取締役の任期が過ぎてしまった場合の再任登記手続き

会社設立・商業登記

こんにちは。司法書士の甲斐です。

実務上多い会社の登記の一つが「役員に関する登記」です。

役員の就任であったり、その逆の退任であったり、その内容は様々なのですが、中でも多いのが従前の取締役全員の任期が満了し、同じ取締役全員がそのまま「再任」する登記です。

この「任期満了+再任」を同時に行う手続きを「重任」と呼んでいるのですが、この重任の登記を行わなかった、つまり「取締役の任期が過ぎてしまったけど再任の手続きを行わなかった」場合どうすれば良いのか?

今回はその手続きについて詳しく解説していきます。

1.取締役の任期をちゃんと確認しましょう

「取締役の任期が過ぎてしまった」と思っても、定款に記載された取締役の任期を再度確認しましょう。「実は任期は切れていませんでした」なんて事も良くありますので。

取締役の任期は原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。

ただし、株式の譲渡制限が付いている、いわゆる「非公開会社」においては、定款で定める事で任期を10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までに延ばす事ができます。

非公開会社については10年以内であれば取締役の任期を自由に決める事ができるので、「あれ?任期何年だっけ?」なんて事が本当に良くありますので、定款で必ず正確な任期を確認しましょう。

2.取締役って任期が切れたらどうなるの?

ところで、取締役の任期が切れた場合、その取締役の「取締役としての地位」はどうなるのでしょうか?

任期が切れてしまったら取締役ではないので、取締役として行った様々な行為は無効になるのでしょうか?ただ、無効になってしまったら取引先を巻き込んでの大問題になりますので、法律上(会社法上)とある規定が存在します。

まず、原則として取締役はその任期が満了すると退任します。

でも、その取締役が退任することによって会社法や定款で定める取締役の人数を割ってしまう場合は、その人数を満たす取締役が選任されない限り、当該取締役は取締役として職務執行を行う権利と義務があります。

今回のケースで言えば、従前の取締役全員が任期満了により退任していますので、会社法や定款で定める取締役の人数を割ってしまいます(取締役が0人になりますので)。

その場合は、任期が満了しても退任できず、取締役としての権利があるし義務も果たして下さいね、と言う事になります。

で、ここで一つ疑問が出てきませんか?では結局取締役の再任手続きをしなくても問題ないじゃないか、と。

ところが、そうではないんですね。

任期の満了した取締役に関して何も登記をしないことは「登記懈怠」に該当し、また必要に応じて取締役を選任しない行為は「選任懈怠」として過料の対象になりますし、それを何年も放置しているとみなし解散の対象となります。

その為、速やかに再任と登記手続きを行う必要があるのです。

3.取締役の再任の手続き

① 株主総会の決議

取締役の全員が任期が切れてしまった場合の再任の手続きですが、まずは株主総会で取締役を新しく選任する必要があります。

これは従前の取締役がそのまま再任する場合も同様です。

【株主総会議事録(例)】

第1号議案  取締役選任の件

議長は、令和●年●月●日付けの定時株主総会終結の時をもって取締役全員が任期満了となっているため、改めて取締役として下記の者を選任したい旨を説明し、本議案の賛否を議場に諮ったところ、満場一致をもって原案どおり承認可決された。

東京都新宿区●●町一丁目2番3号 山田太郎
東京都渋谷区●●町45678番地 鈴木一郎

なお、被選任者は席上にて即時就任を承諾した。
(以下、省略)

なお、株主総会で取締役に選任された人は、その就任を承諾することによって取締役になります。

就任の承諾は口頭でも成立しますが、登記申請の添付書類として、就任を承諾する書面を提出する必要があります。

この場合、就任承諾書を用意する方法もありますが、上記のとおり株主総会の場で就任を承諾した意思表示を記載した株主総会議事録を援用することも可能です。

② 代表取締役の選定

取締役の選任手続き後、代表取締役の選定手続きを行います。代表取締役の選定方法については各会社の定款で定められているはずですので、取締役の任期と同様、必ず定款で正確な代表取締役の選定方法を確認しましょう。

主に下記のような選定方法となっているはずです。

・株主総会での選定
・取締役の互選
・取締役会の決議

なお、非公開会社で代表取締役の選定方法を定款で決めていない場合、取締役全員が代表取締役となります。

また、選定された代表取締役は、取締役の再任手続きと同様、代表取締役としての就任の承諾が必要となります。

③ 登記申請

取締役を選任、代表取締役を選定した日から2週間以内に、取締役及び代表取締役の変更登記の申請を管轄法務局に対して行います。

登記申請における添付書類の一例は下記の通りです。

・株主総会議事録
・株主リスト
・取締役の就任承諾書(株主総会議事録を援用すれば省略可)
・取締役の互選書(代表取締役を選定した互選書)
・代表取締役の就任承諾書(互選書を援用すれば省略可)
・定款(代表取締役の選定方法の根拠として添付が必要)

4.まとめ

普段の仕事の忙しさから、取締役の登記手続きはどうしても後回しになりがちです。

しかし、会社として取引を行う以上、取締役の任期の管理は絶対必須ですし、任期が満了したら取締役の変更手続きを行う必要があるのは当然です。

法律上義務があるのも勿論ですが、場合によってはお客さんにも迷惑をかける事になりますので。

もし「ウチの任期、どうなっていたっけ?まさか任期満了してたりして・・・」とご不安な場合、お気軽にご相談下さい。

登記事項から定款まで全てチェックを行い、問題がないかご確認をさせて頂きます。

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