こんにちは。司法書士の甲斐です。
不動産を購入したり相続した場合、その後に登記申請を行う事になります。
会社についても同様で、会社を設立したり、その後に役員変更等を行った場合、登記申請が必要になってきます。
で、この登記に関しては司法書士の独占業務となっているのですが、当然本人でも行う事が可能です。
昔と比べて登記申請に関する知識はインターネットで簡単に取得する事ができ、実際に登記申請を行った人の体験談として、「法務局でやり方を教えてもらったので、簡単にできた!」と言う投稿がされる事があります。
「法務局」と言うのは登記申請を受理し、申請された内容に従って登記を完了させる「お役所」です。
そのお役所が登記申請について手取り足取り申請丁寧に教えてくれるのであれば「だったら司法書士なんかに払うお金が勿体ないから自分でやろう」と言う考え方になるのも当然ですよね。
でも、ちょっと待って下さい!
本当に法務局は登記申請について、親切丁寧に手取り足取り教えてくれるのでしょうか?
今回は、法務局における登記申請相談の本当の姿のお話をします。
1.法務局における登記相談とは?
法務局の登記相談は「登記手続案内」と呼ばれていて、文字通り、何らかの登記申請の必要性が生じた場合に、その申請人本人が「登記手続きを行う上でどうすれば良いのか?」と言った事を相談できるサービスです。
・・・と聞くと、「じゃあ親切丁寧に教えてくれるはず。と言うより税金で運営しているのであれば、国民の為に親切丁寧に教えるのが当たり前!」と言う風になりますよね?
そこに落とし穴(?)があって、実はこれらはあくまで「登記手続きに関する案内」なんですね。
登記申請を行うと言う事は、その前提として何らかの法律行為が行われる必要があります。
不動産だったら、売買や贈与、相続。会社の登記も同様です。
一般の方はこの「法律行為」の部分も親切丁寧に教えて貰える!と思われるかも知れませんが、それは法務局としては管轄外なので関与できないんですね。
それが、法務局における本来の「登記手続案内」なのです。
2.法務局が親切丁寧に対応しない理由
実際に東京法務局の登記手続案内から引用してお話します。
【事前の審査・法的判断はできません】
係員が申請前の書類に不備がないか審査することはできません。登記原因事実、法律行為(契約)が有効か無効か判断したり、法的なアドバイスをすることもできません。
【ご自身で作成してください】
申請書類の書き方を説明しますが、具体的な事案に沿ったアドバイスはしていません。現在の登記の内容は、登記事項証明書を取得するなどにより、ご自身で確認して下さい。
その他、相談を受けても補正(申請情報の訂正)の可能性があったり、申請資格のない人間は利用できなかったり・・・。
一般の方からみれば、かなり不親切に見えませんか?
実はこれ、理由がありまして、登記申請には審査があるからです。
「補助金」を例に出すと分かりやすいですね。
補助金とは、事業者の取り組みをサポートするため、国や自治体がその資金の一部を給付する制度です。
で、この補助金にも審査があり、申請すれば誰でも必ず補助金を受け取る事ができるわけではないんですね。
そうであれば、事前に国や自治体に「補助金の申請が下りるような書類の書き方を具体的に教えて」と言っても門前払いされるのは当たり前ですよね?
みんな補助金が欲しい中、そんな事をやってしまったらフェアじゃありませんから。
登記申請も同様で、きちんと民法その他の実体法上の権利義務関係が生じたのか?等が審査項目になります。
その審査項目である実体法上の事について、手取り足取り丁寧に教えるわけにはいかないんです。フェアじゃありませんから。
だからこそ、「オレたちの税金で養っている役所なんだから、もっと親切丁寧に教えるべきだ!これだから役所は!!」と言う怒りは、ハッキリ言って見当違いなんです。
3.まとめ
随分と厳しめのお話をしましたが、これが法務局の登記相談の現実です。
ではなぜ「法務局が親切丁寧に教えてくれた」と言う体験談の投稿が後を絶たないのかと言えば、法務局側がこのルールを単純に徹底していないだけです。
つまり、投稿した人はたまたま運が良かっただけで、全ての人に当てはまるわけではないんですね。
この点を理解せず体験談を鵜呑みにしてしまうと、そのギャップに苦労する事になります。
何でもそうですがインターネットの情報はそのまま信用せず、きちんと正しい情報にアクセスするようにしましょうね。
なお、法務局に相談しても、書籍で勉強しても良く分からない。そうであれば正直なところ、登記の専門家である司法書士に依頼した方が手っ取り早いです。
昔から「餅は餅屋」と言う言葉があるぐらいですから。当事務所でもご相談は随時行っておりますので、ご遠慮なくお気軽にお問い合わせ下さい。