こんにちは。司法書士の甲斐です。
株式会社には様々な登記手続きがありますが、その中の一つに「支店の設置」と言うのがあります。
全国展開している会社の登記事項証明書を確認するとこの「支店」の登記がされている事があるのですが、そもそもなぜ支店の登記を行う必要があるのか?メリットな何なのか?支社や営業所とどう違うのか?
と言う点について、手続き面も含めて今回はお話したいと思います。
目次
1.支店とは?
法律(会社法)上の支店とは、本店から離れて独自の営業活動を行うことができる拠点のことです。
支社や営業所とよく似ていますが、大きな違いは「本店と同様の意思決定ができない」と言う点です。
支社や営業所はあくまで営業活動を行うのみ、と言う形になります。
また、支店は登記が必要である事に対して、支社や営業所は登記の必要はありません。
また、どの拠点を支店としてを登記するかは各社の判断で決める事ができ、全ての拠点を支店として登記する必要はないのも特徴です。
2.支店を設置するメリット
① 本店の権限を支店に委任できる
支店を設置した場合、本店の権限を支店に委任することが可能になります(権限の範囲は各会社で決める事ができます)。
例えば横浜に本店がある会社が、札幌にある会社と取り引きを行う場合、札幌に支店を設定していると、本社ではなく札幌の支店の名前で契約を行う事が可能になります。
支店を設置する事で「本店で確認して・・・」と言う事を行う必要がなく、スピーディーに取り引きを行う事で出来る、と言う事になります。
② 支店独自で融資を受けることができる
支店は登記されますので本店と同様、支店で作成された財務諸表が対外的に認められる事になります。
その為、資金繰り等を理由として、支店独自で金融機関から融資を受ける事が可能になります。
③ 公共事業の入札ができる
公共事業の入札については、その地域の活性化を目的に、地元企業を優先するケースも多いみたいですね。
そのようなときに支店の登記をしていれば、地元企業として入札が可能になる事もあります。
3.支店設置の登記事項
支店設置の登記申請を行った場合、本店の登記事項には支店を設定した事の登記がなされ、支店を管轄する法務局に支店の登記が新たにされる事になります。
その支店の登記事項は下記の通りです。
- 商号
- 本店
- 会社成立の年月日
- 支店所在地
- 登記記録に関する事項
ここでのポイントは、例えば商号変更の登記申請を本店で行ったとしても、支店で登記されている商号は自動的に変わるわけではないので、別途登記申請が必要になってくる、と言う点です。
4.支店設置の手続きの流れ
① 支店設置の決議
支店を設置することや設置する場所、いつ設置するのか等、支店設置に関する決議を行います。
決議は取締役の過半数の一致(取締役会設置会社であれば、取締役会の決議)で行います。
【支店設置の決議書(例)】
決定書
令和3年7月1日株式会社山田コーポレーションにおいて、取締役が全員出席し、その全員の一致の決議により、次の事項につき可決確定した。
1.支店設置の件
支店設置の場所 札幌市●●区●●町一丁目2番3号
支店設置の年月日 令和3年7月10日上記決定事項を証するため、取締役の全員は次のとおり記名押印する。
(以下、省略)
② 登記申請
支店を設置した場合、原則的には、本店の所在地を管轄する登記所に2週間以内に、新たに設置した支店を管轄する登記所には3週間以内に、それぞれの登記申請を行う必要があります。
つまり、「2回」登記申請を行う必要があるのですが、これだ非常に手間暇がかかってしまいます。
その為、本店所在地の法務局宛ての分と、支店所在地の法務局宛ての分を一括して(同一の申請書で)1通の申請書を作成し、本店所在地の法務局に申請することで、本支店一括登記申請をすることも可能になっています。
申請方法の詳細は下記法務局のページをご確認下さい。
5.まとめ
支店設置の登記は先程お話したとおり、法改正がありまして支店における登記が廃止になります。
その辺りにおける実務上の取り扱いが多少変更になる場合もありますので、何かご不明点等ございましたら、お気軽に司法書士にお問い合わせ下さい。