株主間の株式譲渡について会社の承認を不要とするデメリット

会社設立・商業登記

こんにちは。司法書士の甲斐(@tomoya_kai)です。

株式会社を設立する場合、最初に定款を作成する必要があります。

この定款は書籍やインターネットで検索するとひな形が公開されていますので、設立する会社の事情に合わせてカスタマイズして作成すれば良いのですが、そのひな形の中にこのような条文を見つけたんですね。

(株式の譲渡制限)
第●条 当会社の発行する株式の譲渡による取得については、株主総会の承認を要する。ただし、当会社の株主に譲渡する場合には、承認をしたものとみなす。

いわゆる、株式の譲渡制限に関する規定です。新しく設立する会社のほとんどがこの「株式の譲渡制限」がついています。

上記のひな形は、定款の認証を行う公証人の団体である、日本公証人連合会が公開している定款のひな形にも同様の趣旨の規定があります。

定款記載例(日本公証人連合会HPより)

公証人の団体が紹介している定款のひな形なので特に問題がなさそうに見えるのですが、実はこれ、潜在的なリスクが潜んでいる規定になっているんです。

今回は、株主間で株式を譲渡する場合、会社の承認を不要とする規定のデメリットのお話です。

1.株式の譲渡制限を設定する趣旨

先程お話したとおり、新しく設立される会社のほとんどが「株式の譲渡制限」がついています。

文字通り、「株式を譲渡により取得する場合は、会社の承認が必要ですよ」と言う意味で、定款のひな形にはほぼ100%この規定が入っていますので、その趣旨についてあまり深く考えた事がないと思います。

どうしてこの規定があるのかと言えば、「会社にとって都合が悪い株主の出現を未然に防ぐ」と言う趣旨があります。

株式は本来自由に譲渡する事ができるのですが、日本の中小企業の多くが「家族経営」なので、身内以外の株主が出現すると面倒な事になります。

その為、株式の譲渡制限を設定して、会社にとって株主にふさわしくない人が現れようとしたら、その譲渡を拒否し、対価を支払ってその株式を取得する事ができる事にしたのです。

これが株式の譲渡制限の趣旨なのですが、ただ株主間でそれをやると「それはそれで面倒」と言う事があるので、株主間の譲渡であれば会社の承認は不要、と言う規定が盛り込まれる事があるのです。

一見、理にかなっているような話しですが、先程もお話したとおり、この規定は潜在的なリスクが潜んでいるのです。

2.株主間の株式譲渡を承認不要とするデメリット

例えば、株主がA、B、Cの3人。それぞれの株式比率が

A(社長):34%
B:33%
C:33%

としましょう。

この場合、社長であるAは全株式の過半数を取得していますので、会社経営における多くの事は単独で決める事ができます。

しかし、社長AとB、Cの仲が何らかの理由によって悪くなった場合、「株式の譲渡について承認不要」の規定があれば、B、C間のやり取りだけで株式の譲渡が可能になります。

例えばCがBに全株式を譲渡した場合、全体の持ち株比率は

A(社長):34%
B:66%

となってしまい、Bの持ち株比率が過半数を超えてしまう事になり、BがAの解任を単独で行う事も可能になってしまうのです。

これが、株主間の株式の譲渡について承認を不要とする規定のデメリットなのです。

3.まとめ -ひな形をそのまま使うのは危険-

今回は株式譲渡について承認を不要とする規定のお話でしたが、公開されている定款のひな形には、このように「そのまま使うには注意が必要」な規定が盛り込まれている場合があります。

「一般的に公開されているモノだし、何も問題ないだろう」と思考停止状態で使うと、想定外のトラブルになる危険性があります。

ひな形を使う場合は各条文に何が書かれているのか?その条文は何を意味するのか?を十分に理解するようにし、自己責任の元、使用するようにしましょう。

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