法人成りのメリット・デメリット、そのタイミングを解説します

会社設立・商業登記

こんにちは。司法書士の甲斐(@tomoya_kai)です。

個人事業主が頑張って売り上げが順調に伸びてくると、経営者仲間や税理士から、「そろそろ法人成りをしたらどうか?」なんて声がかかる事があります。

最初から会社を立ち上げていた人であれば特に意識しない事なのですが、個人事業主の場合、「そもそも法人成りを行ったら、今までと何がどう変わるのか?」と言う点が非常に気になりませんか?

そんなあなたに、今回は法人成りのメリット・デメリットや、法人成りのタイミングについてお話ししたいと思います。

1.法人成りのメリット

① 税制上有利になる

法人成りのメリットは様々ありますが、一番大きいのが税制上のメリットでしょう。

以下、細かくお話しします。

【事業の収益に対する税率の軽減】

個人事業であれば、利益は事業所得として他の所得と合算され、所得税と住民税を合わせて最高55%課税されます。

一方、法人税や事業税などを合わせた法人の実質的な税負担は、中小企業では約30%台となっています。

個人と法人では課税計算の仕組みが異なりますので単純な比較は出来ませんが、事業に対する利益が大きくなれば、法人化した方が税負担は少なくなります。

【役員報酬に対して給与所得控除を利用する事が出来る】

一般企業のサラリーマンの場合、給与等の収入金額から一定額(給与所得控除)を差し引いて給与所得を算出し、所得税を計算します。

しかし個人事業主の場合は、売上から経費を差し引いた利益に対して所得税がかかりますので、サラリーマンのような給与所得控除がありません。

ところが、法人化する事によって、社長となった元個人事業主が役員報酬を受け取る事で、サラリーマンと同様、給与所得控除の恩恵を受けることが可能となります。

【消費税が最大2年間免除される】

個人事業主が法人化すると、消費税法上では新しい事業者とみなされます。

そして法人は「2期前の売上が1,000万円以上あれば消費税の納税義務が生じる」と定められていますが、新規法人については設立1期目と2期目は『2期前の売上』がそもそもありません。

その為、原則として消費税がかからない免税事業者となるのです。

個人事業主として消費税を納税していたとしても、法人化すれば新しい事業者となりますので、最大2年間消費税が原則免除される事になります。

② 対外的な信用が増す

法人成りする為には会社の設立登記を行う必要があります。

会社名や資本金等が登記されますので、一般的に法人事業会社は個人事業主と比較して、社会的に信用があります。

その為、企業によっては法人であることを取引の条件としているケースがあり、法人であることが取引上有利になることがあります。

また金融機関から融資を受ける場合にも、個人事業主より法人の方が一般的に有利となっています。

③ 原則として責任の範囲が決まっている(有限責任)

個人事業の場合、事業を行う上で損失が出た場合、個人事業主がその責任を全て負う事になります。

つまり、損失が巨額な場合、最悪自己破産を行わなければならないケースも出てきます。

しかし、株式会社であれば経営者が負担する責任は、株主として会社に出資した金額の範囲までとなっています。

会社の資産と経営者の私的な財産は分離されている為、経営者は株主として出資した金額を失うことはあっても、自分の財産を使って損害を補てんする必要はありません。

(ただし、金融機関から借りた会社の借入金に対し、経営者自身が保証人になっている場合は除きます。)

2.法人成りのデメリット

① 法人の設立に手間と費用がかかる

個人事業を始めるときは、基本的に税務署に個人事業の開業届を提出するだけですので、簡易な手続きで終了します。

しかし、株式会社を設立するときは、会社の基本的なルールである定款を作成し公証役場で認証を受ける必要があります。

さらに、会社法所定の手続きを行い、登記申請に必要な書類を作成し、管轄の法務局で会社設立の登記申請を行う必要があります。

これらの手続きでは実費が最低でも約20万円(定款認証手数料や登録免許税等)かかりますし、手続きを司法書士に依頼すればその報酬もかかります。

2.社会保険への加入が義務になる

個人事業主の場合、常時雇用する従業員が5人未満であれば、健康保険や厚生年金保険への加入義務はありません(加入は任意となっています)。

しかし、法人成りをすると、従業員の人数に関わらず、社会保険への加入が義務付けられ、それらの手続き等や保険料支払いの負担が増えます。

なお、労働保険については1人でも従業員を雇用すれば、個人事業であっても加入の義務があります。

法人成りすることによって、健康保険料+厚生年金保険料が必要になりますので、これら社会保険料の支払いは大きな支出になるでしょう。

3.赤字でも7万円の法人住民税が発生する

個人事業の場合、赤字であれば所得に課される税金は発生しません。

しかし、法人の場合は、たとえ赤字であったとしても、法人住民税の均等割と呼ばれる部分がある為、所得の有無にかかわらず年間7万円が課税される事になります。

3.法人成りするベストタイミングとは?

個人事業主が法人成りするタイミングに関しては色々な考え方があります。

一つは、売り上げ(消費税)に対する考え方です。

消費税の課税対象となるのは売上高が1,000万円を超えた場合で、売上がこれを超えれば、いずれ消費税の課税事業者になります。

そのタイミングで法人成りすれば、新たな事業者として消費税が最大2年間免除されますので、法人成りを検討しても良いでしょう。

もう一つは利益(所得)に対する考え方です。

所得税と法人税を比較して、法人税の方が税率が低くなるラインがあります。

所得税には控除があるため、これを考慮すると利益額800万円を超える場合は法人成りをした方が良いと言われています。

このように売り上げ、利益の両方の側面から考えると良いのですが、これはあくまで一般論であり、事業内容等、具体的な事情を検討すべきでしょう。

4.まとめ

個人事業から法人成りを行う場合、様々な角度から検討・分析を行うべきですし、その分析が甘ければ法人成りをした結果、不利益の方が大きくなる事もあるでしょう。

その為、法人成りを検討される場合は、税理士や司法書士と言った専門家に一度ご相談をする事をお勧めします。

なお、会社設立の手続きに関しては下記のページをご覧下さい。

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