こんにちは。司法書士の甲斐です。
会社設立の情報はインターネットを中心に充実していますが、実は会社設立には「発起設立」と「募集設立」の2つのパターンがあり、さらに世の中に出回っている会社設立のほとんどが「発起設立」の手続き関する事です。
ただ、会社設立のご相談を受けていますと、稀に募集設立をされたい、と仰る方がいらっしゃるのですが、募集設立はほとんど利用されていない為、発起設立をお勧めしているのが現状です。
どうして会社設立で2つの手続きが法律上用意されているにも関わらず、募集設立はほとんど利用されていないのか?
今回は発起設立と募集設立の違いと、募集設立がほぼ利用されていない理由をお話します。
目次
1.発起設立と募集設立
① 発起人とは?
発起設立と募集設立の違いを理解する為には、まず、そもそも「発起人とは何なのか?」を理解する必要があります。
発起人とは会社設立で良く出てくる言葉で、
・設立する会社の株主で
・かつ実質的に会社設立の手続きを行う人
の事です。
正に会社設立の中心的人物であり、我々司法書士が会社設立の依頼を受ける際は、この「発起人」から依頼を受け、会社設立を代理して行う、と言う流れになります。
② 発起設立と募集設立の違い
では発起設立と募集設立の違いは何なのか?と言うと、発起設立は出資し株式を引き受けるのが発起人のみであるのに対して、募集設立は発起人以外からも出資を募る手続き、と言うのが大きな違いです。
つまり、お金だけ払って会社設立の手続きについてはあまり関与しない、と言う人達が存在するのが募集設立です。
と、これだけでは発起設立と募集設立の違いってあまり無いような印象を受けますよね?
ただ、実際にはその手続きは大きな違いがあり、その違いが募集設立があまり利用されていない理由にも繋がるのです。
2.募集設立がほとんど利用されない理由
① 募集設立が必要になるような大掛かりな会社設立がほぼないから
募集設立は発起人以外からも出資を募る会社設立の形態です。
ここでイメージして欲しいのですが、会社って通常は仲間内で立ち上げたり、仮に出資を募ったとしても少人数なはずなんです。
であれば、全員が発起人として会社設立に関与すれば済む話しなんですね。
つまり、募集設立って、出資者を何十人、何百人も募集するような事を想定しているはずなんです。
そんな人数、全員が発起人として関与する事は事実上不可能ですし、そもそもスタードアップ時にそんな大人数から出資を受けるなんて、早々あり得ないと思います。
その為、募集設立がほとんど利用される事がないのです。
② 銀行が嫌がるから
そしてもう一つの問題点が、この手続き、銀行がとっても嫌がるんです。
募集設立を行う場合、発起人が指定した金融機関に出資者に払い込みをしてもらうのですが、その払い込みをした証明書「払込金保管証明書」を銀行に発行してもらい、それを会社設立の登記申請時の添付書類とする必要があります。
ところがこの「払込金保管証明書」、銀行から見ると非常に重い責任があり、取り扱いを拒否されたり、審査に非常に時間がかかったりするんです。
この点から言っても、募集設立は現実的な手続きではないのです。
なお、旧商法時代は発起設立でもこの払込金保管証明書は必要でしたが、会社法では発起設立では必要なくなりました。
③ 手続きが面倒だから
募集設立は会社設立後の募集株式発行に非常に良く似た手続きです。
その為、株式の募集、申し込み、申込に対する株式の割り当て、引き受け、払い込み、創立総会の開催等、複雑な手続きを行う必要があり、迅速に会社設立を行いたい場合には不向きな手続きなのです。
3.まとめ
いきなり何千万円も何億円も集める必要がない限り、募集設立を行う必要性はほぼありません(スタードアップ時の経営者として半人前の人物にそんなお金を出す人も皆無でしょう)。
その為、会社設立と言えば発起設立の一択となっているのです。