
こんにちは。司法書士の甲斐(@tomoya_kai)です。
会社に関する登記の法律として、「商業登記法」と言うのがあるのですが、令和3年2月15日に改正されます。
この改正によって、会社設立の実務が多少変わってきますので、このページでお話したいと思います。
1.スーパー・ファストトラック・オプションのスタート
「スーパー・ファストトラック・オプション」とは簡単に言えば、会社設立の登記手続きを今まで以上に迅速化する事です。
今回の商業登記法の改正で予定されているのが、
- 定款認証と設立登記をオンラインで同時に申請し、
- 登記申請と同日中にテレビ電話機能を利用して定款の認証手続を了し、
- 申請から24時間以内に設立登記も完了する
という、超高速(?)の会社設立手続です。
今までは株式会社を設立する場合、公証役場で定款認証を行ってもらい、その後、認証を受けた定款を添付して法務局に登記申請する必要がありました。
ところが令和3年2月15日以降、登記供託オンライン申請システムを利用する事で、定款認証も設立登記も同時に申請する事ができます。
(定款の認証については、テレビ電話機能を利用して、申請当日に行うようです。)
つまり、こんな感じの流れになると思います。
- 定款の作成
- 出資金の払い込み
- その他、登記申請に必要な書類の作成
- 設立登記申請及び定款認証の申請
- 申請当日、テレビ電話機能を利用して、定款の認証を受ける
- 設立登記申請完了
スーパー・ファストトラック・オプションの注意点
アッと言う間に会社設立が出来るのですが、この手続き利用するためには発起人が全ての書類について電子署名を行う必要があります。
原始定款はもちろん、出資金の払い込みがあった事を証する書面やその他全ての書面です。
その為、この制度を利用する場合、マイナンバーカード等の所持が必要不可欠となります。
例えば、「払込があったことを証する書面」については、定款作成後、定款認証時までに出資金を発起人口座に入れておく必要があり、それを準備しておく必要があるでしょう。
(早めに定款作成をして、出資金を払い込んで準備する、と言う感じで)。
その他、実務上の細かいルールについては今後整備されると思いますので、行政からの通達は要注意ですね。
2.印鑑の届出が任意になる
もう一つ、商業登記法の重要な改正点があります。
今までは会社設立の登記申請を行う際、印鑑届(印鑑の印影を届け出る)も必要であった所、この規定が削除されます。
つまり、印鑑届はやってもやらなくても良い、任意の手続きとなります。
日本では印鑑廃止の流れが加速しており、今回の改正はその流れの一つでしょう。
では印鑑届は今後やらなくても良いのかと言えばそうではなく、今の所はやった方が良いでしょう。
契約上、会社の実印や印鑑証明書が求められるケースもまだまだあるでしょうし、全ての手続きについて押印を廃止する事はまだまだ時間はかかります。
届出の手続きそのものは難しいものではないので、会社設立時は実印を作成して印鑑届を行った方が良いでしょう。
実印の作成、印鑑届を行うデメリットはありませんので(強いて言えば、実印の作成にお金がかかるぐらいです。)
3.まとめ
商業登記法は数年ごとに細かい部分での改正があり、登記手続きに密接に関連する改正であれば、しっかりと抑える必要があります。
とは言え、普段から登記実務を行っていなければ中々把握する事が難しい分野でもありますので、少しでもご不明点等がございましたら、司法書士にご相談する事をお勧めします。