こんにちは。司法書士の甲斐です。
役員変更等、会社の登記はご自身でも行う事が出来るのですが、今回は一般の方があまり意識されていない会社の登記(商業登記)に関する「区」についてお話したいと思います。
会社に関する各登記の登記事項は、共通する事項を「区」という単位に分けて整理されています。
これ、意外と重要でして、例えば同じ「区」に関する登記申請を同時に行った場合、何件変更登記をしても、登録免許税が同じ金額になるのです。
例えば、新たな取締役の就任と、代表取締役の住所変更を別々に登記申請した場合、登録免許税はそれぞれ1万円(資本金1億円以下)になるのですが、同時に登記申請を行った場合、合計で1万円になるのです。
では、どの登記事項が同じ区になるのか?分かりやすくお話していきます。
1.商号区
会社を特定する基本事項が記載されている区です。
「商号」区と言う名前ですが、商号(会社名)だけではなく、本店所在地や会社の公告方法等も商号区に含まれます。
具体的には下記の事項が商号区に該当します。
- 商号
- 商号譲渡人の債務に関する免責
- 本店の所在場所
- 会社の公告方法
- 貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項
- 中間貸借対照表等に係る情報の提供を受けるために必要な事項
- 会社成立の年月日
2.目的区
定款に記載された会社の事業目的が記載されます。
商号区のように他の登記事項が含まれておらず、目的区は目的「のみ」となっています。
3.株式・資本区
株式会社のおいて重要な株式・資本金等に関する事項が登記される区です。
具体的には下記の事項が株式・資本区に該当します。
- 単元株式数
- 発行可能株式総数
- 発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数株券発行会社である旨
- 資本金の額
- 発行する株式の内容
- 発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容
- 株主名簿管理人の氏名又は名称及び住所並びに営業所
- 創立費の償却の方法
- 事業費の償却の方法
- その他株式又は資本金に関する事項
4.役員区
会社の役員(取締役、監査役等)について記載する区です。
代表取締役の氏名や住所、取締役や監査役の氏名が記載され、就任時はもちろん、任期を満了した役員の退任や重任(任期満了+再任)といった事項も役員区に記載されます。
具体的には下記の事項が役員区に該当します。
- 取締役、仮取締役及び取締役職務代行者
- 会計参与、仮会計参与及び会計参与職務代行者並びに計算書類等の備置き場所
- 監査役、仮監査役及び監査役職務代行者
- 代表取締役、仮代表取締役及び代表取締役職務代行者
- 特別取締役
- 委員、仮委員及び委員職務代行者
- 執行役、仮執行役及び執行役職務代行者
- 代表執行役、仮代表執行役及び代表執行役職務代行者
- 会計監査人及び仮会計監査人
- 取締役が社外取締役である旨
- 監査役が社外監査役である旨
- 清算人、仮清算人及び清算人職務代行者
- 代表清算人、仮代表清算人及び代表清算人職務代行者
- 職務の執行停止
- その他役員等に関する事項(役員責任区に記録すべきものを除く。)
5.役員責任区
役員がその任務を懈怠したとき等、会社に対して損害賠償責任を負う場合などに、その責任を免除したり、一定水準に制限する旨について記載されます。
具体的には下記の事項が役員責任区に該当します。
- 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人の会社に対する責任の免除に関する規定
- 社外取締役、会計参与、社外監査役又は会計監査人の会社に対する責任の制限に関する規定
6.新株予約権区
新株予約権(将来的に株式を取得することができる権利)について、記載される区です。
現時点では株式ではない為、別の区として整理され、新株予約権に関する事項のみ記載されます。
7.会社履歴区
会社間で合併や分割等を行った場合の、会社の履歴が記載される区です。
具体的には下記の事項が会社履歴区に該当します。
- 会社の継続
- 合併をした旨並びに吸収合併消滅会社の商号及び本店
- 分割をした旨並びに吸収分割会社の商号及び本店
- 分割をした旨並びに吸収分割承継会社又は新設分割設立会社の商号及び本店
8.会社状態区
会社の現在の機関設計や解散しているか等、会社の状態に関する様々な情報が記載されます。
具体的には下記の事項が会社状態区に該当します。
- 存続期間の定め
- 解散の事由の定め
- 取締役会設置会社である旨
- 会計参与設置会社である旨
- 監査役設置会社である旨
- 監査役会設置会社である旨
- 特別取締役による議決の定めがある旨
- 委員会設置会社である旨
- 会計監査人設置会社である旨
- 清算人会設置会社である旨
- 解散(登記記録区に記録すべき事項を除く。)
- 設立の無効
- 株式移転の無効
- 特別清算に関する事項(役員区及び登記記録区に記録すべきものを除く。)
- 民事再生に関する事項(他の区に記録すべきものを除く。)
- 会社更生に関する事項(他の区に記録すべきものを除く。)
- 承認援助手続に関する事項(役員区に記録すべきものを除く。)
- 破産に関する事項(役員区及び登記記録区に記録すべきものを除く。)
- 業務及び財産の管理の委託に関する事項
9.まとめ
「区」関しては実はまだありますが、皆さまが登記申請を行う上で参考になる代表的なものを挙げてみました。
なお、仮に登録免許税を多く収めても、多く収めた分は還付はされるのですが、還付までの期間は1ヶ月ほどかかります。
その為、商業登記の「区」はしっかりと確認し、登録免許税を計算するようにしましょう。