【代表取締役社長の死亡】登記手続を司法書士が分かりやすく解説

会社設立・商業登記

こんにちは。司法書士の甲斐です。

相続が発生した場合、様々な手続きが必要になりますが、故人が会社の社長(代表取締役)であった場合、独特な相続手続きがあります。

それが今回ご紹介する、役員変更登記(商業登記)の手続きです。

概略を先にお話しますと、社長が死亡した場合は、本店所在地を管轄する法務局へ役員の変更登記手続きを行う必要があります。

(期限は亡くなった日から2週間以内が原則となります。)

また、他に代表取締役がいない場合、会社の意思決定に支障をきたしますので、速やかに新たな代表取締役を選任する必要があります。

人が亡くなるのは精神的・肉体的にも非常に辛く、その上法律手続きを行うには大変な負担が掛かると思います。

だからこそ本ページでは、社長が亡くなった場合の商業登記(役員変更)の手続きの流れと注意点ついて、どこよりも分かりやすくお話し、皆さまの負担を少しでも軽減したいと思います。

1.役員死亡による登記は自分で出来るのか?

そもそ、代表取締役のような役員が死亡した事による変更登記は自分で出来るのか?と言う問題があります。

これ、とても重要なので良く聞いて下さいね。

この点に関する僕の見解は「企業の法務部の人間のように会社法や商業登記法の基本的な知識があれば自分で登記申請はできるけど、そうでない人間はほぼ不可能」です。

登記申請について「自分で簡単にできる」と謳っているサービスがありますが、代表取締役が亡くなった場合の変更登記は、「代表取締役の変更さえすればOK!」と言う単純な話しではありません。

(このようなサービスですね。)

登記申請の前提となる事実や定款に記載されたルールを確認する必要がありますし、そのルールに従った適切な手続きや書面の作成が必要になります。

その前提事実や定款に記載されたルールは「自分で登記を行うサービス」は判断してくれません。つまり、間違った登記がされたとしても、全て自己責任となります。

「そんな事までやってられない!」と思われるのであれば、素直に司法書士に依頼された方が良いでしょう。

何でもそうですが「簡単に●●」と言うのは必ず裏があります。その点は十分ご注意下さい。

2.一般的な相続手続きの流れ

まずは一般的な相続手続きの流れを確認しましょう。

各ご家庭のご事情によって多少異なる場合がありますが、相続手続きの一般的な流れは下記の通りです。

① 相続人の確定(戸籍謄本の取得)
② 相続財産の調査
③ 遺言書の調査
④ 相続財産の評価
⑤ 相続放棄or限定承認
⑥ 遺産分割協議
⑦ 相続財産の名義変更
⑧ 相続税の申告・納税(必要な場合)

具体的な手続きの内容は下記をページをご確認下さい。

今回のお話は社長が亡くなった場合の手続きですので、例えば社長が会社の株式の全て(もしくは大部分)を持っていた場合、原則としてこの株式の相続手続きを行い、役員変更等の登記申請を行う、と言う流れになります。

3.まずは定款を確認(任期、選定方法、代表権付与等)

具体的な登記申請手続きの第一歩として、まずは定款(ていかん)を確認しましょう。

これが先ほど要注意であるとお話した、代表取締役の変更登記を行う上での「前提事実」です。

定款とは会社の基本的なルールを定めたものであり、パソコン内でデータで管理していたり、書類として管理していたり、会社によって管理方法はバラバラだと思います。

この定款は必ずチェックする必要があります。

その理由は下記の通りです。

① 取締役の任期を確認

定款には取締役等の役員の任期を定めている事が一般的です。

株式の譲渡制限を設けている会社の場合、

「取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。」

と、「10年」にしている事が多いと思います。

しかし、会社によっては2年とか5年にしている事もあり、これは各会社の定款をきちんと確認しなければ正確な事は分かりません。

問題は任期が過ぎているにも関わらず、重任(任期満了+再任)の登記等を行っていないケースです。

この場合は、代表取締役の死亡による登記を行う前に、重任(任期満了+再任)等の登記申請を行う必要があります。

この前提となる登記申請を行わず、社長の死亡に関する登記申請のみを行った場合、登記記録が実体と合わない事になり、後々面倒な事にもなるのです。

② 取締役の人数を確認

定款によって取締役の人数に制限を設けている会社もありますので、この規定もしっかりとチェックを行うようにして下さい。

例えば取締役を「〇名以上」と規定していて、現実にその人数に達していない場合、他の取締役を選任する等、早急な対応を行う必要があります。

③ 代表取締役の選定方法を確認

さらに代表取締役の選定方法も定款で確認する必要があります(その通りに選定しなければ無効になりますので)。

主に下記のような規定になっている事が多いでしょう。

・取締役会の決議によって選定。
・取締役の互選によって、取締役の中から選定。
・株主総会の決議により、取締役の中から選定。

なお、代表取締役の選定方法を定めていない場合、取締役として選任された人全員が代表取締役となります(取締役会を設置していない場合)。

4.代表取締役の死亡による変更登記の方法(議事録・登記申請書)

① 代表取締役の選定

唯一の代表取締役である社長が亡くなった場合、まずは定款のルールに従い新たな代表取締役を選定し、議事録等を作成します。

なお、代表取締役に選定しようとする人が取締役では無い場合、取締役の選任手続きを先に行う必要があります。

② 代表取締役を取締役会で選定する場合の議事録例

※あくまでサンプルですので、会社の実情に合わせた内容に変更して下さい。

取締役会議事録

日   時: 令和〇年〇月〇日 午前〇時〇分
場   所: 当会社本店
取締役総数:3名  出席取締役数:3
監査役総数:1名  出席監査役数:1

上記のとおり出席があったので、取締役〇〇〇〇は選ばれて議長となり、取締役会の開会を宣し直ちに議事に入った。

第1号議案  代表取締役選定の件
議長は、代表取締役〇〇〇〇が令和〇年〇月〇日死亡した事により新たな代表取締役の選定が必要になる事を説明し、代表取締役として下記の者を選定したい旨を述べ、その賛否を議場に諮ったところ、満場一致をもって承認可決された。なお、被選定者は即時就任を承諾した。

横浜市泉区〇〇四丁目5番6号
代表取締役  〇〇 〇〇

以上をもって本取締役会の議案全部を終了したので、議長は閉会の挨拶を述べ、午前〇時〇分散会した。

上記の決議を明確にするため、この議事録を作成し、出席取締役及び出席監査役が次に記名押印する。

令和〇年〇月〇日
〇〇株式会社 取締役会

議長・代表取締役  〇〇 〇〇(個人実印

出席取締役     〇〇 〇〇(個人実印

出席取締役     〇〇 〇〇(個人実印

出席取締役     〇〇 〇〇(個人実印

出席監査役     〇〇 〇〇(個人実印

③ 死亡を証明する書類の作成

続いて、社長が死亡した事を証明する書類を用意します。

この書類は代表取締役の死亡の記載がある戸籍謄本の他、社長の親族が会社宛てに作成した書類でも大丈夫です。

④ 代表取締役の死亡を証明する書類(死亡届)例

死亡届

取締役〇〇〇〇は、令和〇年〇月〇日死亡いたしましたので、お届けします。

令和〇年〇月〇日

東京都町田市〇〇四丁目5番6号
取締役〇〇〇〇の長男 〇〇 〇〇

〇〇株式会社 御中

⑤ 管轄の法務局へ登記申請(変更登記申請書例)

必要な書類を揃えたら、本店を管轄する法務局に登記申請を行います。

【代表取締役の変更登記に必要な添付書類(例)
・死亡を証明する書類
・株主総会議事録
・株主リスト
・就任承諾書
・印鑑証明書
・取締役会議事録(場合によって)
・取締役の互選書(場合によって)
・定款(場合によって)
等々。

登記申請書の記載方法その他の詳細については、下記法務局のWebサイトを参考にして下さい。

⑥ その他の手続き(印鑑届等)

代表取締役が変更になった場合、代表取締役印(会社実印)の届出を新たに法務局に行う必要があります。

なお、印鑑は従前に使用していた印鑑でも大丈夫です。

5.代表取締役の変更登記申請を放置するデメリット・リスク

代表取締役の変更登記は法務局のWebサイトでも詳しく解説しており、登記申請書のひな形だけをパッと見ると、非常に簡単に思えるかもしれません。

しかし、何度もお話している通り、実際には登記申請を行う前段階で様々な事実確認や法的判断を行う必要があり、さらに、その前提事実や法的判断についてはよくある「登記申請に必要な書類が簡単に出来るサービス」では不可能です。

また、法的判断に関しましては、法務局に相談しても一切答えてくれません。

もし「法務局で法的判断も親切丁寧に教えてくれた!」と言う経験がある方がいらっしゃる場合、その法務局がルール違反をしただけです。一般的な対応ではありませんのでご注意下さい。

その為、手続きが面倒になってそのまま放置してしまう方もいますが、代表取締役の変更登記申請を放置すると様々なデメリットやリスクが存在するのです。

① 登記懈怠、過料の問題

会社の登記は、その登記の原因が発生してから2週間以内に行うのが義務となっています。

(変更の登記)
第九百十五条 会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
(第2項以下、省略)

(過料に処すべき行為)
第九百七十六条 発起人、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員(以下、省略)は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
一 この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
(第2項以下、省略)

引用:e-Gov法令検索(会社法)

この登記申請の義務を怠った場合、100万円以下の過料に処せられる事になります。

実務上、過料の金額は裁判所が決めるのですが、私の経験上、数万円~数十万円と言う金額が多くなっています。

② 対外的な問題

代表取締役が亡くなり会社に代表取締役が存在しなくなった場合、契約等、対外的な法律行為を行う事ができません。

その為、取引を拒否されたり等の重大なリスクが発生する可能性がありますので、事業を行っていくのであれば、早急に代表取締役を選定する必要があるでしょう。

6.まとめ

今回ご紹介した事例は、代表取締役を取締役会で選定するケースです。

実際の代表取締役選定方法は各会社によって大きく異なりますので、必ず定款や登記事項を確認するようにして下さい。

なお、お亡くなりになった後は精神的・肉体的に疲労が蓄積しています。その状態で定款や登記事項証明書を正確に把握し、適切に正しい判断をするのは非常に難しいかも知れません。

少しでもご不安な点、分からない点がありましたら、遠慮なく司法書士にご相談するようにしましょう。

また、会社法上、

「会社の登記事項に変更が生じた場合、2週間以内に変更登記を申請しなければならない」

と言う定めがあります。

この期限内に登記申請を行わない場合、過料の対象になる可能性があります。また、会社として契約その他の法律行為の問題もあり、手続きを後回しにすればするほど回復不可能で致命的な損害が発生する事もあります。

当事務所では相続による役員変更登記、及び相続手続き全般に関する事のご相談、ご依頼を承っております。遠方でもzoomでご相談可能ですので、ご不明点等ございましたらお気軽にご連絡ください。

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