ご注意!嘘の登記申請をすると犯罪になります!

会社設立・商業登記

こんにちは。司法書士の甲斐です。

不動産であれ会社であれ、何らかの登記が必要になった場合、管轄の法務局に対して登記申請を行うと思います。

そして、当たり前ですが登記は通常「登記申請する理由」があるから行われるものです。

例えば、不動産が売買された場合、その名義を売主から買主に変更します。相続でも亡くなった方から相続人へ変更するでしょう。

会社の登記であれば、役員が辞めた(もしくは追加した)から、会社名や事業目的を変えたから、etc。

このように、登記された内容を変更する理由があるから登記申請をする、これが当然の流れです。

でも、世の中にはその登記の理由がなく、悪意をもって嘘の登記申請をする人達もいるんですね。

じゃあ、その嘘の登記申請をした場合どうなるのか?と言うのが今回のお話です。

端的に言うと「公正証書原本不実記載罪」と言う犯罪に該当する可能性があります。

1.嘘の登記申請の具体的事例

先日、こんなニュースがありました。

税金の支払い免れか…虚偽の登記申請書提出で暴力団総長の男逮捕 静岡県警

警察によりますと、男は事務所移転の理由を、本来は先代からの「贈与」であるにもかかわらず、不動産取得税や贈与税の支払いを逃れるために「信託」と書類に記入し提出したということです。本来、支払う税金は総額1000万円にのぼるとみられています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/dd6da042375f469fff15799779cba26dd550109c

事件の概要は、暴力団事務所の所有権移転登記を行う際、本来は「贈与」として登記申請をすべき所、税金の支払いを免れる為に「信託」として暴力団関係者が逮捕されたと言う事件です。

詳細が記載されていないので断定できませんがおそらく「公正証書原本不実記載罪」の容疑で逮捕されたと思います。

実はこの公正証書原本不実記載罪、一般の人でも犯罪であると分からずにやってしまう可能性がある、要注意な犯罪類型なんですね。

2.「公正証書原本不実記載罪」とは?

公正証書原本不実記載罪とは、登記や戸籍などの一定の公的な記録について、不正な申請(届出)をすると、成立する事がある犯罪です(刑法第157条)。

(公正証書原本不実記載等)
第百五十七条 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。

「e-Gov法令検索(刑法)」より引用

まさに今回のように「贈与」を原因として不動産を譲渡したのに「信託」と言う別の原因(虚偽の原因)で不動産の登記申請を行うのが、公正証書原本不実記載罪の典型例です。

なお、この犯罪に該当すると上記の通り「五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」となります。

3.なぜ一般の方でもやりがちなのか?

実は司法書士の元には、同じような相談が良く持ち込まれられます。

  • 相続対策で自宅を息子に贈与『した事』にして登記申請も自分達でしたんだけど、贈与税が思ったより高かったので、贈与を無かった事にしたい。
  • 妻を代表取締役とした会社を「妻に内緒」で勝手に作ってしまった。

と言った、「ウソの登記申請をしてしまった」事に関する相談ですね。

なぜこのような事が起こり得るかと言うと恐らく一般の方は、以下の2点について誤解があるからだと思います。

① 法律行為があって登記がある

先程少し触れましたが、登記申請を行う為にはその「原因」が必ず必要になります。

不動産であれば売買や相続とか。会社の登記であれば取締役の就任(辞任)とか。

これらはザックリ言いますと「法律行為」と呼ばれるものですが、法律行為が先にあって、登記申請が後にある、この順番が大原則です。

ただ、一般の方はこの原則を理解されておらず、ゴチャゴチャになっているんですね。

② 法務局が何も言わなかったからOKではない

これも良く誤解されがちなのですが、法務局はあくまで提出された書面上で審査するだけで、本当に法律行為が行われたかどうかは判断していないんです。

その為、本人達に贈与する意思はなかったとしても、形式上、適切な「贈与契約書」を作って登記申請をしてしまえば、登記は完了してしまいます。

でもそれは実際に法律行為が行われていない「虚偽」の登記申請ですので、公正証書原本不実記載罪の対象になる可能性があるでしょう。

4.登記制度は自分で完結するものではない

最近、インターネットを利用した登記申請のサービスが充実しており、「登記なんて自分達で簡単に完結する」と言う意見が沢山あります。

ただ、仮に簡単に登記申請が出来るからと言って、前提である法律行為をおざなりにしても良いと言う訳ではありません。

登記制度って何の為にあるかと言うと、不動産の権利関係や会社の状態に関する事を公示する(公に示す)事で、不動産取引や会社の取り引きについて円滑にする目的があります。

つまり、自分達で完結する訳ではなく、取引等の為に誰かに見られる可能性がある。そうでなければ、怖くて不動産の取り引きなんて出来ませんからね。

なので、「ウソの登記申請」なんて認めたらその後の取引関係がメチャクチャになる可能性があるんです。

「そんな堅苦しい事を言わなくても・・・」

と思われるかも知れませんが、ルールの存在には必ず理由があります。

「知らなかった」では済まされないのが法律の世界なので、堅苦しい事かも知れませんが、しっかりと押さえておきましょう。

5.まとめ

こういう話題を出すと、「確かに犯罪なのかも知れないけど軽いレベルだし、誰にも分かりゃしないでしょ?」なんて意見も出てきます。

実際、法務局や警察は忙しいので相当悪意がない限り、イチイチ調べたりしないでしょう。

しかし、だからと言ってやっても良いと言う理屈にはなりません。

これは「車に乗っていて赤信号でそのまま直進してしまったけど、たまたま誰にも見つからなかっただけ。ラッキー」と同じ低レベルな理屈です。

この点、十分に注意しましょうね。

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