会社への貸付金を現物出資(DES)し資本金を増やす方法と登記

会社設立・商業登記

こんにちは。司法書士の甲斐です。

最近、会社の登記絡みで「DES(デス)」のご依頼が増えてきています。

中小企業の社長がご自分で調べたり、顧問税理士から「DESと言う方法がある」と助言を受けたり。

DESを行うきっかけは様々あり、手続きのメリットも沢山あります(デメリットも当然あります)。

DESとは簡単に言うと、社長が自分の会社に個人的なお金を貸している場合に使える手続きであり、「中小企業の社長は知っていて損はない手続き」です。

と、言葉で表現すると簡単なのですが、登記も絡んでくる法律手続きです。

ちゃんと勉強をしないと「会社の借金が減って何か良さそうな手続きだけど、さっぱり分からん!!」なんて事になりかねません。

今回はそのDESについて、分かりやすくお話しします。しっかりと理解するようにしましょう。

1.DESとは?どのような目的で行われるのか?

DESは「Debt Equity Swap(デット・エクイティ・スワップ)」の略で、Debt(債務)とEquity(株式)をSwap(交換)することを言います。

会社法的に言えば、債権者が債権を現物出資して、債権の代わりに株式を取得する事ができる手続きです。

DESは金融機関が良く使う手続きで、銀行が貸し付けを行っている会社が経営不振になっているけれど経営再建の道がある場合、銀行がその債権の代わりに株式を取得し、会社の株主として経営に携わり、経営再建を行います。

会社にとってみれば銀行からの借金が無くなる、銀行から見れば経営再建に関してイニシアチブを取る事が出来る。

双方の利害が一致したような手続きです。

ただ、会社に対して貸し付けを行っているのは金融機関だけではなく、社長自身が自分の会社にお金を貸し付けている事もありますよね。

ちょこちょこと会社に対して貸し付けを行って、気が付いたら数百万円とか数千万円とかになっていたり・・・。

この、「社長が会社に対して貸し付けているお金(貸金)」もDESの手続きで会社の株式と交換する事が可能なのです。

・社長にとっては新たな払込をしなくても株式を取得する事ができる。
・会社にとっては債務を支払わなくてもすみ、財務体質の改善・健全化が期待できる。負債の額が減って資本金の額が増加するので、決算書の見栄えが良くなる。

このようにDESはメリットがある手続きで、会社に個人的なお金を貸し付けている社長にとっては

「メチャクチャ良い手続きやん!すぐにやろう!」

と思うかも知れませんが、そう考えるのはちょっと早すぎです。DESにはデメリットもあるのですから。

2.DESのデメリット・注意点

DESのデメリットで一番大きいのが、「債務消滅益」に課税がされる可能性がある、と言う点です。

DESでは、会社に対する債権が「時価」で評価され、資本化されます。

ちょっと分かりにくい表現なのですが簡単に言うと、会社に対して社長が100万円を貸し付けている場合、その債権が「100万円」として評価されない事があるのです。

例えば会社が債務超過になっているケースです。この場合、評価の方法によっては100万円の債権の時価が「0円」と評価される事があります。

で、この状況でDESを実行すれば、会社から見れば差額の100万円について、債務を免れる事になるでしょう。この差額が「債務消滅益」と呼ばれ、債務消滅益に課税される事があるのです。

某税理士法人がDESに関して債務消滅益の説明を顧客に行わず、裁判になった事例があります。

このように、DESには思わぬ課税が発生する場合がありますのでDESを検討する場合は、顧問税理士と必ず相談した方が良いでしょう。

以上がDESに関する代表的なデメリットですが、適切に利用する事で社長や会社にとってメリットがある手続きです。

自分の会社に個人のお金を貸し付けている社長さんは「こんな手続きがあるんだ」と頭の片隅にでも入れておいて損はないと思います。

3.DESの手続きの実務

DESは株式の発行手続きですので、その流れは通常の株式発行と同じです。

ザっとまとめるとこんな感じですね。

① 取締役(取締役会)で、DESの内容を決め、株主総会を招集する。
② 株主総会で上記の内容について、承認決議を行う。
③ 株式を引き受ける者への通知を行い、株式を引き受ける者がその申込を行う。
④ 会社が株式を引き受ける者への割当てを決める。
⑤ 発行済株式数及び資本金の額の変更登記手続きを行う。

※総数引受契約を行う場合、上記の③及び④を省略する事が出来ます。

① 取締役(又は取締役会)でDES(株式発行)の内容を決める

DESは株式発行の手続きですが、その為には株主総会を開催する事が必要です(みなし株主総会含む)。

株主総会を開く為に取締役で株式発行に関する詳細を決め、その内容について株主総会で承認を得ます。

公開会社では、株主総会ではなく取締役会で上記の募集事項の決議を行います。

② 株主総会でDES(株式発行)に関する承認を行う

上記の①の内容について、株主総会で決議・承認を行います。

株式の発行については、法律(会社法)でその内容や募集事項とする事が定められていますので、各内容について株主総会で承認を得ます。

【募集株式の内容とすべき項目】
・募集株式の数
・募集株式の払込金額又はその算定方法
・金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
・募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
・株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項、等

③ 募集株式の引受けの申込みをする者に対する通知

②の株主総会で決定した事項について、募集株式の引受けの申込みする者に対して、下記の事項を通知する必要があります。

・ 株式会社の商号
・ 募集事項
・ 金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
・ その他、法務省令で定める事項

これに対して、募集株式の引受けしようとする者は、下記の事項を記載した書面を株式会社に交付する必要があります。

・ 申込みをする者の氏名又は名称及び住所
・ 引き受けようとする募集株式の数

④ 募集株式の割当て

会社は、上記の申込者の中から募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定める必要があります。

割当てる募集株式の数は、申込者が引き受けようとする募集株式の数より減らす事ができます。

なお、この割当ての決議は、募集株式が譲渡制限株式である場合、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって行う必要があります(定款で別のルールを決めた場合を除く)。

⑤ 登記申請(必要書類)

新株予約権の割当日から2週間以内に管轄法務局に対して登記申請を行います。

なお、募集株式の発行に関する登録免許税は、増加する資本金の額の0.7%(最低額が3万円)です。

なお、登記申請に関する添付書類は下記の通りです。

・株主総会議事録
・株主リスト
・募集株式の引受けの申込みを証する書面総数引受契約書
・資本金計上証明書
・税理士等の証明書または総勘定元帳等の会計帳簿(債権額が500万円を超えるとき)

4.DESによる募集株式発行の決議を行う場合の株主総会議事録のひな型

非公開会社、株主が1名(=代表取締役)のケースの株主総会議事録のひな型です。

※あくまでひな形であり、上記の株式発行の手続きを具体的に踏まえる必要があります。会社の事情に即した物に変更して使用するようにして下さい。

臨時株主総会議事録

令和3年●月●日午前10時00分当会社本店において臨時株主総会を開催した。

株主総数  ●名
発行済株式の総数 ●株
議決権を行使できる株主の数    ●名
この議決権の数 ●個
出席株主数(委任状による者を含む)●名
この議決権の数 ●個
出席取締役(1名) 山田太郎
議長兼議事録作成者 山田太郎

上記のとおり定足数にたる株主の出席があったので、代表取締役山田太郎は議長席に着き、議事に入った。

第1号議案  募集株式の発行に関する件

議長は、資本金の額を●●万円増加して●●●●万円としたい旨を述べ、下記要領により募集株式を発行することにつきその可否を諮ったところ、満場異議なくこれを承認可決した。

1 募集株式の数 普通株式●●株
2 現物出資に関する事項
新株につき、現物出資の目的たる財産の内容及びその価額は下記の通りである。
・現物出資の目的たる財産の内容(※ポイント1※)
令和●年●月●日付債務承認弁済契約にもとづく金●●●●万円の金銭債権のうち、金●●●万円に満つるまで。
(募集株式1株と引換えに給付する財産の額 金●万円)
・現物出資の財産の価額 金●万円
・現物出資を行う者
東京都新宿区新宿●●一丁目2番3号
山田 太郎
3 募集株式の払込金額 金●●●万円
4 申込期日 令和3年●月●日
5 給付期日 令和3年●月●日
6 増加する資本金及び資本金準備金に関する事項
・資本金の額   金●●●万円
・資本金準備金の額   金0円
7 割当方法 株主割当てとする。

なお、会社法第202条第4項所定の通知期間を置かないことにつき、出席株主は全員同意した。(※ポイント2)

第2号議案  募集株式割当ての件(※ポイント3)

議長は、第1号議案にて可決された「募集株式の発行に関する件」に関しての割当事項を以下のとおりとしたい旨を述べ、その可否を諮ったところ、満場異議なくこれを承認可決した。

1 募集株式の数 普通株式●●株
2 割当て方法  株主割当てとし、発行する募集株式を下記の株主に与える。
東京都新宿区新宿●●一丁目2番3号
山田 太郎  ●●株
3 条件 上記の者から申込みがされることを条件とする。

以上で本日の議事を終了し、議長は午前10時30分に閉会を宣した。

以上の決議を明確にするため、本議事録を作成し、議長及び出席取締役が記名押印する。

令和3年●月●日

株式会社●●●● 臨時株主総会において
(以下省略)

① 債権の特定方法について(ポイント1)

債権を現物出資する為、債権を特定する必要があります。

通常は「●年●月●日金銭消費貸借契約に基づく金●万円~」と言った方法を取りますが、会社の社長はちょこちょこと会社に貸し付ける事が多く、それを一つ一つ書き出していくと非常に手間がかかり大変です。

その為、「現段階で会社が社長に対して金●万円の債務を負っている事を確認します。支払期限は令和●年●月●日です」と言った「債務承認弁済契約」を締結し、債権を特定する方法が考えられます。

また、DESのように債権を現物出資する場合、支払期日が到来している必要があります。

その為、債務承認弁済契約では支払期日もきちんと決め、その日を現物出資の給付日とするよう、募集株式発行のスケジュールを組む必要があります。

なお、例えば1000万円を会社に貸し付けて、その内の900万円のみを現物出資したい場合、上記のように

「令和●年●月●日付債務承認弁済契約にもとづく金1,000万円の金銭債権のうち、金900万円に満つるまで。」

と記載すればOKです。

② 株主割当てを行う場合の期間について(ポイント2)

募集株式発行は株主に平等な割合で株式を割り当てる「株主割当て」と、それ以外の方法の「第三者割当」があります。

株主=代表取締役の一人社長の場合、株主割当てに該当しますが、株主割当ての場合、申込期日の2週間前までに募集事項の通知を行う必要があります。

つまり、株主総会と申込期日の間には2週間空いている必要があるのですが、上記の議事録のように

「会社法第202条第4項所定の通知期間を置かないことにつき、出席株主は全員同意した。」

と言うように、期間を短縮する事について全株主の同意があった場合、この期間を短縮する事ができます。

③ 募集株式の割当てについて(ポイント3)

募集株式の発行は、

⑴ 募集株式発行の決議
⑵ 申込者への通知、申込者の申込
⑶ 割当の決議
⑷ 割当の通知

の順番ですが、⑴及び⑶について別々に株主総会を開催すると手間が発生します。

その為、上記の議事録のように「割当て予定者から申込みがされることを条件とする」と言う条件付きの決議を行う事により、⑴と⑶を同日に行う事が出来ます。

5.DESの手続き(登記)は自分でも出来るのか?

さて、DESの手続きは登記申請まで行う必要がありますが、会社の登記については「誰でも簡単に登記申請に必要な書類が出来る」と言う謳い文句のサービスが沢山存在します。

では、これらのサービスを利用して、DESの手続きが自分でもできるのか?と言うと、正直、非常に難しいでしょう。

その理由は単純明快で、「法的に手続きが有効に成立しているか?」「登記上何も問題がないか?」と言った「判断」が一般の方には不可能だからです。

この判断に関しては、上記の「誰でも簡単に登記申請の書類ができる」サービスを利用するにしてもご自身で行う必要があります(サービス提供者側は判断してくれません)。

また法務局も登記に必要な範囲でしか判断を行わない為、潜在的な問題については一切関与しません。

つまり、全ては自己責任の上、行う必要があります。「自己責任はちょっと・・・」と思われる場合、下記の通り司法書士にご依頼する事をお勧めします。

6.まとめ

随分と長くなりましたが、実はこれでもかなり内容を端折っています。

DESを含む募集株式の発行の手続きは公開会社か否か、会社の機関がどうなっているかによってその手続き方法が大きく変わってきます。

その為、見様見真似の自己流で手続きを行った場合、想定外の存在が発生する事があります。その為「手続きが良く分からない」と思われた場合、お気軽に司法書士にご相談する事をお勧めします。

当事務所では煩雑で他事務所が断った難しい内容の登記でも積極的に受任しています。

資本金の増加・募集株式発行の事でお困り、お悩みの場合はお気軽に当事務所にご相談下さい(ご相談はzoom等で全国対応可能です)。

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