
こんにちは。司法書士の甲斐(@tomoya_kai)です。
株式会社の登記申請で頻繁に発生するのは「取締役(役員)の変更登記」です。
取締役には任期がありますので、定期的に取締役を選任し、登記申請を行う必要があります。
取締役の就任登記はいわば「会社の登記の基本中の基本」なのですが、添付書面に関する条文が若干複雑な作りになっていますので、本ページにて分かりやすくまとめてみたいと思います。
1.取締役は株主総会で選定する
まず大前提として、取締役は株主総会で選定する必要があります。
- 株主総会で取締役を選定
- その取締役が就任を承諾
と言う流れになりますので、取締役の就任登記には、取締役を選任した際の株主総会議事録の添付が必要になってきます。
2.就任承諾書とは
株主総会議事録以外では、取締役の就任承諾書が必要になってきます。
「就任承諾書」とは、その名の通り取締役が就任した事を証明する書面で、取締役の変更登記申請を行う場合の添付書面となっています。
(商業登記法第47条2項10項、同54条。)
会社と取締役は委任関係である為、取締役が「取締役としての就任を承諾した」と事により、その契約関係が成立します。
その為、「就任を承諾した事を証明する書面」が必要となってくるのです。
【就任承諾書の例】
就任承諾書
株式会社山田商店 御中
私は、貴社の取締役に選定されたので、その就任を承諾します。
令和2年5月31日
東京都町田市町田北南一丁目2番3号
山田 太郎 ㊞
※ポイント
就任承諾書には取締役の住所と氏名の記載が必要になります(商業登記規則第61条第7項)。
ここは改正があった部分で、従前の就任承諾書は氏名のみの記載でOKでしたが、住所の記載も必要になりましたので注意するようにしましょう。
3.就任承諾書に押すべき印鑑(実印)と印鑑証明書
さらに、就任承諾書には取締役個人の印鑑証明書の添付が必要になってくる場合があります。
① 設立時の取締役
会社の設立登記の申請時にも取締役(これを「設立時取締役」と言います。)の就任承諾書が必要になりますが、この就任承諾書には取締役個人の実印を押印し、その実印の印鑑証明書が必要になります。
② 取締役の就任時(再任は除く)
すでに成立している会社で、取締役の就任登記を行う場合、上記と同様に就任承諾書に取締役の実印を押印して、その実印の印鑑証明書を添付する必要があります。
ただし、再任(任期満了+就任)する場合は、登記申請上、印鑑証明書の添付は不要です(つまり、この場合の就任承諾書の印鑑は認印でも良い事になります。)
③ 例外 取締役会設置会社の場合
取締役会を設定している会社については、代表取締役の就任承諾書について、押印された実印の印鑑証明書が必要になります。
(つまり、取締役会設置会社であれば、取締役の就任承諾書の印鑑は認印で良い事になり、各取締役の印鑑証明書も必要ありません。)
4.就任承諾書の援用
以上が原則ですが、取締役の就任承諾書の添付を省略する事ができる場合があります。
その条件とは、取締役を選任する株主総会で、その取締役が出席しており、その株主総会の席上で就任を承諾した場合です。
この場合に、株主総会議事録に「被選任者は直ちに席上にて就任承諾した」と記載すればOKです。
(登記申請書には、「取締役の就任承諾書は株主総会議事録の記載を援用する」と書けばOK。)
ポイントは、当該取締役が株主総会に出席している事が必須である点です。
事前若しくは事後に就任を承諾したケースはこの方法は使えませんので、その場合は就任承諾書を作成する必要があります。
5.取締役の本人確認資料について
もう一つ、取締役の就任の登記申請について、添付書類をご紹介しましょう。
それは、「取締役」の本人確認資料です。
会社設立の登記又は取締役の就任登記(再任を除く)には、その就任承諾書に記載された住所・氏名と一致する下記の書類を添付する必要があります(商業登記規則第61条7項)。
・マイナンバーカード
・戸籍の附票
・住民票、等
6.まとめ
以上、簡単にですが取締役の就任登記に関する添付書類や印鑑についてまとめてみました。
取締役の就任や変更登記は基本中の基本ですが、登記事項や商業登記法と言った条文を良く確認しないと、疑問点が沢山出てくる分野でもあります。
見よう見まねで登記申請を行い後から大失敗に気づくと大変な事もありますので、「取締役の変更登記、良く分からないなぁ・・・」と思われたら、お気軽にご相談下さい。