
こんにちは。司法書士の甲斐(@tomoya_kai)です。
不動産を購入すると、不動産の名義を売主から買主へ変更する登記申請を行います。
生前贈与の場合も同様に、不動産の名義を贈与者から受贈者へ名義を変更します。
このように、不動産に関する権利変動が発生した場合、当事者から登記申請が行われるのですが、実はこの権利に関する登記は、法律上義務付けられていません。
つまり、登記申請をしなくても良いのです。
しかし、事実上、不動産に関する権利変動が発生した場合、登記申請が行われるのがほぼ常識になっています。
どうして法律上の義務ではないのに、登記申請が行われているのか?
その最大の理由は、その不動産の所有者である事について、他の第三者に対抗する為に登記を行う必要があるからです。
1.不動産登記とは?
不動産登記とは、不動産(土地・建物)の物理的状況と権利関係を公示する(公にする)為に作られた登記簿に記録する事です。
昔は登記簿と言えばその文言通り帳簿だったのですが、現在はコンピューター・システム化されており、登記はこの磁気ディスクにデータで記録する事を指します。
物理的状況が登記された部分が「表題部」、権利関係が登記された部分を「権利部」と呼ばれており、それぞれ登記される内容が違います。
表題部・・・不動産の所在、地番、地目(不動産の現況)、地積(不動産の面積)・・・等。
権利部・・・その不動産の所有者や担保権者・・・等。
2.不動産登記を行う事は義務か?
実は、物理的状況が登記される「表題部」に関しましては登記を行う義務が発生するのですが、「権利部」に関しましては、登記を行う事は義務付けられていません。
意外かもしれませんが、法律上は権利部については登記を行うか行わないかは、個人の自由になっているのです。
だったら、別に登記しなくても良いので?(司法書士に支払う報酬もあるので・・・)と思われる方もいらっしゃるのですが、不動産取引の実務では、登記を行う事が当たり前になっています。
3.不動産登記を行わないと・・・?
実は、不動産登記を行わなかった場合、その権利を第三者に対抗する事ができません(民法第177条)。
これはどう意味なのか?具体例で説明します。
BさんはAさんから土地を購入しました。残金の決済が終わり、後は登記を行うだけだったのですが、実はAさんは、数時間前に同じ土地をCさんにも売却し、Cさんは登記申請を行っていたのです。
この結果、先にCさんに登記されたBさんは、その所有権をCさんに対して対抗する事ができません。これが不動産登記の対抗力です。
土地を取得できなかったBさんは、Aさんに対し損害賠償請求はできますが、Cさんについては何も行う事ができません。
こんな事が実際に起こり得るのかと思われるかもしれませんが、現実に発生しているのです。
お金に困ったAさんは、BさんとCさんの両方から売買代金を授受しどこかへ逃亡する、といった流れです。
また、住宅ローンを利用した際の抵当権も同様です。
融資を実行したけども抵当権設定の登記を行わなかった場合、その後に登記された抵当権に対抗する事ができません。
万が一その不動産が競売されたとしても、登記をしておかないと債権を優先的に回収する事はできません。
その他、決済当時に市税滞納による差押えの登記がなされた、と言う事案にたまに遭遇します。
この事案も対抗力の問題となりますので、実務上は決済の延期を行う事になります。
4.まとめ
登記申請は簡単なモノから難しいモノまで、様々あります。
今回ご紹介した事例の登記は、一般の方が勉強せずに行うのは難しい部類になります。
その為、登記申請を行わず放置しているお話を聞く事がありますが、第三者へ対抗する為には登記が必須です。
もし登記申請の事でご不明点等ございましたら、司法書士にお気軽にお問い合わせください。