こんにちは。甲斐です。
以前、コンサルタントに必要なスキルとして「疑問に思う事」と言う内容をお話しました。
2021.05.15
まずは疑問に思うこと。それがコンサルタントに必要なスキルの第一歩
こんにちは。甲斐です。コンサルタントと言えば、昔は「経営コンサルタント」の事を指していたのですが、最近は様々な分野コンサルタントが存在し...
「疑問に思う事」がコンサルティング、問題解決思考では必要不可欠になるのですが、当然これだけではダメです。
問題を解決するには、「現状(事実)を正確に把握する事」も重要になってくるのです。
と、言いますと、「なんだそんな事?」と思う方がいるかも知れませんね。
でも、実はこの当たり前の事が、ほとんどのビジネスパーソンや会社が出来ておらず、思い込みや妄想で意思決定をして大失敗しているケースがあるのです。
1.「現状(事実)を正確に把握する」とは?
まずは具体例として、ヤフーニュースで最近出ていたニュースをご紹介します。橋本徹氏がオリンピックの損害賠償について語った記事です。
「どんな契約であったとしても、公序良俗、一方的にものすごい不利益を与える契約は無効になるっていう法理論があるわけですから。コロナになって別に誰に責任があるわけでもない中でIOCの方がかかった経費の最低限以上に何百億円、何千億円というある意味、利益分を乗せてくるような損害賠償なんて通りませんよ」
- 新型コロナの影響でオリンピックを開催すべきか否か?
- オリンピックを中止した場合のIOCに対する損害賠償はどうなるのか?
この点については、実に様々な人が議論していますが、このニュースを普通に見た場合、「これは正論だ!」と思う人が結構いるのではないでしょうか?
勿論、そう思っても全然良いのですが、ではもしあなたがコンサルタントで、日本から
「オリンピックを中止した場合の、IOCからの損害賠償についてどう対応すれば良いのか?」
と言う相談を持ち掛けられたとき、どうしたら良いと思いますか?
「現状(事実)を正確に把握する」と言うコンサルタント視点で見た場合、最初にどのように考えるのが適切なのでしょうか?
折角ですので、コンサルタントになったつもりで少し考えてみて下さい。
ちゃんと考えましたか?それでは回答例です。
- そもそも、損害賠償は本当に発生するのか?
- IOCとの契約(書)はどうなっているのか?損害賠償の条項はどうなっているのか?
- 上記の法的理論は本当に通用するのか?相手は外国の組織だぞ?
少なくとも上記の事は考え、実際に事実関係を調べる必要があるでしょう。
仮にIOCの損害賠償請求権が発生しない場合、前提条件が変わってきますので。
「現状(事実)を正確に把握する」とは、このように「前提条件」をしっかりと確認する事を意味するのです。
2.現状を正確に把握しないと、行くべきゴールが間違ってくる
さて、ここまで読んだ方の中でまだ、「現状を正確に把握するなんて簡単でしょ?何言ってるの?」と思われている方もいるでしょう。
しかし、簡単ですが実際に出来ていないのが会社でありビジネスパーソンなのです。
例えば、会社の会議でこのような事、良くありませんか?
「今、東南アジアの経済成長率が非常に伸びているらしい。事実、競合他社が東南アジアに進出して、売上をガンガンあげているらしい。だからわが社も積極的の東南アジアンに進出すべきだ!」
ようは「東南アジアには成長市場があるし、競合他社も参入しているので、わが社も積極的に参入すべきだ!と言う理論です。役員とかが良く言いそうですね。
これだけ聞くと「ウンウン、その通り!」と思うかも知れませんが、それが大きな間違いなのです。
「現状(事実)を正確に把握する」と言うコンサルタント思考でこの発言を聞いた時に、
- 本当に東南アジアは経済成長率が伸びているのか?それは特定の国だけじゃないのか?
- 競合他社は本当に東南アジアに進出しているのか?
- 競合他社は本当に結果を出しているのか?実は苦戦しているのではないのか?
少なくともこの点は疑問に思い、事実関係をチェックすべきでしょう。
もしこれらの前提事実を確認しないまま「よし!わが社も東南アジアに進出だ!!」と行き当たりばったりで行動してしまい、予想と反して全く事実が異なれば回復不可能な損害を被るかもしれません。
現状を正確に把握しなければ、本来目指すべきゴールを間違えてしまう事があるのです。
3.裁判でも、まずは事実認定をおこなう
実は裁判でも事実は大切にされているのです。
「裁判」と聞くと、裁判官や弁護士が一般人には良く分からない法律の話しをワイワイガヤガヤとしているイメージがあるかも知れませんが、やっている事のほとんどが事実認定です。
そもそも、法律の条文の作り方として、まずは事実があり、そのあとに法的効果が発生するようになっているんです。
だから、裁判官はまず当事者にどのような事実があったのかを確認し、争いがある事実については証拠で判断する、と言う流れになっているのです。
裁判でもなにより事実が重要になってくるのです。
4.まとめ -認知が歪んでいると、現状を正確に把握できない-
以上、コンサルタント思考、問題解決思考において重要な「現状(事実)を正確に把握する能力」についてお話しました。
実は現状を正確に把握できない要素の一つとして、今までお話してこなかった「認知の歪み」と言うのがあります。
「認知」とは人間が外からの刺激等を知覚した上で、それが何であるかを判断したり解釈したりする過程のことを言います。
雨が降ったときに
- 「憂鬱だなぁ(ネガティブな感情)」
と感じる人と
- 「静かで心落ち着く(ポジティブな感情)」
と思う人がいるように、同じ「雨が降っている」と言う事実なのに、全く違う結論の感情になっているのは、まさにこの「認知」の違いがあるからです。
ただ、「いくらなんでも普通はそう考えないよね?」と言う「認知の歪み」がある場合、現状(事実)を正確に把握するのが難しくなります。
もし、現状を正確に把握するのが苦手な場合、この「認知」を意識すると良いのかも知れません。