フリーランスの為の売買契約書の基本知識

法律知識一般

こんにちは。司法書士の甲斐(@tomoya_kai)です。

フリーランス・個人事業主が行う仕事は、

・クライアントからの依頼を受けて製作物を製作する「請負」
・コンサルティング等を行う「委任」

がありますが、世間一般的に馴染みがある「売買」もあります。

自分で作った商品をサイトで販売したり、転売の為に商品を仕入れたり、このような時に行うのが売買契約です。

売買契約は日常生活に馴染んだ契約(法律)で非常に分かりやすいですが、それでも事業として行う場合、ポイントや注意すべき点があります。

そこで今回は、売買契約の基本的な知識と、売買契約書の作成のポイントを分かりやすく解説していきたいと思います。

1.売買契約の基本

一口に売買契約と言っても、1回だけの取り引きもあるでしょうし、継続しての取り引きを行う事もあり、その契約内容は様々です。

特に継続的な取り引きを行う場合、その都度しっかりとした売買契約書を作成・締結するのは非常に煩雑になります。

その為、継続的な取り引きが想定される場合、「売買契約基本合意書」+「個別契約書(発注書)」と言う方法で対応する方法もあります。

「売買契約基本合意書」では複数の取り引きについて共通する項目(検査方法や所有権の移転時期など)に関してまとめ、個別の売買における商品の内容や納期、代金額のみを個別契約書に記載する事により、契約における煩雑さを低減する事ができます。

2.売買契約書で注意すべき具体的なポイント

① 当事者について

当事者をどこの誰だかを特定するのは勿論ですが、どちらが売主でどちらが買主であるかも、きちんと特定するようにします。

② 目的物の特定

売買の対象となる商品名や個数の事です。

なお、法律上の物には「特定物」と「不特定物」と言う概念があります。

「特定物」とは、具体的な取引に際して、当事者がその物の個性に着目して指定した物、「不特定物」とは当事者が物の個性を問題とせず、単に種類に着目して取引した物です。

簡単に言えば、「トヨタのプリウスの新車」は不特定物であり、「〇〇中古車販売店で〇〇万円で販売しているトヨタのプリウスの中古車」は特定物です。
売買の目的物が特定物か不特定物であるかは、契約の解除事由になる契約の重要事項です。

その為、売買の目的物が特定物か不特定物かは、売買契約書の中で必ず分かるようにしておきましょう。

また、売買の目的物を名称やサイズ等で具体的に特定する必要があります。

③ 代金の額、支払い方法等

代金の額、支払期日、支払方法(振込等)について記載します。

代金の支払い方法は一括払いや分割払い、締日を決めての支払い等があります。

④ 目的物の引渡し方法

商品を買主に引き渡す期日、引き渡す場所について記載します。

また、商品の引渡し場所までの運送費や、引き渡し日までの保管費用を買主、売主のどちらが負担するのかについても必要に応じて記載します。

➄ 検査

買主に商品が引き渡された場合、買主よる商品の検査方法や検査期間などを定めます。

その結果、契約の趣旨に対して不適切な商品が引き渡された場合のルールについても、契約書の中に記載します。

⑥ 所有権移転時期

法律(民法)の原則では、(不特定物において)売買契約が成立した時に、その目的物の所有権が移転します。

では、そもそも売買契約の成立とはどのような条件がそろった時なのでしょうか?

民法の条文を見てみましょう。

第555条
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

簡単に言いますと、「売ります」「買います」の意思表示の合致だけで、売買契約が成立するのです。

商品を引き渡さなくても、売買代金を支払わなくても、売買契約は成立し、商品の所有権が売主から買主に移転します。

ただ、実務感覚として、売買代金が支払われていないのに所有権が移転するのはおかしな感じがしますよね?

その為、売買契約書の中で、「いつ所有権が移転するのか」と言った所有権移転の時期を定める事が一般的です。

基本的なパターンは、

・商品の引渡し時。
・引渡しを受け、売主による検査が合格した時。
・売買代金を支払った時。

等です。

⑦ 契約不適合責任

契約不適合責任とは、売買契約で、商品に品質不良や品物違い、数量不足などの不備があった場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。

民法では下記のように規定されています。

民法第562条
1 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

・種類に関する契約不適合
購入したものと違う種類の商品を間違って引き渡した場合。

・品質に関する契約不適合
契約で定めた品質に一致していない商品を引き渡した場合。

・数量に関する契約不適合
契約で定めた数量に足りなかった場合。

以上の場合、買主は追完請求・損害賠償請求・代金減額請求が出来ます。

これらの規定はあくまで任意規定ですので、当事者の契約によって民法の原則とことなる規定を設ける場合は、その内容を契約書に明記する必要があります。

⑧ 危険負担

危険負担とは、

・売買契約の成立後、目的物が買主に引き渡される前に、
・売主の責任ではない理由で、商品が滅失・毀損等してしまい、買主へ商品を引き渡す事が不可能となってしまった場合に、
・そのリスク(買主が商品代金を支払う義務があるか?)を当事者のどちらが負担するか?と言う問題です。

民法第536条
1 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

民法の原則では上記の場合、買主は売買代金の支払いを拒否する事ができます。

しかし、これも任意規定ですので、当事者が異なる内容を決めた場合、その内容を契約書に盛り込みます。

⑨ その他

その他、一般の契約書の内容にある、損害賠償、解除、裁判所の合意管轄等を契約書の内容としてん盛り込みます。

3.商法第526条について

事業者間の売買契約では、民法以外にも注意すべき法律があります。

その内の一つが商法ですが、商法第526条では「買主による目的物の検査及び通知」と言う規定があります。

第526条
1 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。
2前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことをに直ちに発見することのできない場合において、買主が六箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。
3 前項の規定は、売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合には、適用しない。

これは「2.売買契約書で注意すべき具体的なポイント」の「➄検査」に関する事です。

簡単にまとめますと、下記の通りになります。

⑴ 買主は商品を受け取ったときはすぐに検査して、欠陥や不具合、数量不足等があればすぐに売主に伝える義務がある。

⑵ 買主は上記の検査と通知をしなかったときは、あとで欠陥や不具合、数量不足等を見つけてたとしても、売主に様々な補償を請求する事ができない。

⑶ 商品の欠陥や不具合がすぐに見つけることが難しいものである場合も、買主は商品の引き受けてから6か月以内に売主に通知する必要がある。これをしなければ、あとで欠陥や不具合を見つけても売主に補償を求めることはできない。

⑷ 売主が上記の不具合や数量不足を知っていたときは、⑵、⑶のルールの適用はない。

4.まとめ

売買契約は日常生活に溶け込んだ身近な契約です。

その為、契約の具体的な内容を決める事を軽視したり、売買契約書を作成する事を行わない事がありますが、売買も業務委託契約等と同じ、れっきとした「契約」の一種です。

だからこそ、売買契約の細かい内容をしっかりと決め、売買契約書と言った証拠を作成し、後日の法的トラブルに備えるようにしましょう。

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