こんにちは。甲斐です。
2021年もあと僅かになりました。今年はコロナ禍における緊急事態宣言が何度も出され、相当苦しい経営状況だった起業家も多いのではないでしょうか?
「だからこそ2022年は明るい年にしたい!」と、今年の振り返りと来年の目標を立てている方もいらっしゃると思います。
そんな「来年は前向きに取り組みたい」ときに敢えて水を差すかもしれませんが、年末年始の今だからこそ「起業家として最悪な状況」を想定することをお勧めしたいのです。
1.個人事業主・会社経営者の闇の部分
いきなり夢も希望もない暗い話しをしてしまいますが、こんな統計があります。
「自営業や経営者の自殺率は雇われている人の約6.9倍も高い。」
「中小企業経営者の自殺予防」
2009年2月13日自殺対策推進会議資料(作成:NPO法人 蜘蛛の糸 理事長 佐藤久男氏)
経営者が自死する原因の多くが借金らしく、この数字が本当に正しいかどうかの問題はありますが、実際に借金に悩んで自死する会社経営者の方は一定数存在するでしょう。
彼らは最初は「仮にビジネスが上手くいかなかったとしても、会社を畳んだり自己破産すれば良いじゃん!」と考えていたかも知れません。
ただ、会社経営者は基本的に真面目な方も多く、ビジネスを行っていく上で「借金を返さなくては迷惑をかける事になる。債権者にも家族にも」と考え、既に資力が破綻しているにも関わらずムチャな事をしてしまい、最終的に責任を取るつもりで自ら命を絶ってしまうのです。
なお、会社の借金を社長が保証する「個人保証」の問題もあり、この個人保証を外す事が出来れば経営者の自殺率は減るのでは?と言う議論がありますが、僕はさほど効果があると思えません。
先ほどのお話した通り、経営者は基本的に真面目な人が多く、借金は死んでも返さなくてはいけないと考えています。それは会社名義・個人名義の借金であれ同じなんです。
彼らからしてみれば「同じ借金」なのですから。
だからこそ家族や従業員を守らなければいけないと必死になって行動する。でも結果が伴わずにっちもさっちもいかなくなって、ある日突然心が壊れ自ら命を絶つ、と言う流れになるのです。
2.ビジネス系インフルエンサーの「キラキラ」した話しは信じるな
起業にはこのような「闇の側面」もある一方、いわゆるビジネス系インフルエンサーは起業する事を最近やたらと勧めてきます。
- 「サラリーマンはオワコン」
- 「正社員こそリスク」
- 「脱社畜」
等々、耳障りの良い言葉を並びたてて起業する事を推奨するのですが、上記の「起業の闇」の部分を語らず良いことだけをひたすら語る。
また「借金=悪ではない」と、あたかも新しい価値観を提供するかの如く、起業の闇である借金のリスクには一切触れない。
確かに、事業用の借金は悪ではありません。しかし先程お話した通り、実際は起業家にとって借金は相当のストレスの対象となるのです。最初は前向きに「何とかなる」と思っても、ドンドン減っていく口座残高を見ていると冷静な判断が出来なくなったり・・・。
このように、ビジネス系インフルエンサーは起業を無責任に煽ってきます。そして成功したごく一部の起業家をもてはやすのですが、その起業家が稼げなくなったら容赦なく切り捨てる。
こんな事が良くあるのです。
確かに、社会情勢が不安定な昨今、会社に依存するのはリスキーな生き方かも知れません。しかし上っ面の成功体験だけを語り、闇の部分を語らないのは影響力がある「インフルエンサー」としていかがなものでしょう?
起業家として華々しい「光」があれば当然「闇」だってあるのですから。
3.最悪な状況を具体的に考えるからこそ、具体的な打ち手を考える事ができる
起業の闇の部分、つまり「最悪な状況」は人によって異なると思います。
住む家を失うのか、家族とバラバラになるのか、それとも・・・・。
このように最悪な状況は人によって違いますが、重要なのは「具体的にイメージ」する事です。そうすれば、否が応でもその最悪な状況を回避する為の打ち手を考える事ができるでしょう。
「こんな状況には絶対になりたくない!」
と思えば思うほど具体的な施策を思いついたり、マインドセットの必要性・重要性も気づくと思います。
さて、今回の話しは非常にネガティブな内容でした。
「年末になんて事を言うんだ!」と怒られるかもしれませんが、年末と言う区切りの時期だからこそ、起業のリアルにしっかりと目を向けても良いと思います。
「何とかなるでしょ。」とポジティブに考える事と思考を放棄する事は別問題です。
どんなに前向きに物事を捉えたとしても、どうにもならない現実と言うのがありますし、そのときに最悪な状況を想定していなければ、人の心は簡単に折れてしまいますので。
新しい年の年末に心の底から笑えるよう、最悪な状況を想定して「最高の人生」にしましょう。