自分で登記を行うデメリット。登記が完了しても潜在的な問題がある事も

会社設立・商業登記

こんにちは。司法書士の甲斐です。

不動産であれ会社であれ「登記」と言えば司法書士の専門分野ですが、この登記申請はご自身でも行う事ができます。

最近は各企業で登記申請に関する豊富なサービスが提供されている事があり、ご自身で何かの登記申請を行った方も多いはずだと思います(会社設立もそうですね)。

一般の方の考え方としては、登記申請に関するこのようなサービスを利用すれば便利ですし、もし何らかの問題があったとしても法務局が指摘してくれる、だと思いますし、実際に登記が無事完了すればそれで全てOK!と言う感覚でしょう。

では本当に登記が完了すれば何も問題はないのでしょうか?

ほとんどの方は勘違いをされているのですが、実はそうとは言い切れないのです。それは、登記官の「形式的審査権」が関係してくるからです。

1.形式的審査権とは

登記が申請された場合、必ずその登記が完了されるのではなくルールに基づく審査が行われ、そのルール通りではない登記申請の場合、却下される事があります。

・登記申請の権限がある人物が申請してきたか?
・法令に定められた書類はきちんと添付されているのか?

等々、細かいルールがあります。

で、登記と言うのは基本的に何らかの法律行為・権利移転等があって発生するのが大前提です。

例えば不動産であれば売買契約で購入する事で、不動産の所有者が売主から買主に名義が変わる。相続であれば、遺産分割協議等で相続する人が決まるから、被相続人から相続人に名義が変わる。

会社の登記であれば、取締役が取締役として選任され、その就任を承諾したからこそ、その会社の取締役になるし登記申請を行う必要がある。

このように、法律行為→登記申請と言う順番が大原則です。

なので、登記申請を行う場合、これらの法律行為等が発生した証拠を書面として添付する必要があります。

では登記官は提出された書類について、どのような審査を行うのか?実は登記申請の大前提である法律行為について、「本当にこの法律行為が有効に成立したのか?」と言う審査は行わないのです。

あくまで提出された書類に不備がない限り、「有効な法律行為があった」ものとして、書類上の審査が行われるのです。

これが、登記官の「形式的審査権」と呼ばれるものです。

このように法務局の登記官は、登記申請の際に提出された申請書や添付書類などの内容のみを基準に審査を行い、 現実に法律行為が有効に発生したかどうかは審査されません。

この形式的審査権、良い面も当然あるのですが、形式的審査権だからこそ、行った登記申請について(特に司法書士が関与していないケースで)潜在的な問題がはらんでいる事があるのです。

2.登記が完了しても「潜在的な問題」がある

では、登記が無事に完了したにも関わらず、潜在的な問題がはらんでいると言うケースとは一体何なのか?

司法書士にご相談が良くあるのが「認知症の親の不動産を(勝手)に売りたい」と言うケースです。

不動産の所有者である親が意思表示ができなくても、親の印鑑証明書や権利証、その他の書類さえ整えれば登記申請はできますし、恐らく登記は完了するでしょう。

しかし、売買と言う実際の法律行為が有効に成立していませんのでこの登記申請は無効ですし、親族の誰かからこの法律行為の無効を争われ、トラブルになる可能性もあります。

同じようなケースで言えば、

「相続対策として不動産を親子間で贈与した事にし、相続時精算課税の利用を考えていたけど、利用をするのを忘れて普通に贈与税が発生してしまった。だから贈与がなかった事にしたい。」

なんて相談を受ける事があります。

これも現実の法律行為をないがしろにした結果、問題になったケースです。

会社の登記であれば、適法に株主総会が開催されていないにも関わらず開催した事にして取締役を解任する、と言うケースもあります。当然これも書類さえ整えれば登記は完了しますが、取締役の解任決議は無効でしょう。

このように、法務局(登記官)は形式的審査権しかなく、実際に登記の前提である法律行為が有効に成立したかどうかは深くつっこんで判断しません。

その為、「登記が完了すれば何も問題ない!」と言う訳ではないのです。

3.まとめ

今回の事例は若干悪意があるモノを取り上げてみましたが、「悪意はないけど法律行為が有効に成立していないケース」も良く見受けられます。

freeeやマネーフォワード、LegalScript等と言った「登記申請に必要な書類が誰でも簡単にできる」サービスは、あくまで書類を作成するだけのサービスであり、その前提である法律行為等の判断を行ってくれるサービスではありません。

「誰でも簡単に」と言うキャッチコピーのみを全面的に強調した結果、外見的には登記が完了したけれど、潜在的にとんでもない問題を抱えた登記になってしまう危険性もあります。

その為「そんな自己責任は負いたくない!ちゃんと登記の専門家と相談してやりたい!」と思われた場合は、司法書士へご相談する事をお勧めします。

【お気軽にお問い合わせ下さい】
集客と法律のお困りごとを解決します。提供中サービスはこちら(※ご相談はzoomで全国対応可)

司法書士 甲斐智也司法書士 甲斐智也

司法書士 甲斐智也

熱き志を持つ起業家を法律とマーケティングで支援する司法書士。趣味はキックボクシングと朗読。

関連記事

特集記事

司法書士 甲斐智也司法書士 甲斐智也

司法書士 甲斐智也

熱き志を持つ起業家を法律とマーケティングで支援する司法書士。趣味はキックボクシングと朗読。 (詳しい自己紹介は画像をクリック!)。

問題解決能力を高めませんか?

集客に困らない会社設立手続き

攻めと守りのコンサルティング

電子書籍販売中

人気の記事

  1. 1

    会社の登記の添付書類で押印が必要な場合と必要ではない場合

  2. 2

    【代表取締役社長の死亡】登記手続を司法書士が分かりやすく解説

  3. 3

    一人会社の場合はどうなる?取締役と会社の「利益相反取引」とは?

  4. 4

    法務局の登記相談は親切丁寧に教えてくれない当然の理由

  5. 5

    会社への貸付金を現物出資(DES)し資本金を増やす方法と登記

最近の記事

  1. 自分の会社に素人の投資家から投資をしてもらう時の注意点とは?

  2. 認知症の人の不動産を売却・購入するリスクとは?

  3. 遺留分対策(相続対策)で生命保険活用時の注意点

  4. 経済産業省が創設したスタートアップの法務支援を行う専門家チームとは?

  5. デジタル遺産(遺品)の相続対策のポイントとは?

TOP