法的トラブルを弁護士ドットコムに質問しても適切な回答が期待できない理由

ビジネス法務一般

こんにちは。甲斐です。

『弁護士ドットコム』と言うサイトをご存知でしょうか?

いわゆるポータルサイトの一つで、近くの弁護士を検索したり、サイト上で弁護士に対し、自分が抱えている法律トラブルについて質問をする事ができ、一般の方にとっては法律や弁護士が身近になり、非常に使い勝手が良いサイトです。

しかし、その利用者の中には

「弁護士ドットコムで相談したけれど、納得がいく回答が得られなかった」

と不満に思われている方も少なくありません(私の事務所に相談された方の中に何人かいらっしゃいました)。

でもそれは、ある意味当然の事であり、弁護士がけっして悪いわけでは無いのです。

そこで今回は弁護士ドットコムを含む、法律系のポータルサイトの使い方や注意点を中心にして、『質問を投稿しても、適切な回答が難しい理由』をお話ししていきたいと思います。

1.『弁護士ドットコム』とは?

『弁護士ドットコム』は弁護士ドットコム株式会社が運営を行っているポータルサイトです。

サイトに登録されている日本全国の弁護士を検索する事ができる他、サイト上で離婚、借金、交通事故等の法律問題を相談すると、それを見た弁護士が法律上の適切なアドバイスを行ってくれると言うのが特長です。

サイト内に一般公開されますので、個人情報等に注意する必要がありますが、簡単に質問を投稿する事ができて弁護士が回答してくれる、一般の方と弁護士をつなぐサービスです。

ここまでは全て無料で行う事ができますので、相談者にとってみれば至れり尽くせりのサービスで、私が見る限りフリーランスの方も報酬トラブルを含め、結構質問をされています。

でもこの質問サービス、場合によっては相談者の方が満足しないケースもあります。

代表的なのが、「質問を投稿したのに、弁護士がきちんと回答してくれない!」と言うケースです。

場合によっては「だから弁護士はダメなんだ!」と間違った方向で考えてしまう方もいたりします。

それでは、なぜこのような事が起こるのでしょうか?分かりやすくお話ししていきたいと思います。

2.弁護士ドットコムに質問を投稿したのに、適切な回答が得られない理由

① 一般論として、リアルタイムではない相談の回答は難しい

メール等もそうなのですが、サイトを利用する相談はリアルタイムのコミュニケーションではありません。

相続を初めとする法律系の相談は、まずは事実関係を正確に把握する必要があり、その為には専門家側からの様々な質問をリアルタイムに行う必要があります。

リアルタイムのコミュニケーションであれば、専門家が相談者に対して質問を繰り返す事により、事実関係を正確に把握する事ができるのですが、サイトを利用する相談はその都度質問を行う事ができません。

その為、どうしても抽象度が高い回答にならざるを得ない場合があるのです。

② 弁護士側の能力の問題

サイトに登録されている弁護士は非常に多く、その能力もマチマチです。

その為、弁護士によっては相談者の質問の意図を正確に理解する事ができず、早とちりで回答している先生もいらっしゃるのも事実です。

そのような弁護士にあたってしまえば、適切な回答を求めるのは難しいでしょう。

③ 相談者、質問者側の問題

実は、相談者側の問題もあります。

まずは分かりやすいように、問題がある質問のサンプルを掲載してみます。

弁護士になったつもりで読んでみて下さい。

こんにちは。よろしくお願いします。今年の3月(正確には3月12日)にクライアントと業務委託契約をしたのですが、クライアントが報酬を支払ってくれません。何度も何度も支払を督促したのですが、クライアントは「払えない」と一方的に言ってきます。私は幼い頃父親を亡くし、お金に非常に苦労してきました。だからこそ「自分の力でお金を稼ぐ!」と言う志でフリーランスになったのですが、クライアントは私の志をバカにしたのです。これは当然慰謝料とれますよね?クライアントとは元々共通の知り合いを通して知り合ったのですが、第一印象は「オラオラ系の嫌なヤツだなぁ」と言う感じで、実際にその通りでした。些細な修正を何度も何度も依頼され、精神的に参ってしまいました。時には脅迫まがいなメールが来て、仕事が遅れる事がしばしばありました。そうです。仕事が遅れたのはクライアントのせいです。私はけっして悪くありません。それなのに報酬を支払わないなんて、人間のクズですよね?法的に地獄に叩き落してやりたいのですが、何罪になりますか?それから、クライアントは周りの人間に私の事をきっとある事ない事言っているはずです。これも営業妨害だと思うので法的に辞めさせたいと思っています。また、極力お金をかけずに裁判を行いたいと考えていますので、内容証明の書き方もアドバイス頂けたらと思います。

いかがでしたでしょうか?

あなたが弁護士だったら、このような質問にまともに回答したいと思うでしょうか?

まず、改行が一切されておらず文章としては非常に見づらいので、2~3行読んですぐに読むのを諦めたのではないでしょうか?

さらに話しが二転三転して、結局何が質問なのかが良く分かりません。

そして、実際の質問においても、(ここまではいかなくても)事実関係が非常に不明な質問が多いのです。

相談している当事者としては事件の全て把握していますが、弁護士はその事件を初めて知ります。

ところが、上記のような質問がされると、法的に意味のある事実とそうではない事実がゴチャゴチャになっており、これではどんなに優秀な弁護士と言えど、適切な回答は不可能なのです。

3.まとめ

そもそも、弁護士ドットコム等のポータルサイトに登録している弁護士には、相談者の質問に対して回答する義務はありません。

彼らはあくまで社会的使命感や事務所の広報活動として行っており、普段の仕事や自分の時間を犠牲にして質問に回答してくれているのです。

まずはその事を理解した上で、事実関係を分かりやすくまとめたり、質問の趣旨を明確にしたり、読みやすい文章を書く事を心がけてみてください。

そうすれば、しっかりとした回答を弁護士が行ってくれる可能性は高くなります。

それでもどうしても具体的な回答が知りたい場合は、お気軽に当事務所にお問い合わせ下さい。

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甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル。趣味はキックボクシングとランニング

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甲斐 智也

甲斐 智也

表現者。元舞台俳優。演劇を活用した論理と感性のハイブリッドコンサル (詳しい自己紹介は画像をクリック!)。

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