こんにちは。甲斐です。
日常生活やビジネスの場面での契約、特に高額なお金が動く契約や、長期間当事者を拘束する契約の場合、契約書の作成は必須です。
契約書と言う証拠が無ければ、トラブルに発展する可能性が高いですので。
契約書の種類は色々とあるのですが、今回は「不動産の売買契約書」にスポットをあててお話したいと思います。
不動産の売買契約を行う場合、通常は不動産会社(仲介会社)が売主・買主の間に入りますので、売買契約書はちゃんと作成されます。
しかし、全国の司法書士に聞いたところ、不動産会社が関与しない(させないで)、不動産取引を行う方々が一定数いらっしゃるみたいです。
この場合、売買契約書も作成していないとか・・・。
おそらく、
「不動産会社に依頼するのが面倒だしお金もかかるので、当事者だけでやってしまおう」
と言う感じだと思うのですが、これは大変危険です!。
なぜ、売買契約書を作成しない不動産取引は危険なのか?その理由は解説していきます。
1.後々、法的なトラブルになる可能性がある
売主、買主がきちんと不動産売買の合意を行った契約書がなければ、後々トラブルになる可能性が高い事は先に述べましたが、具体的にはどんなトラブルが考えられるのでしょうか?
例えば売主が「不動産を売ったつもりはない」と言ってくる事が考えられます。
買主側からみれば「登記もしてるし売買代金を支払ったでしょ」と反論できますが、「お金なんて支払ってもらってない」「勝手に登記された」と買主から主張された場合は大変です。
「売買代金として支払った証拠」があれば良いですが、そのような証拠がない場合、争いは長期化するでしょう。
もし裁判をしたとしても、
「普通は売買契約書を作成するよね?何で作成していないの?本当は売買なんてなかったんじゃないの?」
と裁判官から思われる可能性もあるでしょう。
このように、売買契約書を作成しなければ後々法的なトラブルになる可能性が大ですし、そうなったら争いが長期化する危険性もあるのです。
2.税務上も不利になる
不動産を売却して利益を得た場合、不動産譲渡所得税を納税する必要があります。
譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
この「取得費」と言うのは不動産を購入した時の代金とか仲介手数料とかが含まれるのですが、取得費が分からない場合(証拠がない場合)、今回売った金額の5%相当額しか取得費とする事しかできません。
ザックリと簡単に計算しますと、
・売買代金 2,000万円
・取得費 1,500万円
・譲渡費 100万円
の場合、2000-(1500+100)で計算した、差額の400万円に対して税率を掛けます。
しかし取得費が分からない場合(証拠がない場合)、売買代金の5%が取得費になりますので、
2000ー(2000×0.05+100)=1800万円に対して税率を掛けます。
税金の根拠となる金額が400万円と1800万円では大きく差がありますので、その後の税金も大きく違ってくるのは簡単に想像できると思います。
この取得費の証拠(根拠)となるのが、売買代金が記載された契約書です。
その為、売買契約書を作成しなければ、税務上も不利になる事があるのです。
3.司法書士が関与したがらない
不動産の売買を行い、その後の「登記申請と言えば司法書士」ですが、売買契約書が作成されていない不動産取引の場合、ほとんどの司法書士が登記申請を受任したくないと思います。
司法書士は単純に登記申請と言う手続きだけを行うのではなく、登記申請の前提となる法律行為がきちんと行われたのを確認する法律上の義務があります。
つまり、売買契約書がない場合、いくら当事者が「不動産を売買した」と言っても、司法書士としては「間違いなく不動産の売買契約が行われた」と言う確証を得なければ受任しないでしょう。
その為、登記申請に協力する司法書士選びに難航する事が想定されますし、最悪はご自身で登記申請を行う必要があり、その為の手間と時間もかかる事になります。
4.まとめ
不動産は高額であり、また現況や権利関係をしっかりと調査する必要があり、それらを軽視すると当事者に何千万単位の損害が発生する可能性があります。
スーパーで数百円のお菓子を買うレベルとは全く異なりますので、「知った者同士だから、契約書なんて堅苦しいモノ、いらないよね?」とは考えず、しっかり不動産会社(仲介会社)を入れて、契約書を作成してもらうようにしましょう。
「不動産会社に依頼するなんて面倒」と思われるかもしれませんが、その少しの手間をかける事で、後々のトラブルを回避する事ができるのです。