こんにちは。甲斐です。
起業をする際、様々な事を考える必要があるのですが「事務所をどうするのか?」と言う点もそのうちの一つとなります。
スモールビジネスの場合は自宅開業と言う選択肢もありますが、自宅をお客さん等に知られたくない場合、レンタルオフィスの利用も選択肢の一つとして考えられます。
レンタルオフィスの利用は通常のオフィスの賃貸借と比較して手軽に利用できると言うメリットがありますが、レンタルオフィスならではの注意すべき法的なポイントがあります。
このページでは、今後ますます利用者が増えるであろうレンタルオフィスの法的性質やポイントについて、利用者の目線でお話したいと思います。
1.レンタルオフィス利用契約の特徴
「レンタルオフィス」は法的な定義はないのですが、一般的には利用者に対して、建物の一定の区画に対する専用利用権の他、必要に応じてコピー機、電話、インターネット回線等の一定の設備を他の利用者と共同で利用できる権利があるオフィスの利用契約の事です。
通常オフィス用の物件を借りようとした場合、敷金や仲介手数料等のまとまった金額の初期費用が発生しますが、レンタルオフィスを利用する事でこの初期費用を大幅に抑える事ができますので、独立したばかりの起業家が事務所としてレンタルオフィスを利用する事が良くあります。
なお、「シェアオフィス」「コワーキングスペース」と呼ばれるサービスも良く聞かれます。
これらのサービスとレンタルオフィスの定義も明確にされているわけではありませんが、レンタルオフィスは建物の一定の区画を独占的に利用できるのに対し、シェアオフィスやコワーキングスペースは建物の一定のスペースを他の利用者と共同で利用する事が想定されています。
つまり、シェアオフィスやコワーキングスペースは一定の区画を独占的に利用できないので、情報管理やプライバシー等に注意する必要があります。
2.レンタルオフィス利用契約の法的性質
① 会員制
オフィスの一般的な賃貸借契約とは異なり、レンタルオフィスの利用はいわゆる「会員制」になっている事が多いです。
レンタルオフィスの利用は入居後の機動性の高さも特徴の一つとなっています。つまり、同じ建物内のオフィス区画の移転や増室等も想定されており、会員制としていれば、既存の契約を解除したり、新たな賃貸借契約を締結する手間がなく、簡易な手続きで変更できるのがその特徴です。
② オフィス区画の利用
契約書上、区画の場所や月の利用料金、利用期間を明確に定める必要があります。
なお、シェアオフィスやコワーキングスペースの場合、時間単位の利用料金や利用時間等を定める事が考えられます。
③ 契約の性質、注意点
レンタルオフィス利用契約の場合、その契約書の中で次のような文言が記載されている場合があります(甲がレンタルオフィスのサービス提供者、乙を利用者として読んで下さい)。
第●条(契約の性質)
甲及び乙は、本契約は甲及び乙の間で建物賃貸借契約を成立させるものではなく、乙は甲に対して建物賃借人としてのいかなる権利も主張することが出来ないことを確認する。
これ、どう言う事かといいますと、通常の建物賃貸借契約に該当する場合、借地借家法の適用を受ける事になります。つまり、
- 賃貸人(サービス提供側)は正当事由がなければ更新の拒絶又は解約の申し入れをすることができない(借地借家法第28条)。
- 賃借人(利用者)に利用料金未払い等があったとしても、それが背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは。賃貸人(サービス提供者)は契約を解除する事ができない。
等々によって、利用者にとって有利になる事なります。
その為、サービス提供者側としては借地借家法の規定を受ける事を避ける目的で、このような規定を置いている場合があります。
借地借家法の規定を受けない事を前提としている為、
「利用料金を1ヶ月滞納した場合、何らの催告を要せず契約は解除される。その際に残されていた残置物に関する所有権については放棄する事を同意し、残置物について処分をされても異議申し立てができない。」
と言った、利用者にとっては厳しい内容の規定が盛り込まれている場合があります。
判例上、実際の利用形態によっては借地借家法の規定を受ける場合がありますが(東京地裁平成26年11月11日)、裁判で争う場合は時間がかかりますので、上記のような規定がある場合、サービス利用者は注意が必要です。
3.まとめ
レンタルオフィスの利用はまとまった初期費用が必要なく、手軽に起業する方法の選択肢の一つとして非常に有益です。
しかし、初期費用が少ない分、月々の利用料が割高な場合もあり、将来的な事業展開を考えてレンタルオフィスの利用を検討した方が良いでしょう。