こんにちは。甲斐です。
私が独立した時、色々な人から集客に関して「ペルソナを設定する事の重重要性」を散々聞かされました。
現代社会は情報が氾濫している。
→万人受けする情報発信は結局誰の目にも止まらない。
→それに、「何でもやります!」は結果として何もできない事を意味する。
→だから具体的な顧客像を明確にして、そのたった一人に対して情報を発信すべきだ。
このような理屈ですね。
ただ、理屈は非常に分かるのですが、ペルソナを設定しても、
「何だかしっくりこない」「人間味を感じない」
と思った事はありませんか?
私自身もすっごく悩んでいたんですが、その昔役者をやっていた事があり、「これって役作りと同じやん!」と思い実践したら「しっくり」とするようになったんですね。
そこで今回は、ペルソナの設定に悩んだ場合に試してほしい「俳優の役作りの方法」をお話したいと思います。
演技理論って実は色々とあるのですが、今回は「スタニスラフスキー・システム」と言う演技理論のお話です(興味がある方はググってみましょう)
ペルソナ設定に悩んでいる方は、一つの方法論として是非参考にしてみて下さい。
1.与えられた状況を想像する
あなたは、舞台やTVドラマの台本を見た事がありますか?
ドラマの中では俳優陣が様々な状況を表現していますが、実は芝居の台本って、細かい背景事情が書かれている訳ではないんですね。
書かれているのは俳優のセリフと、状況の簡単な説明のみです。
例えば、「なぜ登場人物がそのセリフを語ったのか?そのセリフを語った背景事情は何があるのか?」と言った、芝居を行う上で重要な事は一切書かれていません。
(そんな事を書いてしまったら、台本が膨大に分厚くなってしまいますので。)
その為、場面場面の背景事情については、脚本家の意図をくみ取り、監督と俳優が考える事になります。
これが「与えられた状況を想像する」と言う事なのですが、具体的には以下の4つの事を想像します。
- 誰が?(WHO)
- いつ?(WHEN)
- どこで?(WHERE)
- 何を?(WHAT)
(ペルソナの設定項目に良く似ていますね。)
① 誰が?(WHO)
名前、生年月日、現在の仕事(年収)家族構成は勿論、
- 感情のタイプ(おおらかとか怒りっぽいとか)
- 文化的経験(どんな習い事を習っていたのか)
- 子供の時に経験した感情的出来事(親から厳しい教育を受けた等)
- それによって形成された現在の人生観
このような事まで考え、その背景事情に基づいて論理的に矛盾しない行動や感情を表現します。
② いつ?(WHEN)
年や季節・月、日や時間の事です。
例えば月曜日の朝と金曜日の朝とでは、精神的な状態や物事に取り組むエネルギーは全く異なると思います。
その場面がいつであるのか?は、芝居を行う上で重要な要素なのです。
③ どこで?(WHERE)
具体的な場所の事です。国や県、街、家や部屋といった感じです。
街には様々な個性があり、そこに住んでいる住人にも個性の違いが出てきます。
日々の買い物に便利な大型スーパーの近くに住んでいる人と、近所には買い物が出来る店が全くない所に住んでいる人とでは、考え方や価値観が大きく違うはずです。
④ 何を?(WHAT)
- 台本で書かれているこのシーンで、何が起きているのか?
- この一瞬前では、何が起こっているのか?
このような感じです。
重要なのは「その瞬間の事」を考える、と言う事です。
俳優はその後の展開を知った上で、芝居をしているのですが、芝居をしている瞬間は後に起こる展開の事を予想して芝居をしてはいけない、と言う事です。
当たり前ですよね。我々は今後起こる事を知った上で日常を暮らしているわけではありませんので。
そんな事をしてしまったら、非常に不自然な芝居になってしまいます。
2.具体的な「4W」が無ければ、芝居は退屈でつまらない
演じる上で4Wを考えない、つまり、曖昧で部分的な背景・経歴等しか考えなければ、俳優の演技は平凡で月並みなものにしかならないハズです。
あなたもドラマで見たことはありませんか?
いかにも大学生風の芝居、いかにもサラリーマン風の芝居、いかにも弁護士風の芝居・・・。
これらはパターン(型)で演じているので、人の心に刺さる事はありませんし、面白くないのです。
実はせっかく設定したペルソナにも同じような状況が起きており、だから苦労して情報発信しても面白くなく、結局誰の目にも止まらない、と言う事があるのです。
3.ペルソナは、「数ある自分の人生の可能性の一つ」
ただ、上記の4Wを具体的に考えたとしても、まだペルソナが「しっくりこない」事があります。
色々とペルソナの設定を考えても、何となく「面白くない」感覚です。
そんな時は、『ペルソナは数ある自分の人生の可能性の一つ』と捉えてみましょう。
「もしかしたら自分は、このような人生を歩んでいたかもしれない。」と捉えるのです。
分かりやすく言えば、「パラレルワールドにいる自分」みたいな感覚です。
そうすれば設定したペルソナについて非常に身近で愛着がわく存在になりますし、その人物の生活を生き生きと感じる事ができるはずです。
「愛着が持てるか」って、面白い情報発信を行う上で、とっても重要な要素だと思うんです。
ペルソナを設定しても、他人事として情報発信をしても、誰の共感を得る事も出来ませんので。
また、人生観と言った深い部分まで理解しているので、発信する情報も「狭くて深い」面白い情報になるでしょう。
4.ペルソナを細かく設定する必要はない?
ここまでペルソナと俳優の役作りの事をお話してきましたが、その一方で「ペルソナの設定は必要ない」と言う考えた方があります。
「ペルソナを細かく設定すると、市場規模が小さくなってしまうので、売上を確保する事ができない」と言うお話です。
実はこれは正しくもあり、間違えでもあります。
確かに、STP分析を行う上でペルソナを細かく設定しすぎると市場規模が小さくなり、売上を確保する事は難しくなります。
しかし、それと情報発信をする事は全く別のお話です。
ペルソナを細かく設定する目的の一つは「独自の視点で面白い情報発信をして、興味を持ってもらう」事にあります。
情報が氾濫する現代社会だからこそ、ペルソナは細かく設定する必要があるのです。
5.まとめ
「マーケティングは相互理解」と言われる事があります。
自分自身を知り、顧客の事を知り、自分自身の事を顧客に知ってもらう、と言う事です。
ペルソナを設定しても「何となくペルソナの事が理解できない」「何だかしっくりとこない」と言う事は往々にしてあると思います。
そのような時は、「ペルソナは自分の人生の可能性の一つ」と捉えると、より相互理解が深まるのではないでしょうか?