取締役を解任したい場合の手続きと登記申請(役員変更登記)

会社設立・商業登記

こんにちは。司法書士の甲斐(@tomoya_kai)です。

一人で会社を作って事業をしている時は問題にならないのですが、仲間と一緒に起業した場合や、優秀な人を見つけたので、新たな取締役として迎え入れる。

会社経営を行っていると、そのような機会から取締役として一緒にビジネスを行うパートナーが増える事があります。

自分一人だけの力では限界がありますが、優れた能力・スキルを持ち、価値観が同じ人材と一緒にビジネスを行うのは心強いですからね。

ただ、人間関係が良好のまま上手くいけばよいのですが、ビジネスにおける考え方や何らかの理由で衝突・仲が悪くなり、会社から出て行って欲しいと考える。

つまり、「取締役としてのあいつを解任したい。」こんな事もあるかも知れません。

でも、「取締役の解任」は本当にできるのでしょうか?

また、出来るとしても、どのような理由の時、どのような手続きを行えば良いのでしょうか?

今回は、その取締役を解任したい場合の手続きについて、分かりやすく解説します。

1.どのような場合に取締役を解任できるのか?取締役の解任方法

まず結論を申し上げますと、取締役はいつでも株式総会で解任する事が出来ます。

解任するのに理由は必要はありません。

取締役として適切な仕事をしていたとしても、感情面の対立を理由として、形式上は株主総会の決議で取締役を解任する事が出来ます。

解任のための株主総会の決議は、原則として、株主総会で議決権を行使できる株主の過半数が出席して(定足数)、出席した株主の過半数の賛成があれば解任する事が出来ます。

上記の定足数は定款で変更する事が可能ですが、3分の1以上にする必要があります。

例えば、あなたが会社の唯一の株主であった場合、株主総会を会社法上適切に開催して、上記の取締役の解任の決議を有効に行えば、それだけで取締役を解任する事が出来るのです。

このように、取締役としての任期が途中であった場合でも、理由は特に関係なく、株主総会で解任する事が可能です。

ただし、解任に正当な理由が無ければ、解任された取締役から損害賠償請求をされる可能性があります。

具体的には、まだ支払っていない取締役の報酬が損害として考えられるでしょう。

なお、正当な理由ですので、「あいつムカつく」と言った感情論だけでは、損害賠償請求をされるのは必須です。

では「正当な理由」とは何なのか?

それを考えて見たいと思います。

2.「正当な理由」が認められる場合

取締役を解任する場合で「正当な理由」が認められるケースは下記のような事が考えれらます。

  • 健康悪化により職務の執行に支障がある場合
  • 法令・定款に違反する不正な行為を行った場合
  • 職務の能力を欠き著しく不適任である場合

分かりやすいのが、「会社の金を横領した」等でしょう。

その他、経営判断を誤って会社に損害を与えた場合も正当な理由になると述べた上で、取締役としての適格性を欠くことや投機性の高い取引の失敗を経営判断の誤りであると指摘して正当な理由ありと認めた裁判例があります。

こう言ったケースでは取締役の解任について正当な理由が認められ、取締役の損害賠償請求権は発生しない事になります。

3.その他のポイント

① 新取締役には株式を渡さない

取締役の解任は過半数の決議で行います。

その為、新しい取締役を迎え入れる際、最初は株式を渡さないか、渡しても過半数以下にした方が良いでしょう。

しばらく様子を見て信頼ができるかどうかを見極めた上で、株式を渡すかどうかを判断しても良いと思います。

② 株主総会の開催の招集通知が原則必要

株主総会を開催する場合、株主に対して株主総会を行う事の通知が必要になります(会社の形態によって1週間前だったり2週間前だったりします)。

召集通知を省略する事も可能ですが、こう言った形式面はしっかりしておかないと「株主総会は無効だ!」と言われる可能性があるので要注意です。

③ 取締役の任期を2年にする。

一人会社の場合、取締役の任期を10年にしている会社が多いと思いますが、新しい取締役を迎え入れる際に、この任期を2年にすると言う方法もあります。

2年毎に取締役の登記を行うのは面倒ですが、一方で取締役としての適性が無いと判断した場合、2年間で会社を去ってもらう事が可能です。

定款を変更する等、少し手間がかかりますが、検討に値する施策だと思います。

4.取締役を解任した場合の登記手続き(役員変更登記)

取締役を解任した場合、解任の効力が発生してから2週間以内に取締役の変更登記申請を行う必要があります。

登記申請に必要な添付書類は、取締役の解任に関する株主総会議事録、株主総会リスト等です。

【株主総会議事録の例】

臨時株主総会議事録

令和2年7月15日午前10時00分当会社本店において臨時株主総会を開催した。

株主総数  1名
発行済株式の総数 100株
議決権を行使できる株主の数 1名
この議決権の数 100個
出席株主数(委任状による者を含む) 1名
この議決権の数  100個
出席取締役(1名) 山田太郎
議長兼議事録作成者    山田太郎

上記のとおり定足数にたる株主の出席があったので、代表取締役山田太郎は議長席に着き、議事に入る。

第1号議案 取締役佐藤一郎の解任に関する件

議長は、取締役佐藤一郎の解任について、その解任事由を詳細に説明し、これを議場に諮ったところ、満場一致をもって取締役佐藤一郎の解任が可決確定された。

以上で本日の議事を終了し、議長は午前10時30分閉会を宣した。

上記の決議を明確にするため、本議事録を作成し、議長及び出席取締役が記名押印する。

令和2年7月15日

株式会社 山田商店 臨時株主総会において

議    長・代表取締役 山田太郎  (会社実印)

その他、役員変更に関する登記申請に手続きについては、下記ページをご参照下さい。

株式会社の役員変更の登記申請の方法を、司法書士が分かりやすく解説します
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5.まとめ

以上のとおり、法律上の手続きをきちんと行う事で、取締役を解任する事は可能です。

しかし、これらはあくまで法律上の手続きのお話であり、誰かを取締役として迎え入れ、一緒に仕事をするのであれば、

・その人が本当に信頼に値するのか?
・何らかの感情的トラブルがあったとしても、キチンと話し合いが出来るのか?

と言った事も重要な要素となるでしょう。

また、万が一取締役を解任する場合でも、その理由となる証拠をしっかりと残す事が、後々のトラブルを未然に防ぐ事に繋がります。

取締役の解任は手続き上の問題や、その後のトラブル防止の観点も必要になってきますので、ご不明点等がありましたら、司法書士に相談される事をお勧めします。

当事務所でも取締役の解任を含め、役員変更に関するご相談を受け付けております。

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