビジネスで注目されている理由とは?

  5. 異業種交流会で仕事を取るマル秘テクニック、教えます。

TOP