公開社会社が株式に譲渡制限をつけて非公開会社になる手続きとは?

会社設立・商業登記

こんにちは。司法書士の甲斐(@tomoya_kai)です。

会社が発行する株式は自由に譲渡出来るのが原則ですが、会社の現状によっては株式の譲渡について、一定の規制をかけた方が良いケースが出てきます。

いわゆる公開会社が非公開社になる手続きですが、この手続きは登記申請も絡んできて、若干複雑です。

そこで今回は公開会社が株式の譲渡制限を設定し、非公開社になる手続きのお話をします。

1.公開会社、非公開社、株式の譲渡制限とは?

公開会社とは、その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社のことをいいます(会社法第2条)。

ややこしい言い回しですが、簡単言えば「発行する全ての株式について、譲渡制限がついてない会社」が公開会社です。

逆に、「発行する全ての株式について、譲渡制限がついている会社」が公開会社ではない会社(非公開会社)です。

「譲渡制限」とは、株式を自分以外の第三者に譲渡する際に、会社の承認を要する事で、この譲渡制限がついた株式の事を「譲渡制限株式」と言います。

株式は自由に譲渡する事が出来るが原則ですが、そうすると会社としてはあまり株主になって欲しくない人が株式を取得する可能性があります。

その為に自由に譲渡が出来る原則の例外として「株式の譲渡制限」の制度があるのです。

2.株式に譲渡制限を付けた方が良いケース

① 役員の任期を2年以上に伸ばしたい場合

公開社会社における役員の任期の上限は2年です。

2年ごとに役員の就任(重任)の登記申請を行う必要があり、任期の管理は楽ですが手間と費用がかかります。

非公開会社の場合、役員の任期を最長で10年にする事ができるメリットがありますので、その為に株式に譲渡制限をつけ非公開会社にする事が考えられます。

② 知らない第三者に株式が譲渡されると困る状況になった場合

会社の経営上の理由等から、株式の譲渡を自由に行われる事が不都合になったケースです。

③ 取締役会を廃止したくなった場合

元々取締役会を設定していたけれど、会社の規模感から取締役会を廃止したくなったケースです。

公開会社は取締役会の設置は義務となっています。

3.株式の譲渡制限の設定の手続き

株式の譲渡制限の設定の手続きの流れは下記の通りとなります。

  1. 株主総会の決議(特殊決議)
  2. 株券等提出公告及び株主への通知(効力発生日の1ヶ月前まで)
  3. 株主への通知(効力発生日の前日の20日前まで)
  4. 登記申請(効力発生日から2週間以内)
「株券等提出公告及び株主への通知」は、株券発行会社で実際に株券を発行している会社のみ必要な手続きとなります。

① 株主総会の決議(普通決議)

株式に譲渡制限を設定する場合、定款の変更が必要になってきますので、株主総会で定款変更の決議を行います。

定款変更の決議は通常、「特別決議」と呼ばれる方法で行われるのですが、譲渡制限の設定は特別決議よりも厳格な「特殊決議」で行う必要があります。

【特殊決議】
議決権を行使することができる株主の半数以上が出席し、当該株主の議決権の3分の2以上の賛成で行う決議です。

② 株券等提出公告及び株主への通知

発行している株式について、株券を発行していない場合はこの手続きは不要です。

株式に譲渡制限を設定する場合は、効力発生日までに株券を発行している会社に対し、株券を提出しなければならない旨を効力発生日の1ヶ月月前までに公告し、かつ該当の株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知する必要があります(会社法第219条1項)。

「公告かつ通知」と定められていますので、両方を行う必要があります。

【公告例】

株式譲渡制限設定につき株券提出公告
当社は、定款を変更して譲渡による株式の取得につき取締役会の承認を要する旨の定めを設けることにいたしましたので、当社の株券を所有する方は、株券提出日である令和〇年〇月〇日までに当社にご提出下さい。
令和〇年〇月〇日
東京都新宿区〇〇一丁目2番3号
株式会社山田商事
代表取締役 山田 太郎

③ 株主への通知(株式買取請求権行使の機会を確保する為の通知)

上記の株券公告及び通知とは異なる趣旨となりますが、会社が発行する株式に譲渡制限を設定するときは、その効力を生ずる日の20日前までに、譲渡制限を設定する株式の株主に対し、当該行為をする旨を通知する必要があります(会社法第116条3項)。

これは反対する株主に「反対だから、自分が持っている株式を適切な金額で買い取れ」と会社に対して請求できる機会を確保する為の通知です。

なお、この通知は株主総会の招集通知の内容に盛り込む事も可能ですが、20日前までに発送する必要があります。

この通知は公告で行う事も可能です(会社法第116条4項)。

④ 効力の発生

株主総会の決議によって定められた効力発生日に定款変更の効力が生じ、株式の全てに譲渡制限が設定されます。

効力発生日までに株券に関する手続きと、反対株主への通知が終わっていることが効力発生の条件となります。

⑤ 登記申請

株式の譲渡制限の設定について効力が発生してから2週間以内に、株式の譲渡制限に関する規定の設定登記を、管轄の法務局に対して申請します。

なお、この登記の登録免許税は3万円です。

4.まとめ -株券があると少し煩雑になる-

株券発行会社が譲渡制限を設定する場合、株券に関する公告・通知が必要になりますので、若干手間がかかります。

その為、株券発行会社が株式の譲渡制限を設定する場合、株券不所持の申出(会社法第217条)を活用し、株券を実際に発行していない状態にしてから手続きを行う方法を検討しても良いかもしれません。

また、新しい会社法が施行され株券不発行が原則となりましたので、株式の譲渡制限の設定時に併せて株券不発行の手続きを行っても良いでしょう。

このような手続きは簡単に出来るものではなく、何より現状を正確に把握する必要がありますので、譲渡制限の設定や株券に関する登記申請についてお困り、お悩みの場合はお気軽にご相談下さい。

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