業務委託契約書を作成する上での基本的な考え方と構成について

契約書

こんにちは。甲斐です。

Webサイトの作成や何らかのコンサルティング業務を受注した際、「業務委託契約書」を作成する事があると思います。

インターネットや書籍でひな形を簡単に入手する事ができるのですが、ひな形単体では受注した業務の契約書として使い勝手が悪いため、他の契約書のひな形から条項を継ぎ接ぎして契約書を作成する・・・。

契約書を作成される方のほとんどが、このように色々な契約書の条項を継ぎ接ぎした「ごちゃまぜ契約書」だと思います。

一見すると「良いとこ取り」の契約書であるので問題なさそうな感じですが、全体を通してみると重複した表現をしていたり、漏れている項目があったりします。

これは条項を継ぎ接ぎするのが悪いのではなく、契約書も一つの書類であり、その書類に記載すべき構成を無視したのが原因です。

その構成を無視すると、非常にチグハグな契約書になってしまうのです。

そこで今回は、契約書を作成する上で基本的な考え方と、その構成(フレームワーク)についてお話していきたいと思います。

1.契約書の基本的な考え方

今さらですが、「契約書を作成する理由」って何だか分かりますか?

それは次の2つです。

  • 「法的トラブルを未然に回避すること。」
  • 「例え法的トラブルに発展しても、裁判で確実に勝てるようにすること。」

まず、この2つのポイントが抑えられていない契約書は、契約書の意味をなさないと思って下さい。

その上で意味のある契約書を作成する上での考えた方は、以下の通りです。

  • 絶対に必要な事は、漏れなく記載する。
  • 記載しなくても良い事は、記載しない。

「絶対に必要な事」とは上記で挙げた「これが無ければ契約書の意味をなさない」事です。

例えば当事者の記載や業務内容、その範囲等です。

「記載しなくても良い事」とは、法律に既にルールがあり、敢えて契約書の中に盛り込む必要性がないものです。

ただし、当事者の注意喚起を促す為に、あえて契約書に盛り込む事があります。この2つを抑える事で、冗長でダブっていない、かつ漏れがない契約書を作成する事ができます。

では次に、契約書の構成について見て行きましょう。

2.契約書の構成

業務委託契約書を作成する上で、各項目をどのような順番で作成すると言ったルールはありません。

ただ、基本的に「目的」「定義」「業務内容」は前の方に持っていき、その他同じ性質の条項はまとめた方が読みやすい契約書になるのでお勧めです。

条項の基本的な順番は、下記を参考にした上で、各契約の現状に則したように作成してみて下さい。

【業務委託契約書の構成例】
① 目的
② 定義
③ 業務内容
④ 検収
➄ 契約期間
⑥ 免責
⑦ 報酬
⑧ 実費
⑨ 支払方法
⑩ 当事者の義務
⑪ 秘密保持
⑫ 解除
⑬ 反社会的勢力排除
⑭ 損害賠償
⑮ 専属的合意管轄

以下、各条項について、詳しく解説します。

① 目的

目的は文字通り、「業務委託契約を締結した目的」です。

基本の形として「○○を行い(手段)、〇〇をめざす(目的)」と言う書き方をします。

「手段」+「目的」+「究極の目的」と言う形もあります。

契約書における目的は基本的には法的拘束力はありませんが、契約をめぐってトラブルになった場合、最終的な当事者の意思を、この契約の目的を元に解釈される事があります。

その為、実は非常に重要な条項なのです。

② 定義

専門的な業務を行う場合、言葉の定義の解釈が当事者で異なっていると、トラブルの原因になります。

その為、細かく定義した方が良い言葉が沢山ある場合、この定義条項を設けた方が良いでしょう。

(定義する必要がある言葉が少ない場合、各条項で定義すれば良いので、定義条項を別途設ける必要性が低い場合があります。定義条項の設置の有無はケースバイケースで考えましょう。)

③ 業務内容

受託者が行う業務の内容とその範囲を定める条項です。

業務内容とその範囲は具体的に定めるべきですが、あまり細かく決めすぎると契約書が冗長になる可能性もありますので、その場合は、「具体的な内容は別紙で定める」等の工夫をしても良いでしょう。

④ 検収

検収とは、成果物を契約に基づいて問題がないかをチェックする事で、成果物を作成するタイプの業務委託契約(請負)には盛り込んだ方が良い条項です。

委託者がきちんと成果物をチェックし、問題無い事を確認してもらわなければ、ズルズルと仕事が長引き、結果として報酬を支払って貰えない状況になってしまいます。

その為、契約書に盛り込んだ方が良い条項ですが、順番として業務内容→検収の方がスッキリすると思います。

➄ 契約期間

コンサルティングのように長期間継続する契約の場合、必要となる項目です。

具体的な契約期間を定めるのは当然ですが、契約を延長する場合どうするのか?と言った内容も盛り込んだ方が良いでしょう。

⑥ 免責

何かしらの成果物(チラシやパンフ、Webサイト等)を作成する業務委託(請負)では、成果物に対する責任を負う事になります。

一方、コンサルティングのような業務委託(委任)は、「成果」に対して基本的に責任を負いません。

(「月の売上を〇万円上げる!」と言った目標を立てて、実際にその通りにならなくても、コンサルタントは責任を負いません。)

これは法律上当然であり、特に契約書に記載しなくても良いのですが、委託者側から見れば勘違いしやすい部分なので、確認的に契約書に記載する事が良くあります。

⑦ 報酬

シンプルですが重要な条項です。

具体的な金額と支払期限を、疑義がないように定めましょう。

⑧ 実費

業務委託を行う上で、報酬以外の実費が発生した場合の条項です。

交通費や宿泊費、何かの設備を予約した時の費用等、業務委託を行う上で必須となる費用の事です。

先にクライアントに支払ってもらったり、立て替えた実費を後で請求したり、そのような規定を記載します。

⑨ 支払方法

報酬や実費の支払い方法を決めます。

受託者の指定する銀行口座への振り込みが多いと思いますが、振込手数料をどちらが負担するのかも、あわせて決めておきましょう。

⑩ 当事者の義務・禁止事項

委託者、受託者の双方に何らかの義務を課したい場合、この条項を設けます。

なお、「秘密保持」に関する規定は別枠として設けた方が良いです。

⑪ 秘密保持

当事者双方の営業上のノウハウや取引情報について、勝手に外部に漏洩させない為の条項です。

まず、秘密情報とは何か?を定義し、秘密情報の保持を徹底、秘密情報を第三者に開示する場合の手続き等を定めます。

秘密情報を「機密情報」と言う契約書のサンプルもあります。

⑫ 解除

契約を解除する事ができる条件を定めます。

なお、相手が反社会的勢力に該当した場合の解除に関する条項は、別の条文で定めた方が分かりやすいです。

⑬ 反社会的勢力排除

相手が反社会的勢力に該当した場合、契約を解除する事が出来る根拠となる条項ですので、これはしっかりと定めましょう。

警視庁のホームページに反社会的勢力排除に関する条項のサンプルがありますので、そちらを参考にしても良いと思います。

⑭ 損害賠償

相手方に対して、契約を通じて何らかの損害を生じさせた場合、その損害を賠償するのは当たり前ですが、確認的に条項として盛り込んでいる契約書を良く見ます。

ただし、損害賠償の立証は難しい場合がありますので、「損害賠償の額」を予め決めておく方法を検討しても良いでしょう。

⑮ 専属的合意管轄

業務委託の中で何らかの法的トラブルに発展した場合、解決策として民事訴訟を行う方法があります。

民事訴訟には管轄の裁判所がありますが、第一審の裁判所に限り、当事者が合意した裁判所にだけ民事訴訟を行う事できる「専属的合意管轄」と言うのがあります。

注意しなければいけない点は、「専属的合意管轄」である事を明確にしないと、他の裁判所にも訴えを行う事ができると言う点です。

管轄裁判所を一つにしたいのであれば、「専属的合意管轄」と明記して下さい。

3.まとめ

以上は良く使われる代表的な条項です。

契約内容の個別具体的な事情に則して、条項を減らしたり、新たな条項を作ったりして下さい。

ではもう一度、契約書の構成のポイントをおさらいしましょう。

  • 「目的」「定義」「業務内容」は前の方に持ってくる。
  • その他同じ性質の条項は極力まとめる。

契約書を作成する場合は、いきなり作成するのではなく、まずは構成をしっかりと決めてから作成すると、混乱せずスッキリとした契約書を作成する事が出来ます。

なお、当事務所では皆様が普段お使いの契約書のチェックを行っております。

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甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル。趣味はキックボクシングとランニング

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甲斐 智也

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表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル (詳しい自己紹介は画像をクリック!)。

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