起業家、ひとり会社の社長が若くても今すぐ遺言を書くべき理由

法律知識一般

こんにちは。司法書士の甲斐です。

実は最近、遺言に関するご相談が増えてきています。ご相談の基本的なパターンが

  • 高齢になり命に係わる大きな病気をした。
  • 何とか回復し、退院したので今のうちに遺言を残しておきたい。

と言う流れなのですが、やはり遺言って

「高齢になった。病気になった。」

時に初めて書く物と言うイメージがあるなーと思います。

でも遺言は心身ともに元気なうちにしか書けないので若いときに書くべきです(認知症とか意思能力が無くなった段階では遺言は基本的に書けませんので)。

さらに「ひとり会社の社長」として会社を経営しビジネスをしている人であれば、尚更今すぐ遺言を書くべきでしょう。

今回は、起業をしている人が遺言を今すぐ書くべき理由と、遺言の基本知識をお話します。

1.ひとり会社の社長が遺言を書くべき理由

なぜ起業家は若いうち、今すぐに遺言を書くべきか?

その理由は単純明快、大切な家族や取引先に迷惑がかかるからです。

ひとりで仕事をしていると言うことは仕事の内容については基本的に自分しか把握していないはずです。

そんな状況で、ある日突然あなたが病気で亡くなったら。もしくは想定できない事故で亡くなったら。

残された大切な家族も取引先もみんな困ってしまいます。

相続人は亡くなったあなたの権利義務を全て引き継ぎますが、あなたの仕事の内容を誰も分からなければ大パニックになります。

大切な人を亡くした悲しみの上に、全く分からない仕事の内容を整理しなくてはいけない。

大切な家族に、そんな大変な思いをさせたいですか?

だからこそ、大切な人の為にも今すぐ遺言を書くべきなんです。

とは言え、遺言はただ書けば良いと言う話しではなく、遺言が有効に成立する為には法律上の要件があります。

さらに遺言ではなく「エンディングノート」の方に書いた方が良い事項もあります。

その事を少しお話したいと思います。

2.遺言の種類

遺言には様々な形式がありますが、事実上良く利用されているのが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。

① 自筆証書遺言の基本

自筆証書遺言は原則として、日付、氏名を含めた全ての内容を自筆(手書き)し、印鑑を押す必要があります(印鑑は実印でなくてOKです。)。

ただし、財産に関する目録については手書きする必要はなく、パソコン等で作成してプリントアウトしてもOKです。

「相続財産目録1の財産を●●に相続させる。」

このような内容を手書きし、相続財産目録はパソコン等で作成するやり方です。

財産目録はパソコンで作成してもOKですが、署名押印が必要です。

この場合、手書きの部分と財産目録が別ページになることが多いと思いますが、ページのつなぎ目に「契印」をした方が良いです。

(「契印」は法律上求められていませんが、「一体とした遺言」にする為、契印した方が良いです。)

なお、自筆証書遺言は訂正方法が決まっているので万が一誤字等があった場合、その訂正方法に従って訂正する必要があります。

② 自筆証書遺言の要件が満たされたら、それは「遺言」になる。

上記のとおり、遺言は法律(民法上)のルールに従って作成する必要がありますが、逆に言えば法律のルールに従って作成されたら、自分にそのようなつもりはなくても「遺言」になる可能性があります。

例えば、

これは正式な遺言ではないが、万が一私が死亡した場合に備え、私の思いを残しておく。まず、自宅は妻に相続させる。そして~

と言った内容を自書し、日付、氏名、押印までしっかりあれば、遺言として取り扱われる可能性が高いでしょう。

➂ 「付言事項」は別紙形式でもOK

法律上の拘束力はないけれど、遺言者の意思として残す「付言事項」と言うのがあります。

例えば家族に対する感謝の気持ちを残すとかがこの付言事項に該当します。

この付言事項を残す事により、相続争いを未然に防ぐことが出来る可能性がありますが、自筆証書遺言の場合、自筆する必要があるので結構大変なのです。

(後でお話する公正証書遺言の場合は、公証人が作成するので自筆における心配は不要なのですが。)

この付言事項を自筆する大変さを緩和する為に「付言事項を別紙形式で作成する」と言う方法があります。

遺言の本文と付言事項を別に(別の紙で)作成する、と言う意味ですね。

そもそも付言事項には法的効果はないので、このような作成方法もアリです。

とは言え、付言事項が遺言に基づいて作成されたことを示した方が良いので、

「令和●年●月●日作成の遺言の付言事項は下記のとおりである。」

と言うような書き出しで作成する工夫をした方が良いでしょう。

④ 公正証書遺言の基本

以上が自筆で作成する遺言の内容ですが、遺言を公証人に作成してもらう「公正証書遺言」と言うのがあります。

遺言の内容を口頭等で公証人に説明し、公証人がその内容に沿って遺言を作成する方法です。

公証人への手数料は証人を二人用意する必要がありますが、公証人が遺言を作成してくれるので、自筆証書遺言のような煩わしさがありません。

また、公証人が遺言作成に関与するので、何かしらの相続トラブルが発生したとしても、遺言としての証拠能力が高い事もメリットです。

3.遺言とエンディングノート両方を書く

ところで、「エンディングノート」って聞いた事ありますか?

終活に使う物ですが

  • 自分自身の事や友好関係
  • どのような医療を望むのか?
  • どのような葬儀を望むのか?

等を記載する物ですが、遺言との違いは「法的な効果を発生されるか否か」です。

遺言は「●●の財産を●●に相続させる」と言った法的な効果を発生させる為の物で厳格なルールがあり、このルールに則って作成しなければ、遺言は無効になります。

一方、エンディングノートは法的効果を発生させる物ではなく、それ以外の事についてご自身の意思を残す物です。

であれば、遺言の形式でエンディングノート的な事も全部書けば良いのでは?と思いつく方もいらっしゃるかも知れませんね。

財産の相続の事も、仕事の内容やその取引先の事も全部まとめて遺言の形式で書く、と言う意味です。

でも、ハッキリ言ってこれはお勧めしません。

お話したとおり、遺言は厳格なルールがあり、そのルールに従わないと無効になる可能性があります。

財産だけの事ではなく、それ以外の事の記載事項が多くなれば、遺言者に負担になりますし、無効になるリスクは高くなります。

一方、エンディングノートは形式面でのルールはありませんので、訂正、変更は自由に出来ます。

その為、財産に関する事は遺言書で、それ以外の事はエンディングノートに記載するようにしましょう。

4.まとめ

もう一度お話しますが、起業家は遺言とエンディングノートの両方を書くべきですが、エンディングノートには「財産の相続に関する事」は書かないようにして下さい。

エンディングノートにも遺言にも財産の相続に関する事を書いてしまったら、法律関係が不安定になり、相続で揉める原因になります。

「財産の相続に関する事」は遺言にのみ書くようにしましょう。

遺言やエンディングノートに関して分からない事がありましたら、遠慮なくお問い合わせ下さい。

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この記事の執筆者(文責)
司法書士 甲斐智也

起業支援と商品・サービスのコンサル化のお手伝いもする司法書士|マーケティング思考でコンセプトをしっかりと考えた会社設立します|2級FP技能士|たまに心理カウンセラー|某球団マスコットの中の人の経験あり

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